先に結論:荒蕪肺(destroyed lung)
- 荒蕪肺は、結核などの重い感染のあとに、肺が壊れて縮み、働かなくなった状態で、CTでは強い容積減少・気管支拡張・空洞・石灰化と縦隔の偏位が見られます
- 残った空洞にアスペルギルスなどの感染が起こりやすく、血痰・喀血の原因になるため、画像の変化に注意して経過をみます
※血痰が出たときや、息切れ・発熱が続くときは、呼吸器内科を受診してください。
荒蕪肺(こうぶはい)(destroyed lung)
- 従来は結核に由来する炎症で正常肺の構造および機能が廃絶された状態と定義されていた。
- 広義には結核以外の原因(他の感染症や放射線治療後など)で同じ病態となるものも含まれる。肺全摘を行った荒蕪肺32例の報告では、原因は非特異的気管支拡張症が62.5%と最も多く、結核は28.1%であった。
「荒蕪(こうぶ)」の意味と読み方
「荒蕪」は「こうぶ」と読み、土地が荒れ果てて雑草が生い茂っている様子を表す言葉です。荒蕪肺(こうぶはい)は、肺が荒れ地のように壊れて元の形と働きを失った状態にたとえた呼び名で、英語ではdestroyed lungといいます。「荒無肺」と書かれることがありますが、正しくは「荒蕪肺」です。
荒蕪肺のCT・レントゲン所見
- 片側(ときに一葉)の肺が高度に縮んで(容積減少)、気管支拡張・空洞・線維化・石灰化が混在し、正常な肺の構造がほとんど見えない。
- 縮んだ側へ縦隔・気管が偏位し、横隔膜の挙上や胸膜の肥厚・石灰化を伴うことが多い。反対側の肺は代償性に過膨張することがある。
- 残った空洞にはアスペルギルス(菌球)や非結核性抗酸菌などの感染が起こりやすく、血痰・喀血の原因となるため、空洞内の結節や壁の肥厚の変化に注意する。肺全摘を受けた結核後荒蕪肺26例では、喀血が77%、空洞内のアスペルギローマが23%にみられた(Issoufou 2016)。
症例 60歳代男性 繰り返す咳・痰と体重減少

引用:Radiopaedia(Destroyed lung syndrome)
左肺は全体に小さく濃度が高くなり、内部に複数の空洞が見られます。左の肋骨の間隔が狭まり、気管と縦隔は左へ偏位していて、左肺の強い容積減少を示しています。右肺は代償性に過膨張し、正中を越えて左側へ張り出しています。
臨床的な意義
- 荒蕪肺は換気や血流にほとんど寄与しないため、呼吸機能は反対側の肺に依存する。結核後荒蕪肺595例の多施設研究では、平均2.6葉が侵され、胸膜肥厚は54.1%にみられた。閉塞性障害(FEV1は平均で予測値の約49%)を示し、病変の葉数が多いほど肺機能が低く増悪も多く、FEV1は経時的に低下していた。
- 繰り返す感染や大量喀血がある場合は、肺切除術が検討されることがあるが、合併症のリスクが高いため術前評価が重要である。
荒蕪肺でよくある疑問(Q&A)
Q. 荒蕪肺は治りますか?
A. 壊れた肺の構造は元に戻らない変化です(Sayir 2019)。治療は、感染の繰り返しや喀血などの合併症に対して行います。
Q. 喀血したときはどう治療しますか?
A. カテーテルで出血している動脈を詰める動脈塞栓術がよく行われます。荒蕪肺の喀血179例では臨床的な成功は89.5%で、出血源は気管支動脈だけでなく肋間動脈や鎖骨下動脈の枝も多くみられました(Chu 2026)。
参考文献
- Sayir F, Ocakcioglu I, Şehitoğulları A, et al. Clinical analysis of pneumonectomy for destroyed lung: a retrospective study of 32 patients. Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2019;67(6):530-536. PubMed
- Rhee CK, Yoo KH, Lee JH, et al. Clinical characteristics of patients with tuberculosis-destroyed lung. Int J Tuberc Lung Dis. 2013;17(1):67-75. PubMed
- Issoufou I, Sani R, Belliraj L, et al. [Pneumonectomy for tuberculosis destroyed lung: A series of 26 operated cases]. Rev Pneumol Clin. 2016;72(5):288-292. PubMed
- Chu M, Guo Q, Li T, et al. Transcatheter artery embolization for hemoptysis in patients with destroyed lung: risk factors for recurrence. Acta Radiol. 2026;67(4):379-387. PubMed
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