胸腺過形成(hymic hyperplasia)の分類
胸腺過形成は
- 真性胸腺過形成
- 反応性胸腺過形成
- リンパ濾胞性胸腺過形成
に分けられる。
真性胸腺過形成
- 胸腺のびまん性腫大。
- 組織学的に正常胸腺。
- 胸腺の厚さが正常上限を超える。19歳以下は18mm、20歳以上は13mm。
参考文献:Radiology 1982;142:121–125
症例 18歳男性 スクリーニング
動画解説。
症例 10歳男児 胸腺は目立つが正常範囲
症例 11歳女児 正常範囲
いずれも正常範囲の症例です。
胸腺は小児期に発達して、思春期以降は次第に退縮し、20歳までは軟部腫瘤としてCTで認めますが、40歳頃には脂肪組織で完全に置き換わります。
反応性胸腺過形成
- 全身的なストレスにより急激に縮小し、その後回復に向かうともとのサイズを越えて大きくなることがある。
- 化学療法、ステロイド療法、放射線療法、熱症、重症感染が全身的なストレスになる。
症例40歳代女性 左乳癌術後放射線治療後
治療前と比べて胸腺のサイズが増大しています。内部には脂肪組織が混在しており、過形成を疑う所見です。
放射線治療後の反応性胸腺過形成が疑われます。
リンパ濾胞性胸腺過形成
- 髄質におけるリンパ球や形質細胞を伴う胚中心の過形成
- B細胞系リンパ球が主体
- 炎症性疾患の背景が強い。
- 重症筋無力症、甲状腺機能亢進症、自己免疫疾患(橋本病、SLE、ベーチェット病)
胸腺過形成のMRI所見
- T1WI,T2WIともに均一な中等度の信号強度を示す。
- 年齢とともに脂肪置換を反映して信号強度が上昇し、成人においては皮下の脂肪組織とほぼ同程度の信号強度となる。
- chemical shift MRIを用いた場合、10歳を越える頃より脂肪含有を示す信号強度の低下が見られる。(まだらな脂肪織を含む点が成人の胸腺の特徴。過形成も同様)
- 逆に信号低下が見られない場合、胸腺腫や悪性リンパ腫などの腫瘍性病変を疑う。
参考:
- 困ったときの胸部の画像診断 P295