先に結論:結節性多発動脈炎(PAN)

  • 結節性多発動脈炎は中くらいの太さの動脈の壊死性血管炎で、ANCAは陰性です。発熱・体重減少・高血圧・腎障害・多発単神経炎・腹痛・皮膚潰瘍などを起こします
  • 血管造影・CTAでは腎・腸間膜・肝の動脈に多発する小さな動脈瘤と狭窄が特徴で、動脈瘤の破裂による出血や腸管・腎の梗塞が見られます
  • 腎は侵されやすい臓器の一つで、CT・MRIでは腫大した腎に楔状の造影不良域が多発し、腎盂腎炎と似て見えることがあります。動脈瘤が破れると腎周囲血腫になります(Ozaki 2009、Miyagawa 2021)
  • B型肝炎との関連が知られ、小血管の血管炎(顕微鏡的多発血管炎など)とは区別します
  • 国際的にはACR 1990分類基準(10項目中3項目以上)が知られ、皮膚だけに病変がとどまる皮膚型もあります

結節性多発動脈炎(PAN:polyarteritis nodosa)とは?

  • 中等度の太さの動脈と細い太さの動脈に炎症が生じる疾患。
  • 全身臓器に分布する血管に動脈炎をきたし、様々な症状を起こす。
  • 壊死性血管炎を起こすため、動脈壁の拡張や動脈瘤の形成、狭窄や閉塞などを起こし、各臓器に虚血や出血を起こすことがある。
  • MPO-ANCAは通常陰性。(一方、小型血管炎であるANCA関連血管炎の顕微鏡的多発血管炎(MPA)では陽性となることが多い)

結節性多発動脈炎の症状は?

症状は発症した臓器により多彩。

  • 全身症状(発熱・体重減少・高血圧)
  • 筋肉関節症状
  • 皮膚症状(紫斑、潰瘍、結節性紅斑)
  • 腎障害
  • 末梢神経炎
  • 中枢神経症状(脳梗塞、脳出血)
  • 消化器症状(消化管出血、穿孔、梗塞)
  • 心症状(心筋梗塞、心外膜炎)
  • 肺・胸膜症状
  • 眼症状

などが見られる。

結節性多発動脈炎の診断基準は?

診断は、上のような臨床症状に、組織所見(生検)と血管造影所見を組み合わせて行います。日本には指定難病としての診断基準がありますが、細かな項目は改訂されることがあるため、難病情報センターなど公的な資料の現行版で確認してください。

ACR 1990分類基準(国際的に知られる分類基準)

PAN 118例と他の血管炎689例を比べて作られた分類基準で、次の10項目のうち3項目以上を満たすと感度82.2%・特異度86.6%でした(Lightfoot 1990)。

  • 4kg以上の体重減少
  • 網状皮斑(livedo reticularis)
  • 精巣の痛み・圧痛
  • 筋痛
  • 単神経炎・多発神経炎
  • 拡張期血圧90mmHg超
  • BUNまたはクレアチニンの上昇
  • 血清のB型肝炎ウイルスマーカー陽性
  • 血管造影の異常(動脈瘤・閉塞)
  • 生検で動脈壁に顆粒球などの炎症細胞浸潤

これは研究用の分類基準で、個々の診断にそのまま使うものではありません。

組織所見

中・小動脈のフィブリノイド壊死性血管炎の存在

血管造影所見

腹部大動脈分枝(特に腎内小動脈)の多発小動脈瘤と狭窄・閉塞。なお、PAN 56例の血管造影では動脈瘤(拡張を含む)は61%にとどまり、狭窄・閉塞などの閉塞性病変は98%にみられたため、動脈瘤がなくてもPANは否定できません。

病理の特徴

壊死性の炎症が分節状(とびとび)に起こり、急性期と瘢痕期の病変が混在するのが特徴です。

参考となる検査所見として、白血球数増加、血小板増加、CRP高値、血沈亢進などがある。

2021年の米国リウマチ学会/Vasculitis Foundationのガイドライン(B型肝炎に関連しないPANが対象)では、診断に画像検査と組織生検を用いることを支持し、重症例ではシクロホスファミドとグルココルチコイドによる早期治療を推奨しています。

結節性多発動脈炎の画像所見は?

  • 消化器:粘膜の肥厚、腸閉塞、SMA/IMAの動脈瘤、肝動脈瘤、脾動脈瘤、肝梗塞、脾梗塞
  • 泌尿器:腎動脈瘤、尿管閉塞、腎周囲血腫、膀胱壁肥厚など
  • MRI:筋痛がある部位の筋肉が脂肪抑制T2強調像(STIR)で高信号を示すことがあり、生検部位の選択に使われます。MRIで部位を選んで筋生検を行った検討では、PANの診断感度は85.7%(6/7例)でした(Fukami 2025)。

結節性多発動脈炎の腎病変:腎内の小動脈瘤・楔状梗塞・腎周囲血腫

  • 腎内の小さな動脈に炎症が起こると、微小動脈瘤と狭窄・閉塞ができます。血流が途絶えた部分は楔状の梗塞になり、動脈瘤が破れると腎周囲血腫や腎内の出血を起こします。
  • 腎PANのCT・MRIを検討した報告(4例)では、共通する所見は腎の腫大、動的造影での小さな楔状の造影不良域の多発、平衡相CTでの皮質と髄質の境界の不明瞭化でした。腎動脈造影では4例すべてに多発する微小動脈瘤がありました(Ozaki 2009)。
  • 同じ報告で、微小動脈瘤が見えないときは腎盂腎炎に似た所見になり、CT・MRIでの区別は難しいとされ、PANが疑われるときは早めに血管造影を行うことが勧められています(Ozaki 2009)。
  • 腎動脈瘤が破裂して腎周囲血腫を起こしたPANの症例では、体重減少・筋力低下・多発単神経炎・高血圧・腎機能障害のあとに突然の側腹部痛が出現し、腎動脈造影で両側に多発する微小動脈瘤が見つかりました。破裂した動脈瘤へのコイル塞栓と免疫抑制治療で寛解しています(Miyagawa 2021)。
  • 腎内の小動脈の評価では、PAN 56例の血管造影で動脈瘤(拡張を含む)は61%、閉塞性病変は98%にみられたため、狭窄や閉塞だけでもPANを否定できません(Stanson 2001)。
病態 CT・MRIでの見え方 確認すること
腎内の微小動脈瘤 動脈相で点状に濃染して見えることがあるが、CT・MRIでは見えないこともある(Ozaki 2009) 動脈相の薄いスライス、必要なら血管造影
楔状梗塞 腎の表面に底を向けた楔状の造影不良域が多発(Ozaki 2009) 腎盂腎炎・塞栓症との鑑別。熱・炎症反応の経過、他臓器の動脈瘤
腎周囲血腫・腎内出血 腎の周囲や腎内の急性出血は高吸収。造影CTでは血管外漏出を確認 出血源の動脈瘤。緊急での塞栓術が検討される(Miyagawa 2021)
腎の腫大・皮髄境界不明瞭 びまん性の腫大、平衡相で皮質と髄質の境界が不明瞭(Ozaki 2009) 他臓器(肝・腸間膜・脾)の動脈瘤や梗塞の有無

結節性多発動脈炎の腎病変でよくある疑問(Q&A)

腎臓にたくさん梗塞があるとき、結節性多発動脈炎を疑うのはどんなときですか?

発熱・体重減少・高血圧・腎機能障害・手足のしびれなどの全身症状があり、腎の楔状の造影不良域が多発して、肝・腸間膜・脾などにも小さな動脈瘤や梗塞があるときです。腎盂腎炎に似て見えることがあるため、画像だけで決めず、血管造影や生検とあわせて判断します(Ozaki 2009)。

腎の動脈瘤が破れると、どのような症状が出ますか?

急に強い側腹部痛が出ることがあります。腎周囲血腫を起こしたPANの症例でも、突然の右側腹部痛がきっかけでした(Miyagawa 2021)。突然の強い腹痛や側腹部痛があるときは、すぐに医療機関を受診してください。

皮膚型結節性多発動脈炎の画像は?

  • 皮膚型(皮膚限局型)は、病変が主に皮膚・皮下の動脈にとどまるタイプで、下腿を中心に皮下結節・網状皮斑・潰瘍がみられます。
  • 診断は皮膚生検で行い、画像は内臓の動脈瘤や梗塞がないか(全身型でないか)を確かめるために使います。

発熱・体重減少・皮膚の結節や潰瘍・手足のしびれなど気になる症状があれば、医療機関を受診してください。

症例 50歳代男性 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA、旧称Churg-Strauss症候群)の疑い

結節性多発動脈炎 造影CT 横断像
引用:Radiopaedia(Polyarteritis nodosa)

造影CT(動脈相)の横断像です。左腎の内部に小さな動脈瘤を認めます(赤矢印)。この症例では腎動脈のほか、肝内動脈・胆嚢動脈・膵頭部・腸間膜の動脈にも多発する微小動脈瘤がみられ、肺に異常がないことから結節性多発動脈炎が考えられました。

参考文献

  1. Jennette JC, Falk RJ, Bacon PA, et al. 2012 revised International Chapel Hill Consensus Conference Nomenclature of Vasculitides. Arthritis Rheum. 2013;65(1):1-11. PubMed
  2. Stanson AW, Friese JL, Johnson CM, et al. Polyarteritis nodosa: spectrum of angiographic findings. Radiographics. 2001;21(1):151-9. PubMed
  3. Lightfoot RW Jr, Michel BA, Bloch DA, et al. The American College of Rheumatology 1990 criteria for the classification of polyarteritis nodosa. Arthritis Rheum. 1990;33(8):1088-93. PubMed
  4. Fukami S, Ohmura SI, Masui T, et al. MRI-guided muscle biopsy improves diagnostic yield in small- to medium-vessel vasculitis: a retrospective single-center study. Rheumatol Int. 2025;46(1):24. PubMed
  5. Chung SA, Gorelik M, Langford CA, et al. 2021 American College of Rheumatology/Vasculitis Foundation Guideline for the Management of Polyarteritis Nodosa. Arthritis Rheumatol. 2021;73(8):1384-1393. PubMed
  6. Isobe M, Amano K, Arimura Y, et al. JCS 2017 Guideline on Management of Vasculitis Syndrome – Digest Version. Circ J. 2020;84(2):299-359. PubMed
  7. Ozaki K, Miyayama S, Ushiogi Y, et al. Renal involvement of polyarteritis nodosa: CT and MR findings. Abdom Imaging. 2009;34(2):265-70. PubMed
  8. Miyagawa T, Iwata Y, Oshima M, et al. Polyarteritis nodosa with perirenal hematoma due to the rupture of a renal artery aneurysm. CEN Case Rep. 2021;10(2):244-249. PubMed

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