先に結論:内頚動脈解離
- 内頚動脈解離は若年〜中年の脳梗塞の重要な原因で、首・顔・頭の片側の痛みや同じ側のHorner症候群が先に出て、数日以内に脳梗塞を起こすことがあります
- 画像では偏心性に細くなった内腔と、壁内血腫(脂肪抑制T1で三日月状の高信号)が特徴で、血管造影では頸動脈球部より先から頭蓋底に向かう先細りが見られます
- 軽い外傷やカイロプラクティック・首をひねる動作のあとにも起こるため、問診が手がかりになります
- 椎骨動脈解離(頚椎のそばを通る動脈の解離)とは、痛む場所(後頸部・後頭部)と脳梗塞の起こる場所(脳幹・小脳)が違います
内頚動脈解離と椎骨動脈解離(頚椎動脈解離)の違いは?
首の動脈の解離(頸部動脈解離)には、首の前外側を上る内頚動脈に起こるものと、頚椎の横突孔の中を上る椎骨動脈に起こるものがあります。「頚椎動脈解離」と検索されることがありますが、頚椎のそばを通る動脈は椎骨動脈で、正式には椎骨動脈解離といいます。どちらも若い人の脳梗塞の原因になりますが、症状の出方が違います。
| 内頚動脈解離 | 椎骨動脈解離 | |
|---|---|---|
| 血管の通り道 | 首の前外側を上り、頭蓋底の頸動脈管から頭の中へ入る | 頚椎の横突孔を通って上り、頭の中で左右が合流して脳底動脈になる |
| 痛みの場所 | 片側の首の前・顔・目の奥・こめかみ | 片側の後頸部・後頭部 |
| 脳梗塞の場所 | 前方循環(中大脳動脈・前大脳動脈の領域) | 後方循環(延髄・小脳・脳幹・後頭葉)。延髄外側症候群(ワレンベルグ症候群)が代表 |
| そのほかの特徴 | 血管の壁に沿う交感神経が障害され、同じ側のHorner症候群が出ることがある | 頭蓋内(硬膜の内側)の部分で解離すると、くも膜下出血を起こすことがある |
画像の見方は共通で、偏心性の内腔狭小化、壁内血腫(脂肪抑制T1強調像で三日月状の高信号)、intimal flapや二重の内腔を探します。椎骨動脈はもともと左右の太さが違うこと(片側の低形成)が多いため、細いだけで解離と決めつけず、BPASなどで血管の外側の太さも確かめます。首や頭の急な痛み、ふらつき、ろれつが回らないなど気になる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。
椎骨動脈解離の詳しい画像所見は、椎骨動脈解離とは?症状・原因とCT・MRI画像診断(BPAS・MRA・intimal flap)で解説しています。
内頚動脈解離(internal carotid artery dissection)とは?
- 遠位内頚動脈で見られることが多い。
- 原因は特発性が最多。他、外傷や血管炎が挙げられる。
- 危険因子は、線維筋性異形成、Marfan症候群、Ehlers-Danlos症候群、常染色体優性多発嚢胞腎などがある。
- 家族性内頚動脈解離もあり。
- 約20%で両側発症、あるいは椎骨動脈にも発症する。
- 脳梗塞で発症することが多く、特に中大脳動脈などへの塞栓症の原因となる。
- ただし、頭痛、頚部痛、顔面痛などの痛みが先行して、数日以内に虚血の症状が現れることもある。
- 痛みの症状は初発後数時間から3-4週間持続。
- 同側のHorner症候群(多くは縮瞳・眼瞼下垂のみの部分的なもの)を伴うことがある(半数未満)。
- 比較的若年者に多い。70%が35-50歳。
内頚動脈解離の画像所見は?
- 造影CT(CTA)では偏心性の内腔狭小化と三日月状の壁肥厚(壁内血腫)、先細り状の狭窄・閉塞が主体で、内膜フラップによる2腔構造や解離性動脈瘤を認めることもある。
- MRIでflow voidの消失、不明瞭化。遅い血流による高信号。偏心性に狭小化した残存内腔を認める。壁内血腫は脂肪抑制T1強調像で三日月状の高信号として描出されるのが特徴的である。ただし発症早期(数日以内)はメトヘモグロビン形成前で等信号のことがあり、見逃しに注意する。
- 血管造影では、通常頚動脈球部は保たれ、解離は頭蓋底まで達する。
症例 40歳代男性 右側頭部痛、ろれつ困難。

右の中大脳動脈領域の前方部分に急性期以降の脳梗塞所見。
MRAの元画像では、右内頚動脈はC5で偏心性に狭小化あり。解離を疑う所見です。
またMRAのMIP像では、解離に伴い右内頚動脈から中大脳動脈M1領域の描出が不良です。
右内頚動脈解離に伴う脳梗塞と診断されました。

血管造影にて、MRIで認めた部位に一致して解離所見あり。
関連記事:孤立性腹腔動脈解離とは?CT画像所見は?
参考文献)
臨床画像 vol.26,No.8,2010 P907
脳卒中診療のコツと落とし穴 P66
画像診断ポケットガイド 脳Top100診断 P125-126
- Schievink WI. Spontaneous dissection of the carotid and vertebral arteries. N Engl J Med. 2001;344(12):898-906. PubMed
- Rodallec MH, Marteau V, Gerber S, et al. Craniocervical arterial dissection: spectrum of imaging findings and differential diagnosis. Radiographics. 2008;28(6):1711-28. PubMed
あわせて読みたい:小児脳梗塞のMRI|CTで診断できない理由・原因別の画像の手がかり・脳梗塞に似た病気
あわせて読みたい:多発外傷の頭頸部評価|鈍的脳血管損傷(BCVI)をCT血管撮影で見つける基準(拡大Denver)と読み方
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
