先に結論:びまん性星細胞腫のMRI

  • びまん性星細胞腫は、ゆっくり大きくなるが脳の中にしみこむように広がるグリオーマ(従来のgrade II)で、成人の大脳半球に多く、けいれんで見つかることがよくあります。WHO分類2021では主に星細胞腫, IDH変異型, grade 2にあたります
  • MRIではT2/FLAIRで高信号、造影されにくいのが典型で、T2-FLAIRミスマッチ(T2で均一に高信号、FLAIRで中心が低信号)はIDH変異型星細胞腫を示唆します。経過で造影効果が出てきたら悪性化を疑います
  • アストロサイトーマ(astrocytoma)は日本語で星細胞腫(せいさいぼうしゅ)。余命(予後)はIDH変異の有無や年齢などで大きく変わります

※WHO分類2021(第5版)では遺伝子異常を重視した分類に変わった。成人型びまん性神経膠腫は「星細胞腫, IDH変異型(CNS WHO grade 2〜4)」「乏突起膠腫, IDH変異型・1p/19q共欠失(grade 2〜3)」「膠芽腫, IDH野生型(grade 4)」の3つに整理され、従来の「びまん性星細胞腫」「退形成性星細胞腫」は主にIDH変異型星細胞腫のgrade 2・3に相当する。小児のびまん性神経膠腫は「小児型」として別に分類される。グレードはアラビア数字で表記する。本文は従来の分類に基づく解説である。

びまん性星細胞腫(diffuse astrocytoma)

  • 成人の大脳半球と小児の脳幹に好発。
  • 組織学的にはWHO gradeⅡ(WHO分類2021ではCNS WHO grade 2)である。
  • gradeⅡであるが、浸潤性に発育し、脱分化して退形成性星細胞腫(WHO分類2021では星細胞腫, IDH変異型 grade 3)、さらにgrade 4(従来の二次性膠芽腫。現在は膠芽腫と呼ばずIDH変異型星細胞腫 grade 4とする)へと進行して行くことが多い。
  • 従来は原線維性(fibrillary)などの組織亜型に分けられていたが、WHO分類2016以降は分子異常に基づく分類となり、多くの亜型は削除された。

画像所見

  • 成人の大脳半球の皮質下白質に、境界明瞭な高信号域をT2強調像やFLAIR像で呈する。しばしば、周囲の脳実質に浸潤し、境界不明瞭。
  • 軽度の容積効果を脳溝など周囲構造に示すが、造影増強効果は乏しい。(血液脳関門が保たれているから)
  • 石灰化は少なく、腫瘍内出血は稀。
    T2-FLAIRミスマッチ徴候は、12研究のメタ解析でIDH変異・1p/19q非共欠失の低悪性度神経膠腫に対し感度42%、特異度100%と報告されている。特異度は非常に高いが感度は低く、DNETや小児型神経膠腫、非腫瘍性病変での偽陽性報告もある。

T2-FLAIRミスマッチがあってもIDH変異星細胞腫とは限らない

T2-FLAIRミスマッチはIDH変異・1p/19q非共欠失の星細胞腫を強く示唆しますが、例外もあります。

  • 成人の神経膠腫での偽陽性:神経膠腫1515例の検討で、ミスマッチによるIDH変異の判定が外れた偽陽性は3.5%で、年齢と拡散制限がないことが関連していました(Zang 2024)。
  • 小児型びまん性低悪性度神経膠腫:2歳男児でミスマッチを示した腫瘍が、IDH変異のない小児型びまん性低悪性度神経膠腫だった報告があります(Hwa 2024)。MYB/MYBL1変化を伴うびまん性星細胞腫40例では、24例にミスマッチがみられました(Coppola 2025)。
  • 腫瘍様脱髄:63歳女性でミスマッチを示し低悪性度星細胞腫が疑われた病変が、ステロイド投与後2週間で縮小し、2か月でほぼ消えた報告があります。この病変は単純CTで低吸収でした(Karhu 2025)。

小児・若年者の腫瘍、拡散制限がない病変、単純CTで低吸収の病変では、ミスマッチだけでIDH変異星細胞腫と言い切らず、年齢や経過を合わせて考えます。

症例 30歳代男性 拍動性頭痛と羞明

びまん性星細胞腫(星細胞腫, IDH変異型) MRI T2強調像 横断
引用:Radiopaedia(T2/FLAIR mismatch sign)

右前頭葉の前方に、T2強調像で著明な高信号を示す境界明瞭な腫瘤があります。この症例ではFLAIR像で腫瘤内部の信号が抑制されて相対的に低信号となり、辺縁だけが高信号に残るT2/FLAIRミスマッチがみられました。切除で星細胞腫, IDH変異型(1p/19q共欠失なし)と確認されています。

脳幹膠腫 Brain stem glioma

  • 中脳、橋、延髄などから発生。橋に発生するものが大部分。
  • 小児に好発。
  • 橋発生の多くはびまん性に浸潤する(びまん性内在性橋膠腫、DIPG)。WHO分類2021では多くがびまん性正中膠腫, H3 K27変化型(CNS WHO grade 4)に分類される。
  • 放射線治療が選択されることが多いが、予後不良。中脳や延髄発生では限局性のものが多く、比較的予後良好 。

画像所見

  •  T1強調像で低信号、T2強調像で高信号 、 造影効果は弱いか、もしくはみられない。
  • 石灰化や出血は少ない。
  • 従来は画像診断のみで治療方針が決定されることが多かった(近年はH3 K27変化の確認のため生検を行う施設も増えている)。
  • 腫瘍組織を得ることが部位的に困難。典型的な画像所見が得られれば、組織学的確認なしに放射線治療などの治療方針が決定。

アストロサイトーマ(星細胞腫)とは

  • アストロサイトーマ(astrocytoma)は、グリア細胞の一つである星状膠細胞(アストロサイト)に似た細胞からなる神経膠腫(グリオーマ)です。日本語では星細胞腫(せいさいぼうしゅ)と呼びます。
  • 小児に多い毛様細胞性星細胞腫のように境界のはっきりしたものと、本記事のびまん性星細胞腫のように脳にしみ込むように広がるものがあり、同じ「星細胞腫」でも性質が大きく異なります。
  • 症状はけいれんが多く、grade IIの神経膠腫(星細胞腫と乏突起膠腫)63例では71%がけいれんで発症しました(Roberts 2018)。

びまん性星細胞腫の余命(予後)は?

IDH変異のある成人の星細胞系腫瘍1,360例の解析では、診断時の年齢は36〜37歳で、生存期間は従来のgrade II相当で10.9年、grade III相当で9.3年と報告され、従来のgradeによる差は小さいものでした(Reuss 2015)。年齢・切除範囲・分子異常などで見通しは変わるため、個々の予後は主治医に確認してください。けいれんや続く頭痛など気になる症状があれば、医療機関を受診してください。

関連記事:退形成性星細胞腫のMRI画像所見|WHO分類2021での位置づけ

参考文献

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  2. Patel SH, Poisson LM, Brat DJ, et al. T2-FLAIR Mismatch, an Imaging Biomarker for IDH and 1p/19q Status in Lower-grade Gliomas: A TCGA/TCIA Project. Clin Cancer Res. 2017;23(20):6078-6085. PubMed
  3. van den Bent M, Saratsis AM, Geurts M, et al. H3 K27M-altered glioma and diffuse intrinsic pontine glioma: Semi-systematic review of treatment landscape and future directions. Neuro Oncol. 2024;26(Supplement_2):S110-S124. PubMed
  4. Park SI, Suh CH, Guenette JP, et al. The T2-FLAIR mismatch sign as a predictor of IDH-mutant, 1p/19q-noncodeleted lower-grade gliomas: a systematic review and diagnostic meta-analysis. Eur Radiol. 2021;31(7):5289-5299. PubMed
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  7. Roberts M, Northmore T, Shires J, et al. Diffuse low grade glioma after the 2016 WHO update, seizure characteristics, imaging correlates and outcomes. Clin Neurol Neurosurg. 2018;175:9-15. PubMed
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  11. Karhu M, Tumeļkāns R, Dzirkale D, et al. Tumefactive Demyelinating Lesion Mimicking Low-Grade Astrocytoma with a T2/FLAIR Mismatch Sign: A Case Report and Review of the Literature. Diagnostics (Basel). 2025;15(24):3174. PubMed

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