下垂体炎の分類
- 原発性下垂体炎:リンパ球性(頻度が高い。今はコレ)、肉芽腫性
- 二次性下垂体炎:下垂体腺腫の無菌性壊死による膿瘍、頭蓋咽頭腫・Rathke嚢胞に伴う下垂体炎、細菌性髄膜炎や免疫抑制患者での真菌感染に続発する下垂体膿瘍、サルコイドーシス、結核、梅毒、Wegener肉芽腫症、LCHなどに伴う肉芽腫性下垂体炎など。
リンパ球性下垂体炎
上の表のように下垂体の
- 前葉が侵されるリンパ球性腺下垂体炎=前葉炎(lymphocytic adenohypophysitis(LAH))
- 後葉および漏斗が侵されるリンパ球性神経下垂体炎=漏斗後葉炎(lymphocytic infundibulo-neurohypohysitis(LIN))
に分類される。
- 両方侵す場合は汎下垂体炎(panhypophysitis)と呼ばれる
- LINや汎の場合はIgG4関連疾患も考慮。
リンパ球性腺下垂体炎
- 若い女性で妊娠、出産との関連が言われている。
- このほかの年齢や男性でも発症する。
- 橋本病やSLEなど自己免疫疾患が合併していることがある。
- 炎症が下垂体前葉に限局しており、後葉には及ばない。そのため尿崩症は認めない。
- ただし、前葉の腺下垂体が主体(adenohypophysitis)、下垂体柄や後葉といった神経下垂体のみ侵すもの(infundibuloneurohypophysitis)、腺神経下垂体ともに病変があるもの(hypophysitis)、海綿静脈洞に波及するものなどさまざまある。
- 視神経や、視交叉を圧迫することあり。
- リンパ球性と肉芽腫性下垂体炎は同じ疾患で、リンパ球性下垂体炎はより急性期の像を見ている可能性が示唆されている。
- 治療はステロイド投与であるが、自然退縮する例が多い。
画像所見
- 前葉の対称性腫大。過形成より大きく、macroadenomaよりは小さい。
- 強い均一な造影効果を認める。
- 線維化してくるとT2WI 低信号で造影効果は弱まる(Parasellar T2 dark sign)。海綿静脈洞など周囲にT2WIで著明な低信号(35%)。腺腫では認めない所見。
症例 30歳代女性
A: A dark-signal-intensity area is seen in the cavernous sinus and sellar floor (arrow).
B: 造影効果はT2WIで低信号部位は落ちている。他は均一。
リンパ球性神経下垂体炎
- 妊娠や出産とは基本的に関係ない。
- 尿崩症を伴って発症する。
- 従来、特発性の中枢性尿崩症と呼ばれていたもののかなりの症例はこの疾患ではと言われている。
- 腫瘤は小さく下垂体柄の腫大が一般的。
- 下垂体後葉や柄から発生する下垂体細胞腫・顆粒細胞腫は、画像のみでは鑑別困難であるが、尿崩症は伴わない点で鑑別できる。