先に結論:退形成性星細胞腫のMRI

  • 退形成性星細胞腫は、びまん性星細胞腫と膠芽腫の中間の悪性度(従来のgrade III)のグリオーマで、40〜50歳代の大脳半球に多くみられます。WHO分類2021では主に星細胞腫, IDH変異型, grade 3にあたります
  • MRIではT2/FLAIRで境界不明瞭な高信号で、造影効果はさまざま(ないものからリング状まで)です。壊死が目立つ場合は膠芽腫を考えます
  • 読み方は「たいけいせいせいさいぼうしゅ」。予後はIDH変異の有無で大きく異なり、IDH変異型のほうが長く生存します

※WHO分類2021(第5版)では遺伝子異常を重視した分類に変わった。成人型びまん性神経膠腫は「星細胞腫, IDH変異型(CNS WHO grade 2〜4)」「乏突起膠腫, IDH変異型・1p/19q共欠失(grade 2〜3)」「膠芽腫, IDH野生型(grade 4)」の3つに整理され、従来の「びまん性星細胞腫」「退形成性星細胞腫」は主にIDH変異型星細胞腫のgrade 2・3に相当する。小児のびまん性神経膠腫は「小児型」として別に分類される。グレードはアラビア数字で表記する。本文は従来の分類に基づく解説である。

退形成性星細胞腫(anaplastic astrocytoma)

退形成性星細胞腫(たいけいせいせいせいさいぼうしゅ)とは、星細胞(アストロサイト)に似た腫瘍細胞が脳にしみ込むように広がるグリオーマのうち、悪性度が中間のものです。「退形成」は細胞がより悪性の顔つきになっていることを指します。

  • 従来のWHO分類(第4版まで)でgrade Ⅲ(WHO分類2021では星細胞腫, IDH変異型, CNS WHO grade 3に相当)。
  • 40-50歳代に好発。
  • 予後はIDH変異の有無などで大きく異なる。退形成性星細胞腫52例の検討では、生存期間の中央値はIDH変異ありの38例で65か月、変異なしの14例で20か月だった(Yan 2009)。個々の予後は治療内容などでも変わる。
  • 原因の多くは不明。頭部への放射線照射歴や、一部の遺伝性疾患(Li-Fraumeni症候群など)は危険因子として知られる。
  • 症状は腫瘍の場所によって異なり、けいれん発作、頭痛、手足の麻痺、言葉の障害、性格の変化などで見つかることが多い。気になる症状があれば医療機関に相談してください。
  • びまん性星細胞腫に比べて、細胞密度の増加、核異型の明瞭化、核分裂像の増加、血管の増生と内皮細胞の増殖などがみられる。

画像所見

  • 病理学的にも画像的にもびまん型星細胞腫 diffuse astrocytomaと膠芽腫 glioblastomaとの中間の性質をもつ。
  • 成人の大脳半球の皮質下白質に、境界不明瞭な高信号域をMRIのT2強調像やFLAIR像で呈する。T2強調像でほぼ均一な高信号の腫瘍が、FLAIRでは辺縁の高信号を残して内部が相対的に低信号となる「T2-FLAIR mismatch sign」は、IDH変異・1p/19q非共欠失(星細胞腫, IDH変異型)を示唆する。メタアナリシスでは感度42%・特異度100%で、見られれば特異的だが、見られなくても否定はできない。
  • びまん性星細胞腫よりも容積効果が強く、腫瘍内部は出血など2次変化を反映して不均一となる。
  • 造影増強効果はさまざまで、ほとんど増強されないものから強い増強効果を示すものまである。増強パターンも局所的・結節状・リング状などさまざまである。
  • 脳室壁や脳溝に沿った播種を見ることがあり、線状・結節状の増強効果が見られる。

症例 30歳代男性 初回のけいれん発作

退形成性星細胞腫 MRI FLAIR像 横断
引用:Radiopaedia(Anaplastic astrocytoma)

左前頭葉(上前頭回)を中心に、皮質を膨らませるFLAIR高信号の腫瘤があり、周囲の白質へ境界不明瞭に広がっています。左側脳室を圧排し、正中構造が軽度右へ偏位しています。この症例では前内側部に造影される部分があり、病理でIDH変異型の退形成性星細胞腫(WHO grade 3)と診断されました。

退形成性星細胞腫でよくある疑問(Q&A)

Q. 退形成性星細胞腫と膠芽腫はMRIで見分けられますか?

A. 壊死を伴うリング状造影が目立てば膠芽腫を考えますが、画像だけでは区別できないこともあり、病理と遺伝子検査で診断します。

Q. 退形成性星細胞腫の生存率はどのくらいですか?

A. IDH変異の有無で大きく異なり、IDH変異型のほうが長い傾向があります(上記)。具体的な見通しは主治医に確認してください。

関連記事:びまん性星細胞腫のMRI画像診断|T2-FLAIRミスマッチとWHO分類2021

参考文献

  1. Louis DN, Perry A, Wesseling P, et al. The 2021 WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System: a summary. Neuro Oncol. 2021;23(8):1231-1251. PubMed
  2. Park SI, Suh CH, Guenette JP, et al. The T2-FLAIR mismatch sign as a predictor of IDH-mutant, 1p/19q-noncodeleted lower-grade gliomas: a systematic review and diagnostic meta-analysis. Eur Radiol. 2021;31(7):5289-5299. PubMed
  3. Patel SH, Poisson LM, Brat DJ, et al. T2-FLAIR Mismatch, an Imaging Biomarker for IDH and 1p/19q Status in Lower-grade Gliomas: A TCGA/TCIA Project. Clin Cancer Res. 2017;23(20):6078-6085. PubMed
  4. Yan H, Parsons DW, Jin G, et al. IDH1 and IDH2 mutations in gliomas. N Engl J Med. 2009;360(8):765-73. PubMed

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