副腎に腫瘤性病変を認めた場合、最も重要になる鑑別の一つが、副腎腺腫転移性副腎腫瘍です。

副腎腫瘤は腹部CTやMRIで偶発的に見つかることがあり、その多くは良性の副腎腺腫です。一方で、担癌患者に副腎腫瘤を認めた場合は、転移性副腎腫瘍の可能性を常に考える必要があります。

本記事では、転移性副腎腫瘍の頻度、原発巣、CT・MRI・FDG-PET/CTでの鑑別点、副腎腺腫との見分け方について解説します。

この記事のポイント

  • 副腎は転移の好発部位の一つです。
  • 担癌患者の副腎腫瘤では、転移性副腎腫瘍を必ず鑑別します。
  • 副腎腺腫との大きな鑑別点は、病変内脂肪、単純CT値、chemical-shift MRI、FDG集積です。
  • 単純CTで均一な病変が10 HU以下であれば、脂質豊富腺腫を強く示唆します。
  • FDG-PET/CTで副腎病変が肝より明らかに高集積であれば、転移を疑います。
  • 副腎生検はルーチンではなく、褐色細胞腫を除外したうえで、診断が治療方針を変える場合に限って検討します。

転移性副腎腫瘍とは?

転移性副腎腫瘍とは、他臓器の悪性腫瘍が副腎に転移したものです。

副腎は血流が豊富な臓器であり、悪性腫瘍の転移部位として比較的よく知られています。副腎転移は、良性副腎腺腫に次いで副腎腫瘍として遭遇することが多い悪性病変です。

副腎転移は、癌の診断時や経過観察中のCT、MRI、FDG-PET/CTで偶発的に見つかることがあります。特に担癌患者で新たな副腎腫瘤を認めた場合は、良性腺腫だけでなく、転移の可能性を考えて評価する必要があります。

副腎に転移しやすい原発巣

副腎に転移しやすい悪性腫瘍としては、以下が代表的です。

  • 肺癌
  • 乳癌
  • 悪性黒色腫
  • 腎細胞癌
  • 消化管癌
  • 膵癌
  • 肝細胞癌
  • 悪性リンパ腫

中でも肺癌は副腎転移の重要な原発巣です。副腎は肺癌の病期診断や治療方針決定においても重要な評価部位になります。

ただし、担癌患者に副腎腫瘤を認めたからといって、すべてが転移というわけではありません。副腎腺腫は頻度が高いため、担癌患者に偶然合併していることもあります。そのため、画像所見と臨床情報を組み合わせて慎重に判断します。

転移性副腎腫瘍の画像診断で重要な考え方

転移性副腎腫瘍と副腎腺腫の鑑別では、病変内に細胞内脂肪があるかどうかが重要です。

副腎腺腫、特に脂質豊富腺腫では、腫瘍細胞内に脂肪を含むため、単純CTで低吸収を示し、chemical-shift MRIでopposed-phaseの信号低下を示します。

一方、転移性副腎腫瘍では、通常は副腎腺腫のような細胞内脂肪を含まないため、単純CTで10 HUを超えることが多く、chemical-shift MRIで明らかな信号低下を示しにくい傾向があります。

鑑別の基本

副腎腺腫は「脂肪を持つ病変」として評価し、転移性副腎腫瘍は「脂肪を持たない不均一・高吸収・FDG高集積病変」として疑います。

CTでの鑑別

単純CTでの吸収値:10 HU以下なら腺腫を強く示唆

副腎腫瘤の評価で最も基本となるのは、単純CTでの吸収値測定です。

均一な副腎腫瘤で、単純CTの平均吸収値が10 HU以下であれば、脂質豊富腺腫を強く示唆します。現在のESEガイドラインでも、均一な副腎腫瘤で単純CT値が10 HU以下の場合は、良性病変として扱える重要な所見とされています。

一方、転移性副腎腫瘍では、通常は細胞内脂肪を含まないため、単純CTで10 HUを超えることが多くなります。

ただし、10 HUを超える=転移ではありません。副腎腺腫の中には、脂肪成分が少ない脂質乏しい腺腫があり、10 HUを超えることがあります。

転移を疑いやすいCT所見

以下のような所見がある場合は、転移性副腎腫瘍や副腎皮質癌などの非腺腫性病変を考えます。

  • 単純CTで10 HUを超える
  • 病変が不均一
  • 壊死を疑う低吸収域がある
  • 出血を疑う高吸収域がある
  • 辺縁不整
  • 明らかな増大傾向がある
  • 大型病変である
  • 両側性副腎病変である
  • 既知悪性腫瘍の既往がある

特に、過去画像との比較は非常に重要です。短期間で増大する副腎腫瘤では、転移性副腎腫瘍を強く疑います。

Washout CTの位置づけ

単純CTで10 HUを超える副腎腫瘤では、脂質乏しい副腎腺腫と転移性副腎腫瘍の鑑別が問題になります。

このような場合、造影早期相と遅延相を用いたwashout CTが参考になることがあります。副腎腺腫では造影剤の洗い出しが比較的速く、転移性副腎腫瘍では洗い出しが遅い傾向があります。

古典的には、以下のカットオフがよく用いられてきました。

  • Absolute percentage washout(APW)60%以上
  • Relative percentage washout(RPW)40%以上

ただし、washout CTのカットオフには文献差や施設差があり、近年のガイドラインでは、これだけで機械的に良悪性を判定するのではなく、単純CT値、均一性、サイズ、既往歴、FDG-PET/CT、内分泌評価を含めて総合的に判断する流れになっています。

注意点

不均一な病変や壊死・出血を伴う病変では、washout CTだけで安易に腺腫と判断しないことが重要です。

MRIでの鑑別

Chemical-shift MRI

MRIでは、chemical-shift imagingが副腎腺腫の診断に有用です。

副腎腺腫は細胞内脂肪を含むことが多いため、T1強調像のin-phaseとopposed-phaseを比較すると、opposed-phaseで信号低下を示します。

一方、転移性副腎腫瘍では、通常は細胞内脂肪を含まないため、opposed-phaseで明らかな信号低下を示しにくい傾向があります。

MRIで見るポイント

in-phaseからopposed-phaseにかけて病変の信号が低下すれば、副腎腺腫を支持します。信号低下が乏しい場合は、転移性副腎腫瘍などの非腺腫性病変を鑑別します。

MRIの注意点

Chemical-shift MRIは有用ですが、万能ではありません。

脂質乏しい副腎腺腫では、opposed-phaseで明らかな信号低下を示さないことがあります。また、腎細胞癌や肝細胞癌などの転移では、clear cell成分や脂肪成分を反映して、まれに信号低下を示すことがあります。

そのため、MRI所見だけでなく、単純CT値、造影パターン、過去画像との比較、既知悪性腫瘍の種類を含めて判断します。

FDG-PET/CTでの鑑別

担癌患者に副腎腫瘤を認めた場合、FDG-PET/CTは転移性副腎腫瘍の評価に有用です。

FDG-PET/CTでは、副腎病変のFDG集積を肝臓と比較して評価することが多く、副腎病変が肝より明らかに高集積であれば転移を疑います。

ESE 2023では、既知悪性腫瘍の既往がある患者で、副腎に強いFDG集積を認める場合は転移を示唆するとされています。一方、FDG集積が中等度または乏しい場合でも、少なくとも単純CTを含めた追加評価が推奨されています。

FDG-PET/CTの注意点

FDG-PET/CTにも偽陽性・偽陰性があります。

偽陽性の原因としては、以下が挙げられます。

  • 機能性副腎腺腫
  • 褐色細胞腫
  • 副腎過形成
  • 感染・炎症性病変

また、腎細胞癌や低悪性度リンパ腫などでは、転移であってもFDG集積が目立たないことがあります。

そのため、FDG-PET/CTで「集積がないから転移ではない」と単純に断定することは避け、原発癌の種類やCT/MRI所見を合わせて判断します。

副腎腺腫との鑑別ポイントまとめ

項目 副腎腺腫 転移性副腎腫瘍
単純CT値 脂質豊富腺腫では10 HU以下が典型的 10 HUを超えることが多い
内部性状 均一なことが多い 不均一、壊死、出血を伴うことがある
Chemical-shift MRI opposed-phaseで信号低下 通常は明らかな信号低下を示しにくい
Washout CT 洗い出しが速い傾向 洗い出しが遅い傾向
FDG-PET/CT 無集積〜軽度集積のことが多いが、例外あり 肝より高集積なら転移を疑う
経時変化 長期安定のことが多い 増大傾向を示すことが多い
臨床背景 非担癌患者でもよく見られる 既知悪性腫瘍の既往が重要

担癌患者に副腎腫瘤を認めたときの考え方

担癌患者に副腎腫瘤を認めた場合、まず以下を確認します。

  1. 過去画像で以前から存在していたか
  2. サイズが増大しているか
  3. 単純CTで10 HU以下か
  4. 病変が均一か不均一か
  5. chemical-shift MRIで信号低下を示すか
  6. FDG-PET/CTで肝より高集積か
  7. 原発癌の種類として副腎転移を来しやすいか
  8. 副腎病変の診断が治療方針を変えるか

既知悪性腫瘍がある場合でも、単純CTで明らかに良性腺腫と判断できる副腎病変では、追加の副腎特異的画像検査が不要となることがあります。

一方で、画像上 indeterminate な副腎病変で、その病変が転移かどうかによって治療方針が変わる場合は、FDG-PET/CT、追加CT/MRI、外科的切除、または生検を検討します。

副腎生検の注意点

副腎腫瘤に対する生検は、ルーチンで行う検査ではありません。

特に重要なのは、褐色細胞腫を除外してから生検を検討することです。褐色細胞腫に対して不用意に生検を行うと、高血圧発作などの重篤な合併症を起こす可能性があります。

現在のガイドラインでは、副腎生検を考慮する前に、以下の条件を満たす必要があるとされています。

  • ホルモン非活性であること、特に褐色細胞腫が除外されていること
  • 画像で良性病変と結論できないこと
  • 組織診断の結果が治療方針を変えること

重要

副腎生検は「とりあえず行う検査」ではありません。転移が疑われ、診断結果が治療方針に影響し、かつ褐色細胞腫を除外した場合に限って慎重に検討します。

診断の実際:読影で見るべきポイント

副腎腫瘤を読影する際には、以下のように整理すると診断しやすくなります。

1. 単純CTがあるか確認する

副腎腫瘤の評価では、造影CTだけでなく単純CTが重要です。単純CTでのHU測定により、脂質豊富腺腫かどうかを評価できます。

2. 病変が均一か不均一かを見る

均一な病変では腺腫の評価がしやすくなります。一方、不均一、壊死、出血、石灰化、大型病変では、転移や副腎皮質癌などの非腺腫性病変を考えます。

3. HUを測定する

ROIは病変内にできるだけ大きく置き、壊死・出血・石灰化・周囲脂肪を含めないようにします。均一な病変で10 HU以下なら脂質豊富腺腫を強く支持します。

4. MRIで信号低下を見る

in-phaseとopposed-phaseを同じスライスで比較し、病変の信号低下を確認します。明らかな信号低下があれば、副腎腺腫を支持します。

5. FDG-PET/CTを確認する

担癌患者では、FDG-PET/CTで副腎病変の集積を確認します。肝より高集積なら転移を疑いますが、偽陽性・偽陰性があるため、単独で判断しないことが重要です。

6. 過去画像と比較する

長期にわたり不変であれば良性を支持します。短期間で増大していれば、転移性副腎腫瘍や副腎皮質癌などを疑います。

まとめ

  • 転移性副腎腫瘍は、副腎腺腫との鑑別が重要です。
  • 担癌患者の副腎腫瘤では、転移の可能性を常に考えます。
  • 副腎腺腫では細胞内脂肪を反映し、単純CTで低吸収、chemical-shift MRIでopposed-phase信号低下を示します。
  • 均一な副腎腫瘤で単純CT 10 HU以下なら、脂質豊富腺腫を強く示唆します。
  • 転移性副腎腫瘍では、10 HUを超える、不均一、壊死・出血、増大傾向、FDG高集積などが重要な所見です。
  • FDG-PET/CTで肝より高集積なら転移を疑いますが、偽陽性・偽陰性に注意します。
  • 副腎生検はルーチンではなく、褐色細胞腫を除外し、診断が治療方針を変える場合に限って検討します。

Take home message

副腎腫瘤を見たら、まず単純CTで10 HU以下か、次にchemical-shift MRIで信号低下があるかを確認します。

担癌患者で、10 HUを超える不均一な副腎腫瘤やFDG高集積を認める場合は、転移性副腎腫瘍を慎重に鑑別します。

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