先に結論:毛様細胞性星細胞腫のMRI

  • 毛様細胞性星細胞腫は、子ども・若者(10歳前後)に多い最も良性のグリオーマ(WHO grade 1)で、小脳・視神経〜視交叉・視床下部・脳幹にできやすく、手術で取りきれれば治ることが期待できます
  • MRIでは小脳の「嚢胞+よく造影される壁在結節」が典型で、周りのむくみは少ないのが特徴です。視神経・視床下部のものは充実性のことが多く、神経線維腫症1型では視神経に生じやすいです
  • 病理ではRosenthal線維・好酸性顆粒小体が特徴で、KIAA1549-BRAF融合遺伝子が約3分の2にみられます(Jones 2008)

毛様細胞性星細胞腫(Pilocytic astrocytoma)

  • 20歳以下の小児-若年者(10歳前後にピーク)。
  • 小児のgliomaでは最も多い。
  • CNS WHO grade 1(稀に悪性転化)と最も良性。
  • 病理学的には、毛髪様の細長い突起を持つ紡錘形細胞を認めるので、この名称で呼ばれる。
  • 一般的に限局性で、手術で完全切除できれば根治が期待される。
  • 長期生存率はグリオーマの中で際立って良好(10年生存率94%:Koeller 2004)。
  • 男女差なし。
  • 神経線維腫症Ⅰ型→視神経に本腫瘤を伴いやすい。
  • 第4脳室、第3脳室周辺部に生じる傾向。視神経〜視交叉・視床下部・小脳・脳幹。他に、基底核、視床、大脳半球にもできることがある。
  • 症状は発生部位により種々の症状。
  • 間脳症候群(diencephalic syndrome):乳幼児の視床下部近傍。十分な栄養を取っているにもかかわらず発育が不良で、るいそうを呈する。

毛様細胞性星細胞腫の病理

  • 細胞が密で毛髪様の突起をもつ部分(Rosenthal線維を含む)と、まばらで微小嚢胞を含む部分(好酸性顆粒小体を含む)が混在する2相性パターンをとる。
  • 血管が豊富で、これが強い造影効果の理由。血管増殖がみられても悪性を意味しない。
  • MAPK経路の異常が1つだけみつかる「1経路の病気」とされ(Collins 2015)、最多は7q34の重複でできるKIAA1549-BRAF融合遺伝子(PAの66%、高悪性度の星細胞腫244例では0例:Jones 2008)。

毛様細胞性星細胞腫の画像所見

  • 基本は境界明瞭な嚢胞の一部に充実性の壁在結節を持つ腫瘤。通常周囲の浮腫は軽微。壁在結節はよく造影されるが、嚢胞壁は増強効果を認めないことが多い。
  • できる部位により、特徴が異なる。
  • テント上に発生する場合は、嚢胞変性の頻度は少ない。
  • 一方視神経、視交叉-視床下部においては全体的に充実性である事が多い。(基底核や視床では、充実性もしくは多発嚢胞性部分を有する充実性である事が多い。)→小脳半球および大脳半球の表層は嚢胞+壁在結節で、深部(視交叉や視床下部、視神経)に行くほど、充実性になる傾向。
  • 通常浮腫は伴わない。
  • 充実部はT1WIで軽度低信号、T2WIで高信号、造影ではやや不均一に顕著に染まる。充実部のADCが高いのも特徴で、小児の小脳腫瘍の検討では毛様細胞性星細胞腫のADC値(平均1.65×10⁻³mm²/s)は上衣腫・髄芽腫より有意に高く、1.4×10⁻³mm²/s超は100%特異的であった。嚢胞壁は増強効果を認められないことが多い。
症例 20歳代女性 小脳pilocytic astrocytoma。手術により診断。

嚢胞+壁在結節のパターンの鑑別診断

cystandmuralnodule

  • 毛様細胞性星細胞腫(pilocytic astrocytoma) ←★
  • 血管芽腫(hemangioblastoma)
    ※これら2つは嚢胞内壊死、充実腫瘤の形態も取りうる。
  • 神経節膠腫(ganglioglioma)
  • 多形黄色星細胞腫(PXA)

 

毛様細胞性星細胞腫でよくある疑問(Q&A)

Q. 大人にもできますか?

A. 多くは20歳までに見つかりますが、成人にも発生します(上の動画は20歳代の症例)。頭痛・ふらつき・視力低下などが続くときは医療機関を受診してください。

参考文献

  1. Koeller KK, Rushing EJ. From the archives of the AFIP: pilocytic astrocytoma: radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 2004;24(6):1693-708. PubMed
  2. Louis DN, Perry A, Wesseling P, et al. The 2021 WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System: a summary. Neuro Oncol. 2021;23(8):1231-1251. PubMed
  3. Chourmouzi D, Papadopoulou E, Konstantinidis M, et al. Manifestations of pilocytic astrocytoma: a pictorial review. Insights Imaging. 2014;5(3):387-402. PubMed
  4. Rumboldt Z, Camacho DL, Lake D, et al. Apparent diffusion coefficients for differentiation of cerebellar tumors in children. AJNR Am J Neuroradiol. 2006;27(6):1362-9. PubMed
  5. Jones DT, Kocialkowski S, Liu L, et al. Tandem duplication producing a novel oncogenic BRAF fusion gene defines the majority of pilocytic astrocytomas. Cancer Res. 2008;68(21):8673-7. PubMed
  6. Collins VP, Jones DT, Giannini C. Pilocytic astrocytoma: pathology, molecular mechanisms and markers. Acta Neuropathol. 2015;129(6):775-88. PubMed

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