先に結論:腸脛靭帯炎(ランナー膝)
- 腸脛靭帯炎は長距離ランナーなどで、膝の曲げ伸ばしを繰り返して腸脛靭帯と大腿骨外側上顆がこすれることで起こり、膝の外側の痛み(下り坂で悪化)が特徴です
- MRIでは脂肪抑制T2強調像・STIRの冠状断で、腸脛靭帯と大腿骨外側顆の間の脂肪の浮腫・液体として見えます
- 英語ではiliotibial band syndrome(略してITBS)、腸脛靭帯はITB(iliotibial band)と略します。多くは走る量の調整と股関節まわりの筋力トレーニングなどの保存療法で改善します
- 腸脛靭帯炎の患者では靭帯自体がやや厚くなっていることもあり(Ekman 1994)、靭帯の厚さだけで腸脛靭帯炎を否定しないようにします
そもそも腸脛靭帯(iliotibial band / iliotibial tract)とは?
- そもそも腸脛靭帯とは、腸骨稜から大腿外側を通り、脛骨外側のGerdy結節に至る長大な靭帯。
- 外側支持組織の重要な構造の一つ。
- 膝の外側支持機構は3層構造で、最も表層にあるのが腸脛靭帯、第2層が大腿四頭筋の腱膜や外側支帯など、第3層に滑液包や外側側副靱帯がある。
- MRIでは層同士が重なって腸脛靭帯のみを分離することは難しいが、後方の表層部分が腸脛靭帯に相当し、わかりにくい場合はGerdy結節からたどるとよい。

腸脛靭帯をT2WI横断像で追ってみました。
腸脛靭帯のみを分離するのは難しいですが、おおよその腸脛靭帯の位置の連続画像はこちら。
腸脛靭帯炎(iliotibial band friction syndrome)/腸脛靱帯滑液包炎(infrailiotibial band bursitis)

- 腸脛靱帯炎は腸脛靭帯滑液包炎や腸脛靭帯症候群(iliotibial band friction syndrome)とも呼ばれる。
- 繰り返す膝の屈伸により腸脛靭帯ー大腿骨外側顆間の摩擦刺激による局所炎症像(friction syndrome)。ただし、この部の脂肪組織が挟まれることによるインピンジメント障害とも考えられている。屍体15膝とMRIの検討では、腸脛靭帯は線維束で大腿骨遠位に固定されていて外側上顆の上を前後に滑ることはなく、滑液包も認められませんでした。膝屈曲30°付近で腸脛靭帯が外側上顆に押し付けられ、患者の信号変化は靭帯深部の神経・血管に富む脂肪層に見られたことから、摩擦よりも脂肪組織の圧迫が病態の主体と考えられています。
- Overuse syndrome(使いすぎ症候群)の1つ。
- 長距離ランナーなどに認めるためランナー膝(runner’s knee)とも呼ばれる。ランナーの膝の外側の障害で最も多く、ランナーでの発生は5〜14%と推定されています(van der Worp 2012)。
- 膝の外側に痛みを認め、下り坂の走行で疼痛が増悪するのが特徴。膝の外側の痛みが続くときは、自己判断せず整形外科を受診してください。
腸脛靭帯炎(tractus iliotibialis)/腸脛靱帯滑液包炎(infrailiotibial band bursitis)の画像所見
- MRIのSTIRや脂肪抑制T2強調像の冠状断像において、腸脛靱帯と大腿骨外顆との間にある脂肪組織に、境界が不明瞭な信号上昇を認める。信号変化は腸脛靭帯の後ろ寄りの線維の深部に目立つと報告されています(Nishimura 1997)。
- 腸脛靱帯そのものに腫脹を認めるわけではなく、腸脛靱帯深部の浮腫や液貯留として認められる点に注意。ただし、腸脛靱帯炎の患者では大腿骨外側上顆の高さで腸脛靱帯が対照より厚かった(平均5.5mm対2.5mm)との報告もあり、腸脛靱帯の肥厚だけで腸脛靱帯炎を否定しない。
- 屍体膝のMR関節造影では大腿骨外側上顆と腸脛靭帯の間に本来の滑液包は認められず、患者の信号異常は外側を腸脛靭帯、内側を半月板関節包移行部・外側側副靭帯・外側上顆に囲まれた区画状の範囲に分布していました。
腸脛靭帯炎の治療と経過
- 治療は保存療法が基本です。ランナーの保存療法をまとめた系統的レビューでは、股関節外転筋(お尻の横の筋肉)の筋力強化が多く使われ、痛みと機能の改善がみられました(Sanchez-Alvarado 2024)。
- 保存療法で良くならない例には手術が選ばれることがあり、手術後の競技復帰率は81〜100%と報告されています(Bolia 2020)。改善しないときは、外側半月板損傷など紛らわしい病気がないか整形外科で再評価を受けます(Nishimura 1997)。
腸脛靭帯炎でよくある疑問(Q&A)
Q. 腸脛靭帯炎は英語で何と言いますか?略語は?
A. iliotibial band syndrome(ITBS)、または iliotibial band friction syndrome(ITBFS)です。腸脛靭帯そのものは ITB と略します。
Q. MRIの報告書に「腸脛靭帯炎・骨髄浮腫」と書かれていました。どういう意味ですか?
A. 骨髄浮腫は、MRIで骨の中が水っぽく白く写る所見で、それだけで病名が決まるものではありません。どの骨のどこにあるか、痛みの場所と合うかによって意味が変わるため、主治医に説明を受けてください。
症例 30歳代男性 長距離ランニング後に右膝外側の痛みあり。

MRIのSTIRの冠状断像において、腸脛靭帯の大腿骨側直下に浮腫性変化を示唆する異常な高信号を認めています。
腸脛靱帯炎と診断されました。
参考)
- 骨軟部疾患の画像診断 (画像診断別冊KEY BOOKシリーズ)
- 膝MRI 第3版 P134-138
参考文献
- Muhle C, Ahn JM, Yeh L, et al. Iliotibial band friction syndrome: MR imaging findings in 16 patients and MR arthrographic study of six cadaveric knees. Radiology. 1999;212(1):103-110. PubMed
- Ekman EF, Pope T, Martin DF, et al. Magnetic resonance imaging of iliotibial band syndrome. Am J Sports Med. 1994;22(6):851-854. PubMed
- Fairclough J, Hayashi K, Toumi H, et al. The functional anatomy of the iliotibial band during flexion and extension of the knee: implications for understanding iliotibial band syndrome. J Anat. 2006;208(3):309-16. PubMed
- Mills MK, Allen H. Knee Plical Pathology and Impingement Syndromes. Magn Reson Imaging Clin N Am. 2022;30(2):293-305. PubMed
- Nishimura G, Yamato M, Tamai K, et al. MR findings in iliotibial band syndrome. Skeletal Radiol. 1997;26(9):533-7. PubMed
- van der Worp MP, van der Horst N, de Wijer A, et al. Iliotibial band syndrome in runners: a systematic review. Sports Med. 2012;42(11):969-92. PubMed
- Sanchez-Alvarado A, Bokil C, Cassel M, et al. Effects of conservative treatment strategies for iliotibial band syndrome on pain and function in runners: a systematic review. Front Sports Act Living. 2024;6:1386456. PubMed
- Bolia IK, Gammons P, Scholten DJ, et al. Operative Versus Nonoperative Management of Distal Iliotibial Band Syndrome-Where Do We Stand? A Systematic Review. Arthrosc Sports Med Rehabil. 2020;2(4):e399-e415. PubMed
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