従来、MRCP(MRI装置を用いて胆嚢や胆管、膵管を同時に描出する検査)造影剤と言うとフェリセルツが主流でしたが、ボースデル®が発売され、臨床で使用されています。

ボースデルの特徴を活かすことで、胆道や膵管の描出能力を向上させ、さらに病変や関連部位の診断能力を向上させることが可能となりました。

それでは、このボースデルとはどのようなものなのでしょうか?

また、使用する事での副作用は?

今回は、MRI用経口消化管造影剤ボースデル®についてまとめました。

MRI用経口消化管造影剤ボースデル®とは?

ボースデルとは、MRI(磁気共鳴コンピュータ断層撮影)による胆道および膵管の撮影を目的とした、塩化マンガン四水和物(ボースデル内用液)を有効成分とする経口消化管造影剤のことです。

簡単に言うと、消化管内の邪魔な信号を消して、見たい胆管や膵管を綺麗に描出する作用があります。

他の造影剤と違い、経口造影剤ですので、口から飲むという特徴があります。

MRI用経口消化管造影剤ボースデルはどういう時に使うの?

ボースデルは、主にMR胆管膵管造影(MRCP:MR cholangiopangreatography)で使用します。

MRCPはMRI装置を用いて撮影されます。

このMRCP検査では、水を極めて強調する水強調画像を撮影することができ、液体である胆汁や膵液を捉えることで、胆管や膵管の描出に優れています。

ですので、MRCP検査は、基本的には胆管や膵管を見る検査です。

この検査をするときに、胆管内の胆汁、膵管内の膵液以外の液体が強調されてしまい、本来みたい胆管や膵管が見えにくくなることがあります。

それが、消化管内の液貯留です。

下のイラストのように、胆管の胆汁と膵管の膵液は、合流して十二指腸のVater乳頭から排泄されます。

胆管や膵管の近くには胃や十二指腸があるのでここに液貯留があれば、それが邪魔をしてしまうわけです。

ボースデルは、経口摂取することにより、この消化管内の水の信号を抑える働きがあるのです。

その作用は、ちょっと難しいですが、

  • T2強調画像で陰性造影効果
  • T1強調画像では陽性造影効果

を示します。

水はT2強調像で高信号(白い)を示しますので、消化管の高信号を抑える陰性造影効果があるということです。

本特徴を活かすことで、胆道や膵管の描出能力を向上させ、さらに病変や関連部位の診断能力を向上させることが可能となりました。

症例 60歳代男性 閉塞性黄疸

MRCPでは上のように、胆管、膵管、胆嚢の全体像を見ることができます。

ボースデル®を経口摂取することで、胃や十二指腸の液体は綺麗に消えており、本来みたい胆管、膵管が綺麗に見えています。

今回は、肝内胆管〜総胆管の拡張を認めています。

総胆管の下部に総胆管結石を認めており、これによる閉塞性黄疸と診断されました。

総胆管結石による閉塞性黄疸と診断されました。

では次にこのボースデル®︎を使わなかった時の画像を見てみましょう。

症例 70歳代男性 膵IPMNのフォロー

膵体部の嚢胞性病変であるIPMNのフォローで撮影されました。

ボースデルを使っていない場合は、上のように消化管内の液体の信号を拾ってしまい、非常に見えにくい画像となることがあります。

MRI用経口消化管造影剤ボースデルのメリットは?

  • アルミラミネートフィルム製のパウチ容器に充填された液剤(250mL)であるため、磁場の環境でも使用可能。
  • 液剤(250mL)のため用時溶解の必要も無い。

MRCPについてはこちらに詳しくまとめました。→【画像あり】MRCPとは?検査方法・前処置・わかる病気・看護まとめ! 

MRI用経口消化管造影剤ボースデル投与の際に注意が必要な人は?投与が不可能な人は?

投与の際に注意が必要、または投与が不可能な人は以下の通りです。

高齢者への投与

一般に高齢者では生理機能が低下しているため注意する必要があります。

妊婦、産婦、授乳婦等への投与

妊婦または妊娠している可能性のある女性には、診断上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することになっています。
また、授乳中の女性には本剤投与後48時間は授乳を避けさせる必要があります。

小児等への投与

低出生体重児、新生児、乳児、幼児または小児に対する安全性は確立していません。

投与が不可能な人

  • 消化管の穿孔またはその疑いのある方
  • ボースデルの成分に対し過敏症の既往歴のある方

MRI用経口消化管造影剤ボースデルには副作用があるの?

  • 軟便(7.5%)
  • 下痢(2.3%)
  • 腹痛(1.4%)
  • 腹鳴(1.4%)
  • 血清鉄低下(4.8%)
  • 血清フェリチン減少(2.6%)など
                                           ボースデル®内用液10の添付文書より引用

まとめ

今回は、MRCPの検査で用いられる経口造影剤ボースデル®についてまとめました。

要点は以下の通りです。

  • ボースデル®とは、MRIによる胆道および膵管の撮影を目的とした、塩化マンガン四水和物(ボースデル内用液)を有効成分とする経口消化管造影剤のこと。
  • ボースデル®は、主にMRCP(MRI装置を用いて胆嚢や胆管、膵管を同時に描出する検査)で使用。
  • ボースデル®は、磁場の環境でも使用可能であり、また用時溶解の必要も無いメリットがある
  • ボースデル®投与が不可能な患者は、消化管の穿孔またはその疑いのある患者本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者。
  • ボースデル®副作用には、軟便や下痢、腹痛などがある。

ちなみにMRI検査で使われる造影剤にはたくさん種類がありますが、経口造影剤はボールデル®だけです。

参考になれば幸いです^^

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