先に結論:気管・気管支損傷
- 気管・気管支の外傷性損傷は、鈍的外傷では約8割が気管分岐部から2cm以内に起こり、縦隔気腫・皮下気腫・気胸を伴います
- 胸腔ドレーンを入れても空気漏れが続き、肺が膨らまないときに疑い、肺が肺門から外れて下に落ちる(fallen lung sign)は特徴的な所見です
- CTでは気管支壁の断裂・形の変化・挿管チューブのカフの異常な膨らみを探し、確定は気管支鏡で行います
気管気管支断裂(損傷)(tear of bronchus)
- 約8割(76%)は分岐部から2cm以内に起こる。鈍的外傷265例のレビューでは43%が右主気管支の最初の2cm以内で、原因は交通事故が59%と最多だった(Kiser 2001)。
- 断裂の形態は不全断裂と完全断裂に分けられる。
- 大多数は不全断裂。
- 気胸や、縦隔気腫、皮下気腫などのairのリーク所見があり、片肺の虚脱が胸腔ドレナージを行っても改善しないときに疑う。
- また、気管内チューブの位置異常、挿管チューブのバルーンカフの過膨張や偏位(気管外への逸脱)は気管損傷を強く示唆する。
- 鋭的外傷はもちろん鈍的外傷でも内圧上昇や剪断力により生じる。多くは鈍的外傷。
- 鈍的外傷では、主気管支の不全断裂が多く、画像でも捉えられない事が多い。慢性的な肺炎や喀痰の喀出障害の原因となる。
- 気管支断端からairのリークを生じて、緊張性気胸を呈することあり。
気管気管支断裂(損傷)の画像診断
- 気胸、縦隔気腫、皮下気腫といった非特異的所見のみの場合もあり。
- 緊張性気胸。
- (fallen lung sign)(落下肺徴候):虚脱した肺が肺門から離れて、下方に落ち込んだり外側に偏位する。この所見が疑われたら、撮影体位を変えて虚脱肺の位置を確かめるとより明確になる。
- 気管内挿管チューブの異常や気管軟骨の変形といった直接的な所見があれば、気管損傷の診断を示唆。
- CTでは、気管に沿った縦隔気腫、気管壁の部分的肥厚、気管軟骨の変形、気管壁の断裂がないかをチェックする。気管損傷14例の検討では、CTで壁の欠損や変形を直接とらえられたのは71%、CT全体の検出感度は85%であった。全例に深頸部の気腫と縦隔気腫があったため、外傷で縦隔気腫をみたら気管損傷を疑い、気管支鏡につなげることが大切である。
致死的胸部外傷
- 気管気管支断裂
- 横隔膜ヘルニア
- 食道断裂
- 心挫傷
- 肺挫傷
- 大動脈断裂
症例 50歳代女性 交通事故(時速約60km)
胸部CT(肺野条件)の冠状断です。左に大量の気胸があり、虚脱した左肺が肺門から離れて外側下方へ落ち込んでいます(fallen lung sign)。この徴候は気管支の完全断裂を示唆するとされます。
気管偏位とは(外傷で気管がずれるとき)
胸部X線で気管が正中からずれることを気管偏位といいます。緊張性気胸や大量血胸では反対側へ押され、無気肺(気管支の閉塞や断裂で肺がしぼむとき)では同じ側へ引かれます。鈍的胸部外傷で第4胸椎の高さの気管や経鼻胃管が右へずれるときは、大動脈損傷を疑う手がかりになります(Marnocha 1985)。緊張性気胸は臨床所見で判断し、X線を待たずに処置します。
皮下気腫・縦隔気腫のレントゲン所見
皮下気腫は胸壁や頸部の筋肉に沿った線状の透亮像として見えます。縦隔気腫では、胸腺が浮き上がるthymic sail sign、肺動脈を空気が囲むring around the artery sign、心臓の下で左右の横隔膜がつながって見えるcontinuous diaphragm signなどが手がかりです(Zylak 2000)。
参考文献
- Moser JB, Stefanidis K, Vlahos I. Imaging Evaluation of Tracheobronchial Injuries. Radiographics. 2020;40(2):515-528. PubMed
- Grewal HS, Dangayach NS, Ahmad U, et al. Treatment of Tracheobronchial Injuries: A Contemporary Review. Chest. 2018;155(3):595-604. PubMed
- Kiser AC, O’Brien SM, Detterbeck FC. Blunt tracheobronchial injuries: treatment and outcomes. Ann Thorac Surg. 2001;71(6):2059-65. PubMed
- Chen JD, Shanmuganathan K, Mirvis SE, et al. Using CT to diagnose tracheal rupture. AJR Am J Roentgenol. 2001;176(5):1273-80. PubMed
- Marnocha KE, Maglinte DD, Woods J, et al. Blunt chest trauma and suspected aortic rupture: reliability of chest radiograph findings. Ann Emerg Med. 1985;14(7):644-9. PubMed
- Zylak CM, Standen JR, Barnes GR, et al. Pneumomediastinum revisited. Radiographics. 2000;20(4):1043-57. PubMed
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