先に結論:胃の幽門部は正常でも壁が厚く見える
- 胃の出口(幽門部)は筋肉の層が発達しているため、CTで壁が厚く、炎症の3層構造のように見えることがありますが、多くは正常です。幽門部の壁は正常でも5mmを超えることが多く、12mm程度まで見られることがあります
- 見分けのポイントは、正常の筋層は平衡相でよく染まり粘膜との境界が不明瞭になるのに対し、炎症による粘膜下層のむくみは平衡相でも黒い層として残ることです
- 左右非対称・限局したかたまり・周囲のリンパ節腫大などがあれば、胃がんなどを考えて内視鏡で確認します
- 胃が十分にふくらんでいない時や、膵炎など胃の外の炎症でも胃の壁は厚く見えます。「何mm以上なら異常」と一律には決められません
胃幽門部では筋層が発達しており、あたかも壁肥厚に見えることがあります。
筋層の肥厚があたかも粘膜下層の肥厚のように見えてしまうため注意が必要です。
具体的な症例を見てみましょう。
症例 80歳代女性

胃の幽門部にあたかも壁肥厚があるかのように見えます。
炎症や虚血を伴った際に起こる結腸や小腸の3層構造を保った壁肥厚のようにも一見見えます。

しかしこれは、発達した筋層を見ているのであって、粘膜下層の肥厚をみているわけではないということです。(粘膜下層自体この症例でははっきりしません。)

早期相と平衡相を並べて見ると、筋層は平衡相でより染まり、粘膜層との境界が不明瞭化しています。
粘膜下層の浮腫ならば低吸収はある程度保たれるはずで、ここまで不明瞭化しません。ただし、正常な幽門前庭部の壁肥厚でも約1/4に粘膜下の線状低吸収(層状構造)がみられ、脂肪濃度を示すこともあると報告されているため、層状構造だけで病的と判断せず、壁の対称性や周囲の所見とあわせて評価します。
つまり、幽門部の壁肥厚は筋層が発達しているだけだと言うことです。
症例 50歳代男性

こちらも、幽門部の壁が全周性に肥厚しているように見えますが正常範囲です。
一方で、次の症例はどうでしょうか?
症例 60歳代男性 心窩部痛

こちらの症例では、幽門部でなく胃体部で粘膜の下の層の肥厚が目立ちます。
こちらは筋層ではなく、粗大な胃潰瘍があり反応性に腫大した粘膜下層の肥厚です。
平衡相ですが、粘膜との境界は明瞭で、低吸収を示しています。
胃幽門部は筋層が発達しているために、それがあたかも粘膜下層の肥厚している、つまり何か炎症があるのでは?と偽病変を作ってしまうことがあるので注意が必要です。
なお、胃幽門前庭部の壁は正常でも5mmを超えることが多く、12mm程度まで見られることがあります(同じ検討で胃体部前壁は平均約2mm)1)。一方、CTで前庭部の壁肥厚を指摘され内視鏡を受けた111例の検討では、前庭部の壁厚は悪性群13.7±3.3mm、良性群9.2±2.2mmで、高齢・貧血・低アルブミンも悪性を示唆する因子であった(Akbas 2019)。
CTで「胃の壁が厚い」と言われたら:主な原因
| 原因 | ポイント |
|---|---|
| 見かけの肥厚(正常) | 胃のふくらみが足りないと壁は厚く見える。前庭部の壁厚の平均は、ふくらみが最も少ない群で6.9mm、最も多い群で4.0mmでした(Pickhardt 2003)。病気のない259例の22%で、胃の液面より下だけ壁が厚く見えました(Hammerman 1989) |
| 胃の外の炎症の波及 | 急性膵炎では67%に胃壁肥厚がみられました(Brown 1982) |
| 胃がん・悪性リンパ腫 | 左右非対称・限局した肥厚、でこぼこ、周囲のリンパ節腫大に注意 |
CTで粘膜の状態まではわからないため、必要に応じて内視鏡で確かめます。気になる症状があれば医療機関に相談してください。
1)AJR 181:973-979,2003
あわせて読みたい:腸管壁肥厚のCTの落とし穴
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参考文献
- Pickhardt PJ, Asher DB. Wall thickening of the gastric antrum as a normal finding: multidetector CT with cadaveric comparison. AJR Am J Roentgenol. 2003;181(4):973-9. PubMed
- Akbas A, Bakir H, Dasiran MF, et al. Significance of Gastric Wall Thickening Detected in Abdominal CT Scan to Predict Gastric Malignancy. J Oncol. 2019;2019:8581547. PubMed
- Hammerman AM, Mirowitz SA, Susman N. The gastric air-fluid sign: aid in CT assessment of gastric wall thickening. Gastrointest Radiol. 1989;14(2):109-12. PubMed
- Brown BM, Federle MP, Jeffrey RB. Gastric wall thickening and extragastric inflammatory processes: a retrospective CT study. J Comput Assist Tomogr. 1982;6(4):762-5. PubMed
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