急性硬膜下血腫とは?(acute subdural hematoma:ASDH)
- 頭部外傷などにより急性期の硬膜下腔に出血が起こる病態。
- 脳表の動静脈や架橋静脈の損傷、脳内血腫の脳表への進展が原因となる。
- 硬膜-くも膜間には強固な結合織がないため、血腫が広がりやすい。
- 急性硬膜外血腫と比べて脳浮腫・脳腫脹の程度が重篤であり、血腫の増大も急速。
- 脳挫傷を伴うことが多く、約半数で受傷直後より意識障害が見られる。
- 脳が移動し反対側の架橋静脈も伸展され破綻するため、外傷側(coup)にも反対側(contrecoup)にも発生する。
- 大脳の弓隆部>小脳テントの上に多い。後頭蓋窩は少ない。
- 児童虐待の死因で本疾患が最多(shaken baby syndrome)。小児では通常の転倒や落下では滅多に本疾患は起こらない。
- 重篤な脳挫傷・脳内出血を伴うことが多く予後は不良。
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硬膜外血腫 | 硬膜下血腫 | |
形態 | 凸レンズ型 | 三日月型 |
骨折 | 多い | 少ない |
脳挫傷 | 少ない | 多い |
主な出血源 | 中硬膜動脈、静脈洞、板間静脈 | 架橋静脈 |
縫合線との関係 | 縫合を越えない 小脳テント上下に広がる |
縫合を越える 小脳テント上面に進展する |
急性硬膜下血腫(ASDH)の治療は?
- 軽症例では経過観察。
- 重症例では血腫除去術。
- 手術を考慮するCT所見としては、血腫の厚さが1cm以上、正中構造偏位が5mm以上(日本神経外傷学会のガイドライン)となっているが、脳ヘルニアなど総合的に考慮する必要あり。
急性硬膜下血腫(ASDH)の画像診断は?
- 典型的には硬膜下腔に三日月型の出血像を呈する。
- ただし、慢性硬膜下血腫と異なり被膜がないため、脳表側は脳回に合わせた凹凸な形状になる。
- 小脳テントの上の血腫では、左右のテントの内側縁のY字が左右非対称になる。
- 大脳鎌沿いの血腫では、大脳鎌が太くなったように見える。
症例 50歳代女性 交通外傷
症例 70歳代女性 外傷
症例 70歳代女性 外傷
右後頭部頭頂部に硬膜下血腫あり。
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症例 60歳代男性 交通事故で後頭部打撲