上腕骨近位部骨折1)2)3)
- 全骨折の7%を占め、全上腕骨骨折の80%が近位部骨折である。
- 65歳以上の高齢者における骨折では橈骨遠位端に次いで2番目に多い上肢骨折。
- 高齢者においては立位からの転倒による低エネルギー外傷による受傷が大半。高齢者の転倒による肩の痛みでは鑑別の一番に上腕骨近位部骨折を挙げる。一方、若年者の場合は交通外傷や高所転落などの高エネルギー外傷が原因となる。
- 神経損傷が約67%に生じ、腋窩神経が58%で最多、次いで肩甲上神経で48%。
- 腋窩神経麻痺では、上腕近位外側の感覚障害と外転障害を生じる。
- 骨折型の分類にはNeer分類(読み方ニール分類)、AO分類が治療方針を決める上で重要となる。
- 骨折が何パーツなのかを確認するのに通常の肩関節2方向(正面像・軸写)のみでは困難なことがあり、スカプラY撮影やCTで評価を行う必要があることがある。
Neer分類1)2)3)
- 上腕骨近位部を解剖頚・外科頚・大結節・小結節の4つのセグメントに分けて、骨折部位を分類する。
- 大結節と外科頚の2箇所で骨折することが多い。
- 手術を考慮するのは、2パート骨折以上(骨折が1cm以上or45°以上)。
- 4パーツ以上の場合は上腕骨骨頭の血流障害により骨癒合が困難となることが多いため場合によっては人工骨頭の置換が必要となる。
上腕骨近位部骨折で整形外科を急いで呼ぶケース3)
- 脱臼骨折
- 開放性骨折
- 腕神経叢麻痺
- 血管損傷
症例 70歳代女性 転倒
右上腕骨近位部で大結節および外科頚に骨折線を認めており、大結節はやや転位しています。
Neer分類で3-partと診断されます。
参考文献:
- 臨整外 56巻5号 2021年5月 P458-459
- 骨折ハンター P92-93
- レジデントノート Vol.21 No.17(増刊)2020 P21