先に結論:内耳の形成不全とCT・MRI
- 子どもの感音難聴では、側頭骨CTや内耳MRI(heavy T2強調像)で内耳の形の異常を確認します。画像で見つかる先天性難聴の原因で最も多いのは前庭水管拡大症で(Alemi 2015)、難聴が進行しやすく、頭をぶつけたあとに悪化することもあります(前庭水管の太さ1.5mm超が目安)
- Mondini奇形は、蝸牛の中回転と頂回転がくっついて先端が袋状になる奇形(incomplete partition type II:IP-II)に、前庭の軽い拡張と前庭水管拡大を伴う三つ組です。古くは「約1.5回転」と表現されてきました(Sennaroğlu 2017)
- 蝸牛軸の欠損・外側半規管の形成不全なども評価し、人工内耳の手術計画に役立てます
- CTは骨でできた内耳の形、MRIは水の入った内耳と蝸牛神経を見るのが得意で、役割が違います。特に人工内耳を考えるときは、内耳の形が正常に見えても蝸牛神経がないことがあるため、MRIで神経を確認します(下の節)
内耳の形成不全
・Mondini奇形
・蝸牛軸形成不全
・前庭水管(内リンパ管)拡張症
・外側半規管形成不全
などがある。
内耳の画像でのチェックポイント
・蝸牛の回転数が2回転以上あるか、蝸牛軸形成がある点。
・外側半規管・前庭の拡大の有無。
・前庭水管・内リンパ嚢の拡大の有無。
Mondini奇形
・蝸牛の奇形の中で多いタイプ。人工内耳を受けた内耳奇形の小児107例では29%を占めた(Daneshi 2020)。
・蝸牛の回転の不全。基底回転は正常に形成されるが、中回転と頂回転が癒合して頂部が嚢状になる(incomplete partition type II)(Sennaroglu 2002)。蝸牛の外形の大きさは正常なので、2017年の分類では「1.5回転」という表現は蝸牛低形成に使うべきとされている(Sennaroğlu 2017)。
・正常では、2.5-2.75回転(Sennaroğlu 2017)。
・蝸牛の頂部が嚢状に見える。
・軽度の前庭拡張と前庭水管拡大を伴い、この三つがそろうものをMondini奇形と呼ぶ(Sennaroğlu 2017)。
蝸牛軸形成不全

・蝸牛内に認められる蝸牛軸が欠損したり低形成となる疾患。
・CTやMRIのheavy T2WIにて確認する。・先天性感音難聴の約8割は有毛細胞など膜迷路の異常で、CT・MRIでは異常がみられない。画像で骨迷路の奇形がわかるのは残りの約2割であり、画像が正常でも先天性難聴は否定できない(Sennaroğlu 2017)。・2017年のSennaroglu分類は蝸牛の形の違いで内耳奇形を分け、人工内耳の成績は蝸牛神経の状態と密接に関係するため、MRIで蝸牛神経の有無も評価する。
前庭水管(内リンパ嚢)拡張症

(シェーマは横断像で左側)
・内耳奇形で最多。
・前庭水管は前庭から後下方に走行し、前庭水管から後頭蓋窩硬膜内にある内リンパ嚢に開口する骨迷路である。
※なので前庭水管≠内リンパ嚢。前庭水管は単なる管。ここを通って迷路で作られた内リンパを後頭蓋窩へとドレナージすることにより内リンパ圧を調整している。
・難聴が進行しやすく、頭部外傷で悪化することがある。系統的レビュー(1115耳)では進行性の難聴が39.6%、外傷に伴う進行が12%だった(Alemi 2015)。軽い頭部外傷後に急な聴力低下を経験したのは34%で、もともと聴力が変動する人に多かった(Noordman 2015)。
・感音性難聴をきたす。画像で見つかる先天性感音難聴の原因として最多(Alemi 2015)。両側性が片側性の約2倍(Valvassori 1978)。
・難聴が高度に進行した場合は人工内耳の適応となる。
・蝸牛の形成異常を合併することが多い。
・画像では、前庭水管の前後径が後半規管と前庭水管外口の中間の位置で1.5mmを超えるものを拡張症とする(Valvassori 1978, Sennaroğlu 2017)。
・近年は、中点で1mm以上または外口(operculum)で2mm以上を拡大とする基準(Cincinnati基準)も使われ、この基準では小児感音難聴の約3割(32%)に前庭水管拡大がみられ、太いほど難聴が進行しやすいと報告されています(Boston 2007)。
前庭水管拡大症とは(原因と注意点)
- 内リンパの通り道である前庭水管が太くなった状態です。蝸牛・前庭の形が正常なものを前庭水管拡大症(EVA)、蝸牛の奇形を伴うものをIP-IIとして区別します(Sennaroğlu 2017)。
- 甲状腺腫を伴うペンドレッド症候群では前庭水管拡大がみられ、多くはSLC26A4遺伝子の変異が原因です(Winters 2025)。
※聞こえにくさ、めまい、聴力の変動があるときは、耳鼻咽喉科を受診してください。
内耳奇形の分類(Sennaroğlu分類)
現在よく使われる分類は、蝸牛の形の違いで内耳奇形を分けています(Sennaroğlu 2017)。
| 分類 | 画像の特徴 |
|---|---|
| 迷路無形成(Michel奇形) | 蝸牛・前庭・三半規管がすべてない |
| 蝸牛無形成 | 蝸牛がなく、前庭と三半規管はある |
| 共通腔(common cavity) | 蝸牛と前庭が分かれず、1つの丸い袋になっている |
| 蝸牛低形成(I〜IV型) | 蝸牛と前庭は分かれているが、蝸牛の外形が小さい |
| IP-I(incomplete partition type I) | 蝸牛の外形は正常だが蝸牛軸と回転の仕切りがすべてなく、空っぽの袋状。前庭も拡大 |
| IP-II(Mondini) | 蝸牛軸の先端部が欠け、中回転と頂回転がくっついて先端が袋状 |
| IP-III | 回転の仕切りはあるが蝸牛軸がまったくない(X連鎖性難聴) |
| 前庭水管拡大症 | 蝸牛・前庭・三半規管は正常で、前庭水管だけが太い |
| 蝸牛神経管の異常 | 蝸牛神経が通る骨の孔が狭い・閉じている |
片側の難聴では蝸牛神経管(cochlear aperture)を測る
・小児の片側の高度難聴では、蝸牛神経管(蝸牛の底で内耳道から蝸牛神経が入る骨の孔、cochlear aperture)の狭窄・閉鎖が目立つ原因です。先天性の片側高度難聴(single-sided deafness)の小児90耳では、46.7%に内耳奇形があり、最も多かったのは蝸牛神経管の単独の狭窄(20%)、次いで単独の閉鎖(12.2%)でした。蝸牛神経の欠損・低形成は45.6%、内耳道の狭窄は54.4%にみられました(Tahir 2020)。蝸牛の形が正常でも、この孔が細いだけのことがあるので、横断像で幅を測ります。
・CTで蝸牛神経管が1.4mm未満の小児65耳では、MRIで98.5%(64耳)に蝸牛神経の欠損・低形成がみられました(Dorismond 2024)。狭い骨の管は、神経そのものが細い・ないことと強く結びついています。
・人工内耳を受けた小児56例では、蝸牛神経管が狭いほど蝸牛神経の欠損が多く、術後のことばの成績が悪い傾向でした。蝸牛神経が保たれていても、管が狭い群は成績が劣りました(Chung 2018)。蝸牛神経管の幅を報告書に書いておくと、人工内耳の見通しを立てる助けになります。
小児の感音難聴でCTとMRIをどう使い分けるか
子どもの感音難聴では、CTとMRIは「どちらか一方が上」ではなく、見ているものが違います。
- CTは骨の迷路(蝸牛、前庭、半規管、前庭水管、内耳道、蝸牛神経管)の形を細かく見ます。
- MRI(heavy T2強調像)は、内耳の中の液体と、蝸牛神経・前庭神経・顔面神経の有無や太さを見ます。人工内耳の効果は蝸牛神経の状態と関係するため、神経が見えるのはMRIだけの利点です(Sennaroğlu 2017、Joshi 2012)。
- 両側の感音難聴の小児313人でCTとMRIの両方を撮った検討では、異常が見つかった割合はCTで25%、MRIで18%、結果が一致したのは92%でした。CTで多かったのは蝸牛と半規管の異常、MRIで多かったのは蝸牛神経の無形成・低形成と半規管の異常でした(Zhang 2021)。
- 片側の感音難聴の小児では、異常が見つかった割合はMRIで42.7%(41/96人)、CTで36.7%(69/188人)でした。両方撮った65人では、CTとMRIの間に有意な差はありませんでした(Shah 2018)。この報告は、費用、検査時間、放射線被ばく、鎮静の必要性、診断のしやすさをふまえて選ぶことを勧めています。
内耳道の太さの目安
内耳道は、蝸牛神経・前庭神経・顔面神経が通る管です。内耳道の中央部の幅が2mm未満だと狭窄と考えます(Tahir 2017)。先天性の内耳道狭窄7人の報告では、全員で内耳道が2mm未満でした(Baek 2003)。
- 蝸牛神経管(蝸牛軸中央部の幅1.5mm以下)が狭い38人(59耳)では、内耳道の中央部が2mm未満の狭窄を伴ったのは約33%でした。蝸牛神経の低形成または無形成は84%で、蝸牛神経管が閉じている耳では全例に蝸牛神経の欠損がありました(Tahir 2017)。
- 蝸牛神経管の幅が1.5mm未満で内耳道が2mm未満のとき、蝸牛神経は低形成か無形成でした。CTで蝸牛が正常に見えても神経がないことがあるため、人工内耳を考える子どもではCTとMRIの両方が勧められています(Tahir 2017)。
- 内耳道の狭窄の診断には、高分解能CTとMRIの両方が必要とされています(Sakina 2006)。
※内耳道の幅の目安は報告によって測る位置や基準が異なるため、数字だけで決めず、蝸牛神経そのものをMRIで確認します。
内耳の形成不全でよくある疑問(Q&A)
Q. 子どもの難聴で、CTとMRIはどちらを撮りますか。
A. 目的が違うため、施設や状況で選びます。骨の形はCT、蝸牛神経と液体の内耳はMRIが得意で、人工内耳を考える場合は両方が勧められています(Tahir 2017、Joshi 2012)。片側の難聴ではCTとMRIで異常の見つかる割合に差がなかったという報告もあります(Shah 2018)。
Q. 画像が正常なら、難聴の原因はないのですか。
A. いいえ。先天性の感音難聴の約8割は有毛細胞などの膜迷路の異常で、CT・MRIでは異常が見えません(Sennaroğlu 2017)。
Q. 内耳道は何mmから細いといえますか。
A. 内耳道の中央部の幅が2mm未満を狭窄とする報告が多く使われています(Tahir 2017、Baek 2003)。ただし神経の有無はMRIで確認します。
参考文献
- Sennaroglu L, Saatci I. A new classification for cochleovestibular malformations. Laryngoscope. 2002;112(12):2230-41. PubMed
- Boston M, Halsted M, Meinzen-Derr J, et al. The large vestibular aqueduct: a new definition based on audiologic and computed tomography correlation. Otolaryngol Head Neck Surg. 2007;136(6):972-7. PubMed
- Sennaroğlu L, Bajin MD. Classification and Current Management of Inner Ear Malformations. Balkan Med J. 2017;34(5):397-411. PubMed
- Joshi VM, Navlekar SK, Kishore GR, et al. CT and MR imaging of the inner ear and brain in children with congenital sensorineural hearing loss. Radiographics. 2012;32(3):683-98. PubMed
- Tahir E, Bajin MD, Jafarov S, et al. Inner-ear malformations as a cause of single-sided deafness. J Laryngol Otol. 2020;134(6):509-518. PubMed
- Dorismond C, Smetak MR, Perkins EL, et al. High Prevalence of Cochlear Nerve Deficiency in Pediatric Patients With Cochlear Aperture Stenosis. Otolaryngol Head Neck Surg. 2024;171(3):872-877. PubMed
- Chung J, Jang JH, Chang SO, et al. Does the Width of the Bony Cochlear Nerve Canal Predict the Outcomes of Cochlear Implantation?. Biomed Res Int. 2018;2018:5675848. PubMed
- Valvassori GE, Clemis JD. The large vestibular aqueduct syndrome. Laryngoscope. 1978;88(5):723-8. PubMed
- Alemi AS, Chan DK. Progressive Hearing Loss and Head Trauma in Enlarged Vestibular Aqueduct: A Systematic Review and Meta-analysis. Otolaryngol Head Neck Surg. 2015;153(4):512-7. PubMed
- Noordman BJ, van Beeck Calkoen E, Witte B, et al. Prognostic factors for sudden drops in hearing level after minor head injury in patients with an enlarged vestibular aqueduct: a meta-analysis. Otol Neurotol. 2015;36(1):4-11. PubMed
- Daneshi A, Farhadi M, Ajalloueyan M, et al. Cochlear implantation in children with inner ear malformation: A multicenter study on auditory performance and speech production outcomes. Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2020;132:109901. PubMed
- Winters R, Afzal M. Pendred Syndrome. StatPearls. 2025. PubMed
- Zhang J, Sawaf T, Anne S, et al.. Imaging in pediatric bilateral sensorineural hearing loss: Diagnostic yield with computed tomography versus magnetic resonance imaging. Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2021;147:110778. PubMed
- Shah J, Pham GN, Zhang J, et al.. Evaluating diagnostic yield of computed tomography (CT) and magnetic resonance imaging (MRI) in pediatric unilateral sensorineural hearing loss. Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2018;115:41-44. PubMed
- Tahir E, Bajin MD, Atay G, et al.. Bony cochlear nerve canal and internal auditory canal measures predict cochlear nerve status. J Laryngol Otol. 2017;131(8):676-683. PubMed
- Baek SK, Chae SW, Jung HH. Congenital internal auditory canal stenosis. J Laryngol Otol. 2003;117(10):784-7. PubMed
- Sakina MS, Goh BS, Abdullah A, et al.. Internal auditory canal stenosis in congenital sensorineural hearing loss. Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2006;70(12):2093-7. PubMed
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