一般によく耳にするくも膜下出血は、脳動脈瘤が原因で起こることが多いものですが、外傷が原因で起こるくも膜下出血もあり、それを外傷性くも膜下出血(Traumatic subarachnoid hemorrhage)と言います。実は、くも膜下出血の原因として最も多いのは頭部外傷です(Griswold 2022)。なお、軽症頭部外傷に伴う外傷性くも膜下出血は、臨床的な悪化や手術が必要になる危険が非常に低いと報告されています(ただし脳挫傷などを伴う例では増悪しうるため経過観察が必要です)。

今回はこの外傷性くも膜下出血について

  • 症状
  • 画像診断

をイラストや実際のCT、MRIの画像を提示しながら、分かりやすく解説しました。

頭を打ったあと、くも膜下出血って言われた…

けがによるくも膜下出血は、脳動脈瘤の破裂によるものとは原因がちがいます。CTで量や広がりを確かめて、経過を見ていきますよ。

先に結論:外傷性くも膜下出血(外傷性SAH)とは

  • 頭を強く打ったことで、脳の表面をおおうくも膜の下(くも膜下腔)に出血した状態です。脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血とは原因が違います。SAHは「サー」「ザー」とも読まれます
  • 原因は脳表の血管の破綻のほか、脳挫傷や硬膜下血腫からの出血が広がることも。症状は頭痛・吐き気・意識障害などで、受傷直後から出ます
  • CTでは、打った場所の近くや反対側の脳溝(脳表のしわ)に沿った出血が多く、動脈瘤破裂のように脳底部の脳槽(鞍上槽など)に厚く広がるのとは分布が違います。ただし倒れた原因が動脈瘤破裂のこともあるため、出血の場所から見極めます
  • MRIではFLAIR像(脳溝が白くなる)とSWI/T2*強調像(出血が黒く写る)を組み合わせると、CTより多くの出血を見つけられます(Verma 2013)

※頭を打ったあとに頭痛・吐き気・ぼんやりする・けいれんがあるときは、すぐに救急を受診してください。

外傷性くも膜下出血とは?

通常のくも膜下出血は動脈瘤の破裂によるものが多いですが、外傷性の場合は外傷を受けることが原因でくも膜下腔に出血をきたした状態です。

下のイラストの水色の部分がくも膜下腔であり、主に脳表の血管(架橋静脈や皮質の細い血管)の破綻により出血が起こります。

ちなみにくも膜下出血は英語で、subarachnoid hemorrhageであり、頭文字をとってSAH(読み方は、そのままエスエーエイチ、もしくはザーと呼ぶこともあり)と呼ばれることがあります。

外傷によるSAHは上のイラストにも記載しているように外傷性SAHと記載されることがあります。

外傷性くも膜下出血の症状は?

症状には以下のものがあります。

  • 激しい頭痛
  • 嘔吐
  • 意識障害

意識障害を起こし気を失ってしまうこともあります。これが外傷を受けた後すぐから現れます。

外傷性くも膜下出血の原因は?

頭部に強い衝撃を受けたことによって、上のイラストのようにくも膜下腔の静脈(架橋静脈)が破綻したことが原因であることが多いですが、硬膜下血腫や脳挫傷に伴う出血によりくも膜下腔に穿破することが原因で起こることもあります。

ただ、目撃者がいなければ、くも膜下出血を起こした後に倒れて外傷を受けたのか、外傷によるくも膜下なのか、見た目には分からないため検査が必要です。

外傷が原因でない場合のくも膜下出血だと、前交通動脈(前大脳動脈)・内頚動脈・中大脳動脈の分岐部などの動脈瘤が好発部位としてありますが、外傷性の場合はそれに関係せず、異なった部位に起こるのが特徴ですが、中には外傷により動脈瘤が破裂することもあります。

外傷性くも膜下出血の診断は?

画像診断が必須です。

外傷を受けた部位(直接損傷(coup injury))、またはその対側に出血(対側損傷(contrecoup injury))が認められます。

CTで診断を行い、出血の確認や脳挫傷の合併を診断することは可能ですが、分かりにくい場合にはMRIのFLAIRがくも膜下出血の描出に有効です。

CTやMRIの画像の読影に際して注意する点としては、

  • 上に示したような直接損傷(coup injury)だけではなく対側損傷(contrecoup injury)のチェックをする。
  • 脳挫傷や硬膜下血腫、びまん性軸索損傷などを伴うことがある。特に大脳半球間裂や中脳周囲槽など正中部の外傷性くも膜下出血は、重症のびまん性軸索損傷(脳梁・脳幹に及ぶもの)の目印になりうると報告されています(270例の検討で感度60.8%・特異度81.7%)。正中部に出血があるときは、CTで所見が乏しくてもMRIでびまん性軸索損傷を確認することを考えます。

という点です。

外傷性くも膜下出血と動脈瘤破裂によるくも膜下出血の違い

外傷性くも膜下出血 動脈瘤破裂によるくも膜下出血
きっかけ 頭を打った・交通事故・転倒 突然の激しい頭痛(打撲なし)
CTでの出血の場所 打った場所やその反対側の脳溝・シルビウス裂など脳の表面に沿って薄く 脳底部の脳槽(鞍上槽・シルビウス裂の奥)を中心に厚く左右に広がる
一緒に見られやすいもの 脳挫傷・硬膜下血腫・頭皮の血腫(帽状腱膜下血腫)・頭蓋骨骨折 脳室内出血・水頭症
追加の検査 経過観察のCT、必要に応じてMRI CTアンギオグラフィーなどで動脈瘤を探す

出血が脳底部の脳槽に厚く広がっているときや、打撲の程度に比べて出血が多いときは、先に動脈瘤が破れて倒れた可能性も考えて血管の検査を行います。

外傷性くも膜下出血単独で生じることもありますが、外傷に伴う他の種類の出血を合併することがあるので、それらの見落としには注意が必要です。

それでは実際の症例の画像を見ていきましょう。

50歳代女性 頭部外傷
頭部CT 横断像

右前頭側頭部に帽状腱膜下血腫(〜皮下血腫)を認めています。ややわかりにくいですが、両側のシルビウス裂、左側の脳溝に沿った外傷性くも膜下出血を認めているのがわかります。

頭部CT 冠状断像

冠状断像においても同様の所見を認めています。両側にあれば一見見落としてしまいそうですが、この症例では左で出血がやや目立ちます。

40歳代男性 頭部外傷
頭部CT 横断像

この症例は先程よりは血腫がわかりやすく、右シルビウス裂を中心にくも膜下出血を認めています。

ちなみにくも膜下腔の解剖はこのようになります。

高吸収(白い)部位を探すことも大事ですが、本来見えるべきくも膜下腔が見えないことを探すという点も重要です。

CTで見逃しやすい場所としては、

  • 脳の表面の細い脳溝(特に頭頂部の高い位置)
  • シルビウス裂・島槽
  • 大脳半球間裂(大脳鎌と重なり、正常でも白く見える)
  • 脚間槽や中脳周囲の脳槽
  • 側脳室の後角(少量の出血が下にたまる)

があり、左右を見比べることが大切です。

頭部MRI 横断像

この症例のMRIのFLAIR像でも右のシルビウス裂に異常な高信号を認めています。くも膜下出血を疑う所見です。

外傷9例を含むくも膜下出血25例でCTとMRIを比べた研究では、出血のあった部位のうちCTで見えたのは75.3%、FLAIR像で87%、SWIで88.4%で、FLAIRとSWIを組み合わせると100%見つかりました。FLAIRは脳の表面やシルビウス裂、SWIは大脳半球間裂や脳室内の出血に強いという違いがあります(Verma 2013)。

60歳代男性 交通事故
頭部CT 横断像

右島槽に高吸収あり。外傷性くも膜下出血を認めています。

頭部CT 冠状断像

右シルビウス裂を中心に外傷性くも膜下出血を認めています。

外傷性くも膜下出血を認めた場合は、CTで血腫の広がりがないかをフォローする必要があります。

同日のフォローCT 横断像

同日に撮影されたフォローCTでは、両側前頭葉脳底部にSalt and pepper状の脳挫傷の出現を認め、右のシルビウス裂を中心に認めていた外傷性のくも膜下出血も鞍上槽、両側大脳谷槽、左側のシルビウス裂にかけて広範に広がっています。

さらに急性硬膜下血腫まで出現しています。

同じ症例とは思えないほど一気に増悪していますね。

出血を認めた場合は、フォローしなければならないということがよくわかりますね。

帽状腱膜下血腫とは?

外傷性くも膜下出血の症例では、頭皮の下の出血(頭皮の血腫)が一緒に見られることがよくあり、打った場所を知る手がかりになります。頭皮の血腫は、たまる深さによって次のように分けられます。

種類 出血の場所 CTでの特徴
皮下血腫 皮膚のすぐ下 打った場所に限られた小さなふくらみ
帽状腱膜下血腫 頭皮の硬い膜(帽状腱膜)と骨膜の間 縫合線を越えて頭の広い範囲に三日月状に広がる
骨膜下血腫(頭血腫) 骨膜と頭蓋骨の間 頭蓋骨の縫合線を越えない(主に新生児)

帽状腱膜下血腫は頭蓋骨の外側の出血なので、それ自体は脳の中の出血ではありませんが、頭蓋骨骨折や頭の中の出血を伴うことがあるため、骨の条件(骨条件)のCTもあわせて確認します。

外傷性くも膜下出血の治療方法は?

  • 保存療法が一般的
  • 手術はしない
  • 例外がある

脳動脈瘤が原因ではないため、一般的には手術の対象とはなりません。但し、外傷によって動脈瘤破裂が起こってる場合や、脳挫傷を合併している場合には手術適応となることがあります。

保存療法

  • 止血
  • 脳の圧力を低下させる
  • 脳の浮腫を抑える
  • 再出血予防

薬剤を投与して安静にする保存療法が一般的で、血液は時間の経過と共に自然に吸収されます。ですが、脳圧亢進や浮腫、血腫がひどい場合には再出血をしてしまうことも予測できるため、減圧術や脳室ドレナージといった処置を行うこともあります。

最後に

  • 激しい頭痛や嘔吐、意識障害が外傷を受けた直後に現れる
  • 外傷単独の場合と、脳挫傷やびまん性軸索損傷、橋・延髄部横断損傷などを伴う場合がある
  • 外傷を受けた側、またはその対側に出血が見られる
  • 画像診断が有効で、MRIのFLAIRが鮮明に診断できる
  • 一般的に手術の対象とはならず、保存療法を行う
  • 脳挫傷の合併があるかどうかで、治療方法や予後も異なる

 

動脈瘤によるくも膜下出血は中高年に多いものですが、外傷性の場合は年齢に関係なく、子供でも起こります。

外傷性くも膜下出血は、回復までに時間はかかることはあっても、脳挫傷など大きな合併を起こしていなければ予後は良好です。

外傷性くも膜下出血でよくある疑問(Q&A)

Q1. くも膜下出血はCTで見逃されることがありますか?

あります。出血がごく少量のとき、時間がたって血液が薄まったときは見えにくくなります。頭痛で受診した人(外傷以外)の研究では、CTの感度は全体で92.9%でしたが、頭痛が始まってから6時間以内に撮ったCTでは100%でした(Perry 2011)。CTで分からないときはMRIのFLAIR像やSWIが役立ちます(Verma 2013)。

Q2. 外傷性くも膜下出血はMRIで何が分かりますか?

FLAIR像では本来黒く写る脳溝の髄液が白く写り、SWIやT2*強調像では出血が黒く写ります。さらにCTでは分かりにくい小さな脳挫傷やびまん性軸索損傷も見つけやすくなります。

Q3. 「外傷性ザー」とは何ですか?

SAH(くも膜下出血)を「ザー」と読むことがあり、外傷性ザーは外傷性くも膜下出血のことです。医療現場の略語です。

Q4. 頭を打ったあと、どんなときに受診すべきですか?

頭痛が強くなる、何度も吐く、ぼんやりする・呼びかけへの反応が鈍い、けいれん、手足の動きにくさなどがあれば、すぐに救急を受診してください。打った直後は元気でも、あとから出血が広がることがあります(上の60歳代男性の症例)。

図解まとめ

参考文献

  1. Modi NJ, Agrawal M, Sinha VD. Post-traumatic subarachnoid hemorrhage: A review. Neurol India. 2016;64 Suppl:S8-S13. PubMed
  2. Griswold DP, Fernandez L, Rubiano AM. Traumatic Subarachnoid Hemorrhage: A Scoping Review. J Neurotrauma. 2022;39(1-2):35-48. PubMed
  3. Armin SS, Colohan AR, Zhang JH. Traumatic subarachnoid hemorrhage: our current understanding and its evolution over the past half century. Neurol Res. 2006;28(4):445-452. PubMed
  4. Nassiri F, Badhiwala JH, Witiw CD, et al. The clinical significance of isolated traumatic subarachnoid hemorrhage in mild traumatic brain injury: A meta-analysis. J Trauma Acute Care Surg. 2017;83(4):725-731. PubMed
  5. Mata-Mbemba D, Mugikura S, Nakagawa A, et al. Traumatic midline subarachnoid hemorrhage on initial computed tomography as a marker of severe diffuse axonal injury. J Neurosurg. 2018;129(5):1317-1324. PubMed
  6. Verma RK, Kottke R, Andereggen L, et al. Detecting subarachnoid hemorrhage: comparison of combined FLAIR/SWI versus CT. Eur J Radiol. 2013;82(9):1539-1545. PubMed
  7. Perry JJ, Stiell IG, Sivilotti ML, et al. Sensitivity of computed tomography performed within six hours of onset of headache for diagnosis of subarachnoid haemorrhage: prospective cohort study. BMJ. 2011;343:d4277. PubMed

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