先に結論:大動脈基部の術後のCT所見
- 大動脈基部の手術(人工弁+人工血管置換や自己弁温存手術)の後は、術部の液体貯留がよく見られ、時間が経っても残るものは漿液腫のことがあります
- 重要な合併症は大動脈基部の仮性動脈瘤(吻合部の漏れ)で、破裂の危険があるため早期の発見が大切です
- 冠動脈の再建部(吻合部)の狭窄も起こることがあり、心電図同期CTで評価します
大動脈基部の手術
- 大動脈基部の拡張
- 大動脈弁輪拡張症
- 大動脈基部まで進展した大動脈解離など
に対して行われる。
- 人工弁置換
- 自己大動脈弁を温存して、人工血管置換、冠動脈再建
を行う。
代表的な術式は、人工弁付き人工血管で置き換えるBentall手術(変法)、自己弁を残すDavid手術、自己の肺動脈弁を使うRoss手術などで、術式ごとに正常の術後像が異なります(Prescott-Focht 2013)。
術部に見られる所見
- 術部に液体貯留を高頻度に認める。また、吻合部に置かれたフェルトプレジェットは高吸収に写り、造影剤の漏れ(仮性動脈瘤)と紛らわしいことがあります。単純CTで高吸収かどうかを確認し、術式と過去画像との比較で判断します。
- 術後時間が経っても液貯留が残る場合は漿液腫(seroma)が疑われる。
術部に見られる合併症
- 大動脈基部の仮性動脈瘤
- 冠動脈基部および吻合部狭窄
がある。
大動脈基部の仮性動脈瘤
- 破裂のリスクが高い。
- 手術による早急な治療が必要であるため心臓CT診断は重要。
術後のCTでは、グラフトの屈曲・側枝、フェルトプレジェットやリング、グラフト周囲の少量の低吸収域、ラッピングなどが正常の術後所見として合併症に似て見えることがある。一方、吻合部離開やグラフト感染は血腫・仮性動脈瘤・膿瘍・瘻孔として現れ、合併症の出る時期はさまざまで無症状でもCTで見つかることがあるため、術式を把握したうえでの経過観察が必要になる。
仮性動脈瘤のCTでの見え方
- 造影CTで、人工血管や吻合部の外に、内腔とつながって造影剤がたまる袋として見え、周りに血腫を伴うことがあります。
- フェルトや手術糊は単純CTの時点で高吸収ですが、仮性動脈瘤は造影して初めて高吸収になります。付け直した冠動脈の根元(冠動脈ボタン)にもできることがあります。
- 基部置換術882例の報告では、10年間の再治療の累積頻度は10.3%で、再治療52例のうち大動脈側の原因(仮性動脈瘤・瘤の拡大・残った解離)は7例でした(Yamabe 2022)。
症例 40歳代男性(Bentall手術後の人工血管周囲への漏れ)

引用:Radiopaedia(Post Bentall procedure with perigraft leak and Cabrol fistula)
A型大動脈解離に対するBentall手術の数か月後に心不全で受診した症例の造影CT(冠状断)です。人工弁と上行大動脈の人工血管があり、吻合部のフェルトリングが小さな高吸収として写っています。人工血管の周り(perigraft space)に造影された血液がたまっており、大動脈基部からの漏れと考えられました(この症例ではCabrol瘻を通じて右房へ流れていました)。
冠動脈基部および吻合部狭窄
- 冠動脈基部・吻合部の狭窄は、手術糊に対する免疫反応・炎症反応により血管外からの圧迫が起こることを狭窄の原因とする説あり。
- 冠動脈CTは、評価に有用。
参考文献:臨床画像 Vol.38 No.7増刊号 2022 p14-16
- Sundaram B, Quint LE, Patel HJ, et al. CT findings following thoracic aortic surgery. Radiographics. 2007;27(6):1583-94. PubMed
- Prescott-Focht JA, Martinez-Jimenez S, Hurwitz LM, et al. Ascending thoracic aorta: postoperative imaging evaluation. Radiographics. 2013;33(1):73-85. PubMed
- Yamabe T, Pearsall CA, Zhao Y, et al. Incidence, Cause, and Outcome of Reinterventions After Aortic Root Replacement. Ann Thorac Surg. 2022;113(1):25-32. PubMed
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