頭部外傷によって起こる病態は
に分類されます。
その中でも、頭部外傷(特に交通事故などの重症例)で頻度の高い病変の一つがびまん性軸索損傷です。
今回は、このびまん性軸索損傷(DAI:diffuse axonal injury)について
- 症状
- 原因
- 画像診断
- 治療法
をイラストや実際の画像を用いて、わかりやすくまとめました。
先に結論:びまん性軸索損傷(DAI)のMRI
- びまん性軸索損傷は、交通事故などで頭が強く揺さぶられ(回転する力)、脳の神経線維(軸索)が広く傷つく外傷で、受傷直後から意識障害が続くのに、CTでは異常が目立たないことが多いのが特徴です
- MRIでは、大脳の皮質と白質の境目・脳梁(特に膨大部)・脳幹の背側に、SWIやT2*強調像で黒い点状の微小出血、拡散強調像やFLAIRで白い病変が見られます。脳梁・脳幹まで及ぶほど重症です
- CTで説明できない意識障害や高次脳機能障害がある頭部外傷では、MRI(SWIを含む)で評価することが大切です
※頭を強く打ったあとに意識がおかしい・ぼんやりが続くときは、すぐに救急を受診してください。
びまん性軸索損傷とは?

最初に述べました通り、頭部外傷によって起こるびまん性脳損傷の1つで、神経線維の軸索損傷(断裂)が起こった病態のことです。
頭部外傷が軽傷で、頭蓋の変形や頭蓋内血腫といった状態が認められないにもかかわらず、長期の意識障害がある場合、びまん性軸索損傷を疑います。
びまん性軸索損傷の症状とは?
- 受傷直後から昏睡に陥る意識障害
このびまん性軸索損傷の場合、受傷直後から見られる意識障害が特徴で、昏睡に陥るため、逆に意識障害がない場合はこの病態とは言われません。
軽度な場合は、脳震盪(のうしんとう)です。
見た目の外傷や出血もないのに、意識低下が長く(目安として6時間以上)続く場合は、びまん性軸索損傷を疑いますが(サルの実験でも6時間を超える昏睡ではDAIの程度が強かったと報告されています:Gennarelli 1982)、この臨床から判断した段階ではびまん性脳損傷と呼ばれます。
びまん性軸索損傷の好発部位は?

- 脳梁(特に膨大部)
- 大脳皮質下
- 中脳背外側部
などに高頻度に現れることが多いものですが、
- 脳弓・透明中隔(脳梁損傷がある人に多い:Gentry 1988, AJNR)
- 基底核
- 視床
などに見られることも時々あります。
びまん性軸索損傷の原因は?
- 回転速度のかかった頭部外傷が原因
- 脳深部にズレが生じ、脳室周囲白質や基底核部、脳梁、脳幹が損傷される
原因は、頭部外傷によるものです。
しかしその外傷の受け方が、ガクンと外部圧力を受け回転が伝わることによる衝撃(回転速度のかかった外力)で、神経線維の断裂(軸索損傷)が起こり、広い範囲で神経連絡機能が断絶してしまう状態です。※現在では、主に軸索の伸展によるものと考えられています。

つまりは、回転する力が加わることによって、プツンと神経が切れてしまう状態です。

その中でも1番多い原因としては、交通事故ですが、他に暴力を受けたり、スポーツ中の事故もあります。
びまん性軸索損傷の画像診断は?MRIが有用!
損傷部近傍の穿通枝が断裂して出血を伴う病変もありますが、出血を伴わない病変のほうが多いとされています(Gentry 1988, AJR)。
CTではこの出血を検出することになりますが、出血を合併していない場合にはCTでびまん性軸索損傷と診断するのは困難です。
そのため、症状から軸索損傷を疑った場合はMRIが有効です。
MRIによるDWI(拡散強調像)は軸索の細胞内浮腫の早期検出に有用で高信号を示します。
また、T2強調像やFLAIR像にて、長円形または円形の高信号が見られます。
長軸が軸索路に沿うのも特徴で、脳梁に病変が多いもので、そこを重点的に見ます。病理学的なAdams分類では、大脳半球白質などの軸索損傷のみをgrade 1、脳梁の局所病変を伴うものをgrade 2、さらに上部脳幹背外側の局所病変を伴うものをgrade 3としており、病変が脳梁・脳幹に及ぶほど重症と考えます(Adams 1989)。受傷1週以内にDWI・T2*・SWIで評価した重症DAI 30例の検討では、年齢と、SWIで中脳の黒質・被蓋にみられる病変が6か月後の不良な転帰と独立して関連していました。これをもとに、黒質・中脳被蓋の病変をstage IVとして加えた4段階のMRI分類が提案されています(Abu Hamdeh 2017)。
出血を伴う場合はT1強調像で高信号を示しますが、T2強調像では低信号となり、とくに微小血腫では、T2*強調像やSWIにて低信号となります。
CT・MRIの見え方の比較
| 検査 | 出血のない病変 | 出血を伴う病変 |
|---|---|---|
| CT | ほとんど見えない(感度17.7%) | 見える(感度89.8%) |
| MRI T2強調像 | よく見える(感度93.3%) | 見える(感度92.5%) |
| MRI T2*・SWI | - | 小さな微小出血まで見える。SWIはT2*(GRE)より多くの病変を描出 |
CT・T2強調像の感度は閉鎖性頭部外傷40例で脳挫傷とDAIをまとめた値です(Gentry 1988, AJR)。脳梁の外傷性病変はMRIで100%、CTで27%しか描出されませんでした(Gentry 1988, AJNR)。小児・青年7例の比較では、SWIで1038個、従来のGRE(T2*)で162個の出血性病変が見つかっています(Tong 2003)。
ただ、MRIでも診断は難しいものです。
MRIで確定診断ができなかったものでも受傷後の症状から疑った場合は、びまん性軸索損傷の可能性があると考え治療をし、数日〜数週間経過し、MRIで明瞭に診断出来るようになった頃に確定診断のために再び画像検査することもあります。
では、実際の症例を一例見てみましょう。
症例 50歳代男性 バイク事故によりGCS低下

引用:Radiopaedia
両側脳溝沿いに高吸収を認め外傷性くも膜下出血を疑う所見です。
また、右側頭葉後部には脳挫傷を疑う高吸収域を認めています。
次に、意識状態不良が続く状態で撮影された7日後のMRIのDWIを見てみましょう。

外傷性くも膜下出血・脳挫傷所見の他に、
- 両側前頭葉の灰白質―白質境界
- 脳梁(膨大部含む)
- 両側の中脳背側/上小脳脚
にDWI高信号を認め、典型的なびまん性軸索損傷を疑う所見です。
症例 20歳代 男性 交通事故 直後より遷延する意識障害あり。
頭部MRI

FLAIR像及び拡散強調像にて、左の放線冠に円形の異常な高信号を認めており、びまん性軸索損傷が疑われた症例です。
びまん性軸索損傷でよくある疑問(Q&A)
Q. 医療で「DAI」とは何の略ですか?
A. diffuse axonal injury(びまん性軸索損傷)の略で、頭部外傷で脳の神経線維(軸索)が広く傷つく状態を指します。
Q. MRIはいつ撮るのがよいですか?
A. 拡散強調像の病変は時間がたつと見えにくくなることがあり、受傷1週以内のMRIが勧められています。一方、SWIで見える微小出血は急性期を過ぎても残りやすいとされています(Abu Hamdeh 2017)。
びまん性軸索損傷の治療法は?
- 保存療法が一般的
- 脳挫傷や血腫などがあればそちらの治療を
基本的には、保存療法にて神経機能の回復を待ちます。
ただ、脳挫傷や血腫など重大な疾患を合併してしまっている場合には、そちらに対する治療を行います。
しかし、保存療法といっても安静だけではありません。
- 血液供給
- 酸素供給
脳の回復を期待し血液や酸素の供給を行います。
こうすることで、二次的脳障害予防ともなります。
ただ、回復するかどうかは意識回復するか否かです。
予後は、意識障害の時間が長ければ長いほど不良となり、高次脳機能障害をきたしやすくなります。
最後に
びまん性軸索損傷(DAI)についてまとめました。
ポイントは以下の通りです。
- 受傷直後から昏睡に陥る意識障害
- 外傷による回転性の衝撃で脳神経線維が断裂することで生じる
- MRIが有効だが、出血を伴わない場合は診断が困難
- 数日〜数週間ほど経過すると明瞭な画像所見が確認できることがある
- 治療は保存療法が一般的
- 脳挫傷や血腫などの合併を伴う場合は、そちらの治療を行う
- 早期意識回復が予後の回復に関係する
ただ、回復しても高次脳機能障害が見られることもあり、人格が変わったかのような症状が現れます。
そうなると、元に戻る可能性はゼロではありませんが、戻らない可能性もあります。
参考文献
- Adams JH, Doyle D, Ford I, et al. Diffuse axonal injury in head injury: definition, diagnosis and grading. Histopathology. 1989;15(1):49-59. PubMed
- Gentry LR, Godersky JC, Thompson B, et al. Prospective comparative study of intermediate-field MR and CT in the evaluation of closed head trauma. AJR Am J Roentgenol. 1988;150(3):673-82. PubMed
- Gentry LR, Thompson B, Godersky JC. Trauma to the corpus callosum: MR features. AJNR Am J Neuroradiol. 1988;9(6):1129-38. PubMed
- Tong KA, Ashwal S, Holshouser BA, et al. Hemorrhagic shearing lesions in children and adolescents with posttraumatic diffuse axonal injury: improved detection and initial results. Radiology. 2003;227(2):332-9. PubMed
- Abu Hamdeh S, Marklund N, Lannsjö M, et al. Extended Anatomical Grading in Diffuse Axonal Injury Using MRI: Hemorrhagic Lesions in the Substantia Nigra and Mesencephalic Tegmentum Indicate Poor Long-Term Outcome. J Neurotrauma. 2017;34(2):341-352. PubMed
- Bognár D, Petneházy Z, Laár P, et al. From microbleeds to axonal damage: current evidence and future directions. Front Radiol. 2026;6:1760936. PubMed
- Gennarelli TA, Thibault LE, Adams JH, et al. Diffuse axonal injury and traumatic coma in the primate. Ann Neurol. 1982;12(6):564-74. PubMed
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