常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD:autosomal dominant polycystic kidney disease、成人型)
- 多発嚢胞腎といえば通常はこれを指す。
- 常染色体優性遺伝で、90%がPKD1(第16染色体短腕)、10%がPKD2(第4染色体長腕)の遺伝子変異。
- 集合管と尿細管に嚢胞を生じる。腎機能が低下して行く。
- 高血圧、貧血、腎の腫大といった症状が40歳以降で生じる。
- 尿路感染症を合併しやすい。
- 多くは10年以内に腎不全となる。
- 腎不全は60歳台で60%の患者に発症し、透析患者の7~15%を占める。
- 腎癌発症リスクは後天性腎嚢胞(ARCD)ほどは高くない。
- 腎以外に他の臓器にも、嚢胞を生じる。肝、膵>卵巣、精巣。そのほか、肺や脾臓、甲状腺、子宮、膀胱などにも嚢胞を生じることがあると報告あり。
- 20%程度で脳動脈瘤の合併あり、このうち10%程度で動脈瘤破裂に伴うくも膜下出血で死亡する。
- 他、大腸憩室、大動脈瘤、心弁膜閉鎖不全などの合併の報告あり。
常染色体優性多発性嚢胞腎の画像診断
- 肉眼的には、腎に嚢胞が多数あるため、スイスチーズ様と表現される。
- 両側に多発する境界明瞭で円形あるいは卵円形の嚢胞を認める。
- 初期には、腎の大きさや形態は正常。
- 進行すると多発した嚢胞により両側腎は腫大する。辺縁は凹凸著明となる。
- 嚢胞に出血や感染を合併することあり。
- 嚢胞内に出血を合併すると高吸収嚢胞となる。
- 感染を合併すると嚢胞壁が厚く不整になる。
症例70歳代 女性
両側腎の腫大および多数の嚢胞を認めています。
冠状断像においても同様です。
肝嚢胞も認めています。
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)を疑う所見です。