従来、MRCP(MRI装置を用いて胆嚢や胆管、膵管を同時に描出する検査)造影剤と言うとフェリセルツが主流でしたが、ボースデル®が発売され、臨床で使用されています。
ボースデルの特徴を活かすことで、胆道や膵管の描出能力を向上させ、さらに病変や関連部位の診断能力を向上させることが可能となりました。
それでは、このボースデルとはどのようなものなのでしょうか?
また、使用する事での副作用は?
今回は、MRI用経口消化管造影剤ボースデル®についてまとめました。
先に結論:MRCP用の経口造影剤ボースデル
- ボースデル(塩化マンガン)は、MRCPの前に飲む造影剤で、胃や十二指腸の中の水分の信号を消し、胆管・膵管を重ならずに見やすくするために使います
- 主な副作用は下痢・吐き気などの消化器症状で、消化管穿孔が疑われる人などには使いません。造影剤を使わずにMRCPを行う施設もあります
- 有効成分のマンガンは腸からあまり吸収されないため、点滴で使う造影剤とは性質が違います。飲む量やタイミング、腎臓・肝臓の病気がある人や授乳中の人の注意は、添付文書と検査施設の指示に従います
MRI用経口消化管造影剤ボースデル®とは?

ボースデルとは、MRI(磁気共鳴コンピュータ断層撮影)による胆道および膵管の撮影を目的とした、塩化マンガン四水和物(ボースデル内用液)を有効成分とする経口消化管造影剤のことです。
簡単に言うと、消化管内の邪魔な信号を消して、見たい胆管や膵管を綺麗に描出する作用があります。前向き比較研究では、ボースデルは造影剤なしに比べて胃十二指腸液の信号を有意に消し、全体と肝外胆管の画質も有意に良好で、従来のフェリセルツと同等の成績でした。冷やして(約10℃)飲ませると画質が向上し、飲みやすいという報告もあります。

他の造影剤と違い、経口造影剤ですので、口から飲むという特徴があります。
ボースデルはなぜ水の信号を消せる?(機序)
- 有効成分のマンガン(Mn²⁺)は常磁性という性質をもつ金属で、ガドリニウムと同じように周りの水のT1値とT2値を短くする働きがあります(Jørgensen 2012)。
- 胃や十二指腸の中にたまったボースデルでは、T2を短くする効果が強く出るため、水を白く写すMRCP(強いT2強調像)では消化管の中が黒く(信号が消えて)見えます。
- 一方、胆管・膵管の中にはボースデルが入らないため、胆汁・膵液は白いまま残り、胆管・膵管だけが浮かび上がるしくみです。
- マンガンは腸からあまり吸収されず、同じ塩化マンガン四水和物を使う肝臓用の経口造影剤の総説では、吸収されたマンガンも肝臓で大部分(最大98%)が取り込まれて全身に回りにくいとされています(Jørgensen 2012)。
MRI用経口消化管造影剤ボースデルはどういう時に使うの?
ボースデルは、主にMR胆管膵管造影(MRCP:MR cholangiopancreatography)で使用します。
MRCPについてはこちらにまとめました。→【画像あり】MRCPとは?検査方法・前処置・わかる病気・看護まとめ!
MRCPはMRI装置を用いて撮影されます。
このMRCP検査では、水を極めて強調する水強調画像を撮影することができ、液体である胆汁や膵液を捉えることで、胆管や膵管の描出に優れています。
ですので、MRCP検査は、基本的には胆管や膵管を見る検査です。
この検査をするときに、胆管内の胆汁、膵管内の膵液以外の液体が強調されてしまい、本来みたい胆管や膵管が見えにくくなることがあります。
それが、消化管内の液貯留です。
下のイラストのように、胆管の胆汁と膵管の膵液は、合流して十二指腸のVater乳頭から排泄されます。

胆管や膵管の近くには胃や十二指腸があるのでここに液貯留があれば、それが邪魔をしてしまうわけです。
ボースデルは、経口摂取することにより、この消化管内の水の信号を抑える働きがあるのです。
その作用は、ちょっと難しいですが、
- T2強調画像で陰性造影効果
- T1強調画像では陽性造影効果
を示します。
水はT2強調像で高信号(白い)を示しますので、消化管の高信号を抑える陰性造影効果があるということです。なお、マンガンを多く含むパイナップルジュースも陰性経口造影剤として使われることがあり、約150mL(コップ1杯)で胃十二指腸液の信号を抑えるのに十分だったと報告されています。
本特徴を活かすことで、胆道や膵管の描出能力を向上させ、さらに病変や関連部位の診断能力を向上させることが可能となりました。
症例 60歳代男性 閉塞性黄疸

MRCPでは上のように、胆管、膵管、胆嚢の全体像を見ることができます。
ボースデル®を経口摂取することで、胃や十二指腸の液体は綺麗に消えており、本来みたい胆管、膵管が綺麗に見えています。
今回は、肝内胆管〜総胆管の拡張を認めています。
総胆管の下部に総胆管結石を認めており、これによる閉塞性黄疸と診断されました。
総胆管結石による閉塞性黄疸と診断されました。
では次にこのボースデル®︎を使わなかった時の画像を見てみましょう。
症例 70歳代男性 膵IPMNのフォロー

膵体部の嚢胞性病変であるIPMNのフォローで撮影されました。
ボースデルを使っていない場合は、上のように消化管内の液体の信号を拾ってしまい、非常に見えにくい画像となることがあります。
MRI用経口消化管造影剤ボースデルのメリットは?
- アルミラミネートフィルム製のパウチ容器に充填された液剤であるため、磁場の環境でも使用可能。
- 液剤のため用時溶解の必要も無い。
MRCPについてはこちらに詳しくまとめました。→【画像あり】MRCPとは?検査方法・前処置・わかる病気・看護まとめ!
MRI用経口消化管造影剤ボースデル投与の際に注意が必要な人は?投与が不可能な人は?
投与の際に注意が必要、または投与が不可能な人は以下の通りです。
高齢者への投与
一般に高齢者では生理機能が低下しているため注意する必要があります。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
妊婦または妊娠している可能性のある女性には、診断上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することになっています。
また、授乳中の女性は、投与後一定時間授乳を避けるよう案内されています(期間は添付文書と検査施設の指示に従ってください)。
小児等への投与
低出生体重児、新生児、乳児、幼児または小児に対する安全性は確立していません。
投与が不可能な人
- 消化管の穿孔またはその疑いのある方
- ボースデルの成分に対し過敏症の既往歴のある方
腎臓の病気がある人は使える?
ボースデルは口から飲み、腸からあまり吸収されない造影剤で、点滴で使うヨード造影剤やガドリニウム造影剤とは体への入り方が違います(Jørgensen 2012)。ただし、腎臓や肝臓の病気がある人に使えるかどうかは、病状によって異なるため、添付文書と主治医・検査施設の判断に従います。検査の予約時に、持病や飲んでいる薬を伝えておきましょう。
MRI用経口消化管造影剤ボースデルには副作用があるの?
- 軟便
- 下痢
- 腹痛
- 腹鳴
- 血清鉄低下
- 血清フェリチン減少など
ボースデルでよくある疑問(Q&A)
Q1. MRIの前に飲む液体は、すべてボースデルですか?
A. いいえ。MRCPの前には、ボースデル(塩化マンガン)のほか、フェリセルツ(クエン酸鉄アンモニウム)を使う施設もあり、両者の画質は同等と報告されています(Morita 2010)。ブルーベリージュース(Papanikolaou 2000)やパイナップルジュース(Renzulli 2022)など、果汁を飲んで胆管・膵管が見やすくなったという報告もあります。造影剤を使わずに撮影する施設もあります。
Q2. いつ、どのくらい飲みますか?
A. 検査の少し前に飲みますが、量やタイミングは装置や撮影方法によって施設ごとに決められています。検査施設の指示に従ってください。
Q3. 飲んだあとに便がゆるくなるのはなぜですか?
A. 主な副作用が軟便・下痢などの消化器症状のためです。多くは一時的ですが、腹痛が強い、続くなど気になる症状があれば医療機関に相談してください。
まとめ
今回は、MRCPの検査で用いられる経口造影剤ボースデル®についてまとめました。
要点は以下の通りです。
- ボースデル®とは、MRIによる胆道および膵管の撮影を目的とした、塩化マンガン四水和物(ボースデル内用液)を有効成分とする経口消化管造影剤のこと。
- ボースデル®は、主にMRCP(MRI装置を用いて胆嚢や胆管、膵管を同時に描出する検査)で使用。
- ボースデル®は、磁場の環境でも使用可能であり、また用時溶解の必要も無いメリットがある。
- ボースデル®投与が不可能な患者は、消化管の穿孔またはその疑いのある患者や本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
- ボースデル®副作用には、軟便や下痢、腹痛などがある。
ちなみにMRI検査で使われる造影剤にはたくさん種類があります。

参考になれば幸いです^^
参考文献
- Morita S, Ueno E, Masukawa A, et al. Prospective comparative study of negative oral contrast agents for magnetic resonance cholangiopancreatography. Jpn J Radiol. 2010;28(2):117-22. PubMed
- Watanabe K, Ishimori Y, Sakurai H, et al. A Low-temperature Manganese Chloride Tetrahydrate Improves the Image Quality of Magnetic Resonance Cholangiopancreatography. Nihon Hoshasen Gijutsu Gakkai Zasshi. 2016;72(4):311-8. PubMed
- Renzulli M, Caretti D, Pettinari I, et al. Optimization of pineapple juice amount used as a negative oral contrast agent in magnetic resonance cholangiopancreatography. Sci Rep. 2022;12(1):531. PubMed
- Tajima N, Utano K, Kijima S, et al. Intraductal papillary mucinous neoplasm penetrating to the stomach, duodenum, and jejunum demonstrated on MR cholangiopancreatography with an oral negative contrast agent. J Magn Reson Imaging. 2013;38(1):206-9. PubMed
- Jørgensen JT, Rief M, Brismar TB, et al. A new manganese-based oral contrast agent (CMC-001) for liver MRI: pharmacological and pharmaceutical aspects. Acta Radiol. 2012;53(7):707-13. PubMed
- Papanikolaou N, Karantanas A, Maris T, et al. MR cholangiopancreatography before and after oral blueberry juice administration. J Comput Assist Tomogr. 2000;24(2):229-34. PubMed
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看護師をしていましたが、定年後に胆石症を患い検査をしてもらいました。
医療の日進月歩を感じた次第です。