先に結論:急性硬膜下血腫
- 急性硬膜下血腫は頭部外傷で脳表の静脈(架橋静脈)や動脈が切れて、硬膜の下に出血するもので、脳挫傷を伴い重症なことが多いです
- CTでは三日月形の高吸収域で、頭蓋骨の縫合線を越えて広がり、大脳鎌やテントに沿って見えることもあります
- 略語はASDH(acute subdural hematoma)、慢性硬膜下血腫はCSDHです。MRIはFLAIRやT2*強調像・SWIで小さな血腫もとらえやすく、出血のおおよその時期の目安にもなります
- 厚さ10mm超・正中偏位5mm超や意識障害の悪化は手術を考える目安です。乳幼児では虐待(揺さぶられ症候群)も考えます
急性硬膜下血腫とは?(acute subdural hematoma:ASDH)

- 頭部外傷などにより急性期の硬膜下腔に出血が起こる病態。
- 脳表の動静脈や架橋静脈の損傷、脳内血腫の脳表への進展が原因となる。
- 硬膜-くも膜間には強固な結合織がないため、血腫が広がりやすい。
- 主な出血源が静脈のため、急性硬膜外血腫と比べると血腫の増大はゆっくりなことが多いが、大きな血腫は脳を強く圧迫して脳ヘルニアを起こし、緊急の血腫除去が必要になる(Heit 2017)。
- 脳挫傷を伴うことが多く、受傷直後から意識障害を呈することが多い。
- 脳が移動し反対側の架橋静脈も伸展され破綻するため、外傷側(coup)にも反対側(contrecoup)にも発生する。
- 大脳の穹窿部>小脳テントの上に多い。後頭蓋窩は少ない。
- 乳幼児では虐待による頭部外傷(shaken baby syndrome)の代表的な所見のひとつである。なお、機序は揺さぶりだけでなく衝撃が加わるものも含むため、現在は「揺さぶられ症候群」より「虐待による頭部外傷(abusive head trauma:AHT)」という呼び方が推奨されている。AHTは2歳未満の致死的頭部外傷の主な原因で、硬膜下血腫に加えて複雑な網膜出血や、受傷機転と合わない肋骨などの骨折を伴うことが特徴とされる。
- 重篤な脳挫傷・脳内出血を伴うことが多く予後は不良。
関連記事)急性硬膜下血腫とは?症状、画像、治療法をわかりやすく解説!
ASDHは何の略?英語・略語と「硬膜下腔」「架橋静脈」とは
| 略語 | 英語 | 日本語 |
| ASDH | acute subdural hematoma | 急性硬膜下血腫 |
| CSDH | chronic subdural hematoma | 慢性硬膜下血腫 |
| SDH | subdural hematoma(hemorrhage) | 硬膜下血腫(出血) |
| AEDH・EDH | (acute) epidural hematoma | (急性)硬膜外血腫 |
- 硬膜下腔とは:脳を包む膜のうち、外側の硬膜とその内側のくも膜の間のすき間。ふだんはほとんどすき間がない(潜在的な腔)が、ここに血液がたまったものが硬膜下血腫。頭蓋骨の縫合に邪魔されないため、血腫は脳表に沿って広く三日月形に広がる。
- 架橋静脈とは:脳表の静脈から、硬膜の中を走る静脈洞(上矢状静脈洞など)へ、硬膜下腔を橋渡しするように走る静脈。頭が急に揺さぶられたり加速・減速したりすると、脳と頭蓋骨のずれで引き伸ばされて切れやすく、硬膜下血腫の代表的な出血源になる。
急性硬膜下血腫(ASDH)と慢性硬膜下血腫(CSDH)の違い
| 急性硬膜下血腫(ASDH) | 慢性硬膜下血腫(CSDH) | |
| 発症 | 受傷直後から | 受傷から時間がたってから |
| 多い人 | 強い頭部外傷を受けた人(年齢を問わない) | 高齢者に多い(Kolias 2014) |
| 脳挫傷 | 伴うことが多い | 伴わないことが多い |
| CT | 三日月形の高吸収域 | 低〜等吸収、新しい出血が混じると混合吸収 |
| 被膜 | なし(脳表側は脳回に沿って凸凹) | 被膜ができる |
| 手術 | 開頭血腫除去術(Bullock 2006) | 穿頭術(burr hole)が中心。術後に約10〜20%が再発して再手術になる(Kolias 2014) |
| 硬膜外血腫 | 硬膜下血腫 | |
| 形態 | 凸レンズ型 | 三日月型 |
| 骨折 | 多い | 少ない |
| 脳挫傷 | 少ない | 多い |
| 主な出血源 | 中硬膜動脈、静脈洞、板間静脈 | 架橋静脈 |
| 縫合線との関係 | 縫合を越えない 小脳テント上下に広がる |
縫合を越える 小脳テント上面に進展する |
急性硬膜下血腫(ASDH)の治療は?
- 軽症例では経過観察。
- 重症例では血腫除去術。
- 手術を考慮するCT所見の目安は、血腫の厚さ10mm超、正中構造偏位5mm超で、脳ヘルニアなど総合的に考慮する必要あり。米国の外科治療ガイドラインでは、厚さ10mm超または正中偏位5mm超はGCSにかかわらず血腫除去の適応とされ、それ未満でもGCS 8以下で受傷から来院までにGCSが2点以上低下した例、瞳孔不同・散大固定、頭蓋内圧20mmHg超では手術が勧められている(Bullock 2006)。昏睡例の手術は、開頭(骨弁を外す減圧を含む)による血腫除去が勧められている(Bullock 2006)。
急性硬膜下血腫(ASDH)の画像診断は?
- 典型的には硬膜下腔に三日月型の出血像を呈する。
- ただし、慢性硬膜下血腫と異なり被膜がないため、脳表側は脳回に合わせた凹凸な形状になる。
- 小脳テントの上の血腫では、左右のテントの内側縁のY字が左右非対称になる。
- 大脳鎌沿いの血腫では、大脳鎌が太くなったように見える。硬膜下血腫は大脳鎌や小脳テントを越えず、その片側に沿って広がる(Heit 2017)。
- 薄い血腫は頭蓋骨に紛れて見落としやすいため、骨と血液の濃度差が出る「subdural window」(ウィンドウ幅130・レベル30程度)で見ること、冠状断の再構成を加えることが勧められている(Heit 2017)。
急性硬膜下血腫(ASDH)のMRI所見は?
- 頭部外傷の急性期はCTが第一選択だが、MRIは急性の頭蓋内出血を鋭敏にとらえ、FLAIRでは高信号、T2*強調像(GRE)・SWIでは低信号(磁化率による黒い抜け)として描出される(Heit 2017)。
- CTでわかりにくい薄い血腫、大脳鎌・テントに沿う血腫、CTで脳と同じくらいの濃さに見える血腫、合併する脳挫傷やびまん性軸索損傷の評価に役立つ。
- 血腫のMRI信号は、ヘモグロビンが酸化・分解されていく段階(オキシヘモグロビン→デオキシヘモグロビン→メトヘモグロビン→ヘモジデリン)で変わる。一般に急性期はT2強調像で低信号、亜急性期になるとT1強調像で高信号になる。ただし信号は時期のほか、血腫の場所・大きさ、撮像法や磁場強度などにも左右され、脳実質内の血腫と硬膜下血腫では変化の仕方が異なる(Parizel 2001)。
- CT・MRIで出血の時期を推定できるのはおおまかな幅までで、受傷の時刻を特定することはできないとされる。虐待が疑われる乳幼児では、時期の判断は臨床経過やほかの所見と合わせて行う(Dias 2021)。
症例 50歳代女性 交通外傷

症例 70歳代女性 外傷

症例 70歳代女性 外傷


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症例 60歳代男性 交通事故で後頭部打撲

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急性硬膜下血腫でよくある疑問(Q&A)
Q. ASDHとは何の略ですか?
A. acute subdural hematoma(急性硬膜下血腫)の略です。慢性硬膜下血腫はCSDH(chronic subdural hematoma)と略します。
Q. 急性硬膜下血腫と慢性硬膜下血腫は同じ病気ですか?
A. どちらも硬膜の下に血液がたまりますが、急性は強い外傷の直後に起こり脳挫傷を伴うことが多いのに対し、慢性は高齢者に多く、受傷から時間がたってから症状が出ます。CTの濃さや手術の方法も異なります(上の表)。
Q. CTがあればMRIは不要ですか?
A. 救急ではまずCTで血腫の大きさや正中偏位を確認します。MRIは薄い血腫や合併する脳の損傷、出血のおおよその時期をみたいときに追加されます。
Q. 頭を打ったあと、どんなときに受診すべきですか?
A. 頭痛が強くなる、吐き気・嘔吐、意識がおかしい、手足が動かしにくいなどの症状があれば、時間がたっていてもすぐに医療機関を受診してください。
関連記事:(外傷性)急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫および慢性硬膜下血腫の手術適応まとめ
参考文献
- Bullock MR, Chesnut R, Ghajar J, et al. Surgical management of acute subdural hematomas. Neurosurgery. 2006;58(3 Suppl):S16-24. PubMed
- Heit JJ, Iv M, Wintermark M. Imaging of Intracranial Hemorrhage. J Stroke. 2017;19(1):11-27. PubMed
- Choudhary AK, Servaes S, Slovis TL, et al. Consensus statement on abusive head trauma in infants and young children. Pediatr Radiol. 2018;48(8):1048-1065. PubMed
- Wright JN. CNS Injuries in Abusive Head Trauma. AJR Am J Roentgenol. 2017;208(5):991-1001. PubMed
- Parizel PM, Makkat S, Van Miert E, et al. Intracranial hemorrhage: principles of CT and MRI interpretation. Eur Radiol. 2001;11(9):1770-83. PubMed
- Dias MS, Thamburaj K. Neuroradiologic timing of intracranial hemorrhage in abusive head trauma. Pediatr Radiol. 2021;51(6):911-917. PubMed
- Kolias AG, Chari A, Santarius T, et al. Chronic subdural haematoma: modern management and emerging therapies. Nat Rev Neurol. 2014;10(10):570-8. PubMed
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