先に結論:上腕骨近位部骨折とNeer分類
- 上腕骨近位部骨折は高齢者の転倒で多く、橈骨遠位端骨折に次いで多い上肢の骨折です。腋窩神経損傷の合併に注意します
- Neer分類では骨頭(解剖頸)・大結節・小結節・骨幹(外科頸)の4つに分け、1cm以上の転位または45°以上の傾きがある部分を1パートと数えます
- 脱臼骨折・開放骨折・神経血管損傷は早めに整形外科へ。3・4パート骨折は骨頭の血流障害を起こしやすく、手術(人工骨頭など)を考えます。評価にはスカプラY像やCTが役立ちます
- Neer分類は5人の判定が全員一致したのが32%と分かれやすく(Sidor 1993)、迷うときはCTで確かめます
上腕骨近位部骨折1)2)3)
- 日常よくみられる骨折である。
- 65歳以上の高齢者における骨折では橈骨遠位端に次いで2番目に多い上肢骨折。
- 高齢者においては立位からの転倒による低エネルギー外傷による受傷が大半。高齢者の転倒による肩の痛みでは鑑別の一番に上腕骨近位部骨折を挙げる。一方、若年者の場合は交通外傷や高所転落などの高エネルギー外傷が原因となる。
- 筋電図で評価すると神経損傷が約67%に見られ、腋窩神経が58%で最多、次いで肩甲上神経で48%(多くは回復する)。
- 腋窩神経麻痺では、上腕近位外側の感覚障害と外転障害を生じる。
- 骨折型の分類にはNeer分類(読み方ニール分類)、AO分類が治療方針を決める上で重要となる。1,027例の前向き研究では、Neer分類で約半数が転位の小さい骨折で、最も多かったのはNeer分類に含まれない外反嵌入骨折(AO B1.1、約5分の1)であった。そのためNeer分類だけでは骨折の全体像を表しきれないことがある。
- 骨折が何パーツなのかを確認するのに通常の肩関節2方向(正面像・軸写)のみでは困難なことがあり、スカプラY撮影やCTで評価を行う必要があることがある。
Neer分類1)2)3)
- 上腕骨近位部を解剖頚・外科頚・大結節・小結節の4つのセグメントに分けて、骨折部位を分類する。
- 大結節と外科頚の2箇所で骨折することが多い。
- 1cm以上の転位または45°以上の角状変形があるものを1パートと数え、2パート以上の転位骨折では手術も検討される。ただし外科頸を含む転位骨折の成人250例のRCT(PROFHER)では、手術と保存療法で2年間の肩機能に有意差はなかった。
- 4パート骨折の場合は上腕骨骨頭の血流障害により骨癒合が困難となることが多いため場合によっては人工骨頭の置換が必要となる。

Neer分類の一覧(1-part〜4-part・脱臼骨折)
骨折線の数ではなく、転位(1cm超または45°超)した骨片の数で数えます(Matsumura 2020)。
| 分類 | 状態・例 |
|---|---|
| 1-part | どの骨片も転位の基準を満たさない(最も多い) |
| 2-part | 1つの骨片だけ転位(外科頸・大結節・小結節・解剖頸) |
| 3-part | 2つの骨片が転位(外科頸+大結節など) |
| 4-part | 4つすべてが離れ、骨頭の血流障害を起こしやすい |
| 脱臼骨折 | 上記に肩関節の脱臼を伴う |
| 関節面の骨折 | 骨頭の陥没(impression)・割れ(head-split)。CTで評価 |
上腕骨近位部骨折で整形外科を急いで呼ぶケース3)
- 脱臼骨折
- 開放性骨折
- 腕神経叢麻痺
- 血管損傷
上腕骨近位部骨折の画像の見方(どこを見るか)
①正面像と側面(スカプラY像・腋窩像)をセットで見る
- 正面像では外科頸の骨折線と大結節の骨片を探します。
- スカプラY像や腋窩像では、骨頭が関節窩に収まっているか(脱臼の有無)と、正面像では重なって分かりにくい骨片のずれを確認します。脱臼骨折は整形外科を急いで呼ぶケースです。
②骨頭の血流が危ない骨折を見分ける
- 手術を行った関節包内の骨折100例の検討では、骨頭の血流障害を予測するよい指標は、骨頭側に残る内側の骨幹端(カルカー)が8mm未満と短いこと(正確度0.84)と、内側の蝶番(medial hinge)が壊れていること(正確度0.79)でした。解剖頸の骨折・短いカルカー・壊れた蝶番がそろうと、陽性的中率は最大97%でした(Hertel 2004)。
- 一方で、4パート骨折(正確度0.67)、脱臼(0.49)、head-split(0.49)は予測の力が中等度〜低いとされました(Hertel 2004)。パートの数だけで骨頭の運命を決めつけないことが大切です。
③見逃しやすい点
- 脱臼の見落とし:正面像だけでは骨頭の前後のずれが分かりにくいため、もう1方向を追加します(肩関節脱臼の画像診断)。
- 骨頭が腋窩へ大きくずれた脱臼骨折(下の症例画像)では、腋窩動脈や腕神経叢が巻き込まれることがあります(Parkar 2025)。腕の色や脈、しびれの確認が欠かせません。
- 関節面の割れ(head-split)・陥没はX線では分かりにくく、CTで評価します。
④CTが役立つ場面
- 3・4パート骨折か迷うとき、脱臼骨折、関節面の骨折、手術計画を立てるときにはCT(MPR・3D)が役立ちます。血管損傷が疑われるときは造影CT(CT血管造影)が使われます。
実際の画像(X線・MRI・CT)

引用:Radiopaedia(Proximal humeral fracture 2)
右肩のX線正面像です。外科頸で骨幹が骨頭側からずれ、大結節の部分にも骨折線がみられます。

引用:Radiopaedia(Anatomical neck humeral fracture)
肩のMRI冠状断です。骨頭の関節面のすぐ縁(解剖頸)に沿って、骨頭内を横切る低信号の線と周りの信号変化がみられます。X線で分かりにくい骨折の確認にMRIが使われることがあります。

引用:Parkar N et al. Cureus 2025(Figure 2)
左肩の正面X線像で、上腕骨近位部の粉砕した脱臼骨折がみられます。矢印はずれた骨頭を示しています。(出典:Parkar N et al. Cureus 2025, Figure 2, CC BY 4.0)

引用:Lachkar A et al. Cureus 2024(Figure 3)
右肩のCTです。A・Bで骨頭が2つに割れ(head-split)、片方は関節窩の外側にずれています。Cの3D画像(ボリュームレンダリング)で骨折の粉砕の程度が分かります。(出典:Lachkar A et al. Cureus 2024, Figure 3, CC BY 4.0)
症例 70歳代女性 転倒

右上腕骨近位部で大結節および外科頚に骨折線を認めており、大結節はやや転位しています。
Neer分類で3-partと診断されます。
上腕骨近位部骨折・Neer分類でよくある疑問(Q&A)
Q. Neer分類の読み方は?
A. 考案者Neerの名前から「ニール分類」と読みます。「ニアー分類」「ニア分類」も同じ分類です。
Q. 解剖頸骨折と外科頸骨折の違いは?
A. 解剖頸は骨頭の関節面のすぐ縁、外科頸は大・小結節のすぐ下の細い部分です。解剖頸骨折は骨頭の血流が絶たれやすく、骨頭壊死に注意します。
Q. 骨頭壊死はどんな骨折で起こりやすいですか?
A. 骨頭側に残る内側の骨幹端が短い(8mm未満)、内側の蝶番が壊れている、解剖頸で折れている、という特徴がそろうと骨頭の血流障害が起こりやすいと報告されています(Hertel 2004)。CTでこれらを確かめると、治療法を考える手がかりになります。
※転倒後に肩の強い痛みや腫れ、腕が上がらないなどの症状があれば、早めに医療機関を受診してください。
あわせて読みたい:鎖骨遠位端骨折の画像診断
関連記事:肩鎖関節脱臼のRockwood分類とレントゲン画像
参考文献:
- 田村 竜. 上腕骨近位端骨折. 臨床整形外科 56(5):458-461, 2021(本記事の参照: P458-459)
- 骨折ハンター P92-93
- レジデントノート Vol.21 No.17(増刊)2020 P21
- Visser CP, Coene LN, Brand R, et al. Nerve lesions in proximal humeral fractures. J Shoulder Elbow Surg. 2001;10(5):421-7. PubMed
- Court-Brown CM, Garg A, McQueen MM. The epidemiology of proximal humeral fractures. Acta Orthop Scand. 2001;72(4):365-71. PubMed
- Rangan A, Handoll H, Brealey S, et al. Surgical vs nonsurgical treatment of adults with displaced fractures of the proximal humerus: the PROFHER randomized clinical trial. JAMA. 2015;313(10):1037-47. PubMed
- Sidor ML, Zuckerman JD, Lyon T, et al. The Neer classification system for proximal humeral fractures. An assessment of interobserver reliability and intraobserver reproducibility. J Bone Joint Surg Am. 1993;75(12):1745-50. PubMed
- Matsumura N, Furuhata R, Seto T, et al. Reproducibility of the modified Neer classification defining displacement with respect to the humeral head fragment for proximal humeral fractures. J Orthop Surg Res. 2020;15(1):438. PubMed
- Hertel R, Hempfing A, Stiehler M, et al. Predictors of humeral head ischemia after intracapsular fracture of the proximal humerus. J Shoulder Elbow Surg. 2004;13(4):427-33. PubMed
- Parkar N, Thangarajah T. Radiological Diagnosis of Axillary Artery and Brachial Plexus Involvement in a Proximal Humerus Fracture-Dislocation: A Case Report. Cureus. 2025;17(9):e92425. PubMed
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