先に結論:膝蓋骨外側脱臼による骨軟骨損傷
- 膝蓋骨脱臼は若い人のスポーツ外傷に多く、ほとんどが外側への脱臼で、多くはその場で自然に戻ります
- MRIでは膝蓋骨の内側と大腿骨外側顆の前外側の骨挫傷という特徴的な組み合わせが残り、脱臼があったことが分かります
- 内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)の損傷と骨軟骨骨片(関節内遊離体)の有無を確認し、再脱臼の危険因子(膝蓋骨高位・滑車形成不全)も評価します
- 骨挫傷(bone bruise)はX線では見えにくく、MRIの脂肪抑制T2強調像・STIRで高信号として写ります
膝蓋骨外側脱臼による骨軟骨損傷:tangential osteochondral fracture
- 膝蓋骨脱臼は若年者のスポーツ外傷として多い。
- 膝関節の軽度屈曲位で下腿外旋・大腿内旋位で、膝蓋骨の内側から外側への力が加わると、膝蓋骨は外側へ脱臼する。
- 内側方向への脱臼は非常に稀。
- スポーツなどで発生。外傷性脱臼として扱われる。
- ただし、容易に脱臼し再発を繰り返す症例も多い。
画像診断
- 膝蓋骨外側脱臼による骨軟骨損傷の画像診断では横断像が有用である。急性の外側脱臼82検査の検討では、大腿骨外側顆の骨挫傷が80%、膝蓋骨内側の骨挫傷が61%、膝蓋骨内下方の骨軟骨損傷が70%、関節内遊離体が15%にみられ、MPFLの大腿骨付着部が評価できた例の49%に損傷がありました(Elias 2002)。膝蓋骨内下方の陥凹した圧痕(impaction deformity)は、過去の外側脱臼に特異的な所見です。
- 膝蓋骨が外側に脱臼する。多くは自然に整復され、その際に膝蓋骨内側と大腿骨外側顆がぶつかる。そのため受診時には脱臼が戻っていることが多い。
- 来たときには、膝蓋骨の内側と、大腿骨の外側にbone bruiseが残っている。自然整復されるため臨床的に疑われないことが多く(26例中73%、Kirsch 1993)、この特徴的な骨挫傷の組み合わせが診断の決め手になります。

骨挫傷(bone bruise)とMPFL損傷のMRI所見
- 骨挫傷:強い衝撃で骨の内部に生じた微小な骨折・出血・浮腫です。X線ではほとんど見えず、MRIの脂肪抑制T2強調像・STIRで高信号、T1強調像で低信号として写ります(Mandalia 2008)。
- MPFL損傷:外側脱臼195膝の検討では、膝蓋骨付着部の断裂が47%、大腿骨付着部が26%、両方が13%でした(Guerrero 2009)。横断像で靭帯の途切れと周囲の高信号を確認します。
再脱臼しやすい骨の形(素因)をMRI・CTで見る
- 初回脱臼では、内側の支持組織(MPFL)が切れ、膝蓋骨が大腿骨外側顆に当たるのが典型的な損傷パターンです。くり返す脱臼は、滑車形成不全・膝蓋骨高位・脛骨粗面の外側化といった骨の形の変異をもつ人に多いとされます(Diederichs 2010)。
- 症状のある膝蓋骨不安定症143膝のX線・CTの解析では、滑車形成不全が85%(crossing signは96%)、大腿四頭筋の形成不全が83%、膝蓋骨高位(Caton-Deschamps指数1.2以上)が24%、脛骨粗面-滑車溝間距離(TT-TG)20mm以上が56%でした。これらの所見は対照の膝では3〜6.5%にとどまりました(Dejour 1994)。
| 素因 | 何を見るか | 主な画像 |
|---|---|---|
| 滑車形成不全 | 大腿骨の滑車溝が浅い・平らで、膝蓋骨がはまり込みにくい | 側面X線のcrossing sign、MRI・CTの横断像 |
| 膝蓋骨高位 | 膝蓋骨の位置が高く、屈曲の早い角度で滑車溝に入りにくい | 側面X線・矢状断像(Caton-Deschamps指数など) |
| 脛骨粗面の外側化 | 膝蓋腱の付着部が外へずれ、膝蓋骨を外側へ引く | CT・MRIの横断像でTT-TGを測る |
間違えやすいポイント:骨挫傷の場所が合っていても、それだけで「今回が初回の脱臼」とは言えません。過去の脱臼でも似た痕跡が残ります。滑車形成不全など素因の有無と、MPFLや軟骨の損傷を合わせて評価します。
Q. 膝蓋骨が戻っていても脱臼したと分かりますか?
A. MRIで上記の骨挫傷の組み合わせとMPFL損傷が残っていれば、脱臼があったと判断できます。
Q. 脱臼をくり返しやすいかどうかは画像で分かりますか?
A. 滑車形成不全・膝蓋骨高位・脛骨粗面の外側化といった骨の形は、X線・CT・MRIで評価できます。症状のある膝蓋骨不安定症ではこれらが高い割合でみられました(Dejour 1994)。ただし、再発を予測する指標はまだ研究が続いており、1つの数値だけで決まるものではありません。
Q. 骨挫傷は治りますか?
A. 骨挫傷は骨の内部の浮腫や微小な損傷で、X線では見えにくくMRIで高信号に写ります(Mandalia 2008)。治り方は損傷の程度や合併する軟骨・靱帯の損傷で異なります。治療は整形外科で相談してください。
膝をひねったあとに腫れや痛みが続く場合は、医療機関を受診してください。
参考文献
- Earhart C, Patel DB, White EA, et al. Transient lateral patellar dislocation: review of imaging findings, patellofemoral anatomy, and treatment options. Emerg Radiol. 2013;20(1):11-23. PubMed
- Kirsch MD, Fitzgerald SW, Friedman H, et al. Transient lateral patellar dislocation: diagnosis with MR imaging. AJR Am J Roentgenol. 1993;161(1):109-13. PubMed
- Elias DA, White LM, Fithian DC. Acute lateral patellar dislocation at MR imaging: injury patterns of medial patellar soft-tissue restraints and osteochondral injuries of the inferomedial patella. Radiology. 2002;225(3):736-43. PubMed
- Diederichs G, Issever AS, Scheffler S. MR imaging of patellar instability: injury patterns and assessment of risk factors. Radiographics. 2010;30(4):961-81. PubMed
- Guerrero P, Li X, Patel K, et al. Medial patellofemoral ligament injury patterns and associated pathology in lateral patella dislocation: an MRI study. Sports Med Arthrosc Rehabil Ther Technol. 2009;1(1):17. PubMed
- Mandalia V, Henson JH. Traumatic bone bruising–a review article. Eur J Radiol. 2008;67(1):54-61. PubMed
- Dejour H, Walch G, Nove-Josserand L, et al. Factors of patellar instability: an anatomic radiographic study. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 1994;2(1):19-26. PubMed
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