Fitz-Hugh-Curtis症候群とは?

  • クラミジア(Chlamydia trachomatis)や淋菌は骨盤腹膜炎を引き起こす。その骨盤腹膜炎(PID)が上行感染し、肝周囲の限局的な腹膜炎(肝周囲炎)を起こすことがあり、これをFitz-Hugh-Curtis症候群という。
  • 近年クラミジアの頻度が上昇している。
  • 上行感染する経路としては、右傍結腸溝を介して腹腔内を直接進展していくほか、リンパ行性の経路が考えられている。
  • 上腹部痛(特に右季肋部痛)を主訴とする。これは肝周囲炎が肝臓被膜や腹膜へ及ぶことが原因と考えられている。
  • 骨盤腹膜炎の3週〜3か月後に発症することが多いが、先行する骨盤腹膜炎(PID)の症状が乏しく、上腹部痛(特に右季肋部痛)を初発の主訴として受診することがある。
  • 女性に多く見られ、若年女性の急性腹症としては鑑別に入れるべき疾患。
  • 急性期は肝臓表面の滲出性炎症であり、慢性期には肝臓表面と腹壁の間に線維性癒着を生じ、その腹腔鏡における肉眼的外観からviolin-string appearanceと呼ばれる。
  • 診断は血清学的抗体化の上昇、尿PCR、頸管スワブから診断されることが多い。
  • 治療はテトラサイクリンやエリスロマイシンなどの抗生物質。

Fitz-Hugh-Curtis症候群のCT画像所見は?

  • ダイナミックCTで造影早期相での肝被膜(内側区から右葉外側区中心)に沿った造影効果を認める。これは肝周囲から肝被膜に及んだ炎症に伴う血流の増加と考えられている。
  • 慢性期になると、早期のみでなく、遅延造影を認めることもあり、こちらは炎症に伴う線維性の変化を反映していると考えられる(線維性変化はゆっくり造影される。)。肝周囲に限局性の液貯留が起こることもある。
  • 加療後はこの所見は消失する。
  • 骨盤感染症を疑うCT所見は必ずしも認められない。時として卵管水腫や卵管炎などを疑う所見が認められることがある。

特に肝被膜の早期濃染が重要となりますので、いかにこの疾患を疑い、ダイナミックCT撮影に持って行けるかが重要となります。

症例 20歳代女性 右腹部痛

引用:radiopedia

肝被膜にわずかな造影効果を認めており、それを尾側に追うと大網に脂肪織濃度上昇を認めており、炎症が上行性に肝被膜に到達したと推測されます。

尿からクラミジア・トラコマチス抗原が検出され、骨盤腹膜炎が肝被膜に及んだ肝被膜炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)と診断されました。

※動脈相が撮影されていれば肝被膜を縁取るような造影効果はより明瞭であったのだろうと推測されます。

造影早期相での肝被膜(内側区から右葉外側区中心)に沿った造影効果を認めうる疾患

造影早期相での肝被膜に沿った造影効果があれば、この疾患というわけではなく、以下の疾患で呈しうるので注意が必要です。

  • 全身性エリテマトーデス(SLE)
  • 上部消化管穿孔
  • 穿孔性胆嚢炎
  • 穿孔性肝膿瘍
  • 結核性腹膜炎

など。

症例 60歳台男性 胃穿孔による汎発性腹膜炎

ダイナミックCTの早期相で、肝辺縁に造影効果を認めています。

こちらは腹膜炎の炎症が肝被膜に波及したため造影効果を認めているト考えることができます。

参考文献)
画像診断 Vol.38 No.1 2018 P27

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