先に結論:上腕三頭筋腱損傷

  • 上腕三頭筋腱の損傷はまれで、肘を伸ばして手をついたときに、三頭筋が縮んだまま肘が曲げられることで起こります
  • X線で肘頭の小さな剥離骨片(flake sign)が見られることが多く、MRIの矢状断のT2・STIRで腱付着部の断裂の程度を評価します
  • 診察のテストは腱の凹み(ギャップ)の触知、抵抗に逆らう肘伸展、スクイーズテストで、MRIで確かめます
  • 完全断裂は手術、部分断裂は保存的治療を考えます。投球などで繰り返す負担による付着部炎も起こります

上腕三頭筋付着部炎、上腕三頭筋腱損傷とは

・上腕三頭筋腱損傷の頻度はあまり高くない。・危険因子として、アナボリックステロイドの使用、ウエイトリフティング、局所へのステロイド注射、副甲状腺機能亢進症、肘頭滑液包炎などが知られている。ただし肘MRI 801件の連続例では上腕三頭筋腱損傷が3.8%にみられ、部分断裂が最多で、MRI前に断裂が疑われていたのは43%にとどまりました。部分断裂は長頭・外側頭からなる浅層に生じ、肘頭の骨棘(付着部骨化)の剥離骨片を伴って退縮し、内側頭の深層は保たれる特徴的な像を示したと報告されています。

・発生機序は肘を伸展して転んだ際、上腕三頭筋が収縮している状態で肘関節の屈曲が強制されて起こることが多いが、直接損傷によっても発生する。

・肘関節を伸展する主要な筋肉のため損傷が見逃されると機能的に問題が大きい。

上腕三頭筋腱炎・腱断裂のテスト(診察)

・触診:肘頭のすぐ上の圧痛や、腱の凹み(ギャップ)を確かめます。ただし凹みを触れないこともあり、痛みと腫れで筋力や可動域の評価が難しいことがあります(Yeh 2010)。

・抵抗下の肘伸展:抵抗に逆らって肘を伸ばせれば部分断裂、伸ばせなければ完全断裂を疑います。付着部炎(腱炎)では伸展時の痛みが目立ちます。

・スクイーズテスト:うつ伏せで腕を台から垂らし、上腕三頭筋をつかんで肘が伸びなければ完全断裂を疑います。

上腕三頭筋付着部炎、上腕三頭筋腱損傷の画像所見

・通常肘頭の腱停止部もしくはその近傍に起こり、単純X線検査では小さな剥離骨片をみることが多い。

・MRIではT2強調像もしくはSTIR法矢状断像が有用。肘頭の三頭筋腱付着部に異常な高信号を呈する。

・完全断裂では手術が必要。手術で確かめた部分断裂6件のうち2件をMRIは完全断裂と判定しており、診察と合わせて判断します(Kholinne 2018)。

・付着部炎や筋力の保たれた部分断裂は、安静・固定・リハビリなどの保存療法が基本です(Casadei 2020)。肘の後ろの痛みや腫れが続くときは医療機関へ。

・部分断裂では保存的治療が選択可能となる場合があるので、MRIで腱損傷の部位、程度、筋収縮もしくは萎縮をチェックすることが治療方針決定のため有用。

症例 30歳代男性 転倒による肘の外傷(右肘後面の痛み・腫れ・可動域制限)

上腕三頭筋腱断裂 MRI プロトン密度強調脂肪抑制像 矢状断像
引用:Radiopaedia(Triceps brachii tendon full-thickness tear)

プロトン密度強調脂肪抑制像の矢状断で、肘の後方の上腕三頭筋腱の付着部付近に、液体を示す強い高信号域がみられます。報告では腱が全層で断裂して約12mmのギャップがあり、腱は近位へ退縮し、断裂部に約27×50mmの液体貯留と周囲の軟部組織の浮腫を伴っていました。

上腕三頭筋付着部炎、上腕三頭筋腱損傷と投球(ピッチング)との関係

加速期後期に肘関節伸展により上腕三頭筋付着部の肘頭には牽引力、腕尺関節には圧迫力が生じる。損傷や炎症を生じるならこの時。

参考文献

  1. Walker CM, Noonan TJ. Distal Triceps Tendon Injuries. Clin Sports Med. 2020;39(3):673-685. PubMed
  2. Shuttlewood K, Beazley J, Smith CD. Distal triceps injuries (including snapping triceps): A systematic review of the literature. World J Orthop. 2017;8(6):507-513. PubMed
  3. Koplas MC, Schneider E, Sundaram M. Prevalence of triceps tendon tears on MRI of the elbow and clinical correlation. Skeletal Radiol. 2011;40(5):587-94. PubMed
  4. Downey R, Jacobson JA, Fessell DP, et al. Sonography of partial-thickness tears of the distal triceps brachii tendon. J Ultrasound Med. 2011;30(10):1351-6. PubMed
  5. Yeh PC, Dodds SD, Smart LR, et al. Distal triceps rupture. J Am Acad Orthop Surg. 2010;18(1):31-40. PubMed
  6. Kholinne E, Al-Ramadhan H, Bahkley AM, et al. MRI overestimates the full-thickness tear of distal triceps tendon rupture. J Orthop Surg (Hong Kong). 2018;26(2):2309499018778364. PubMed
  7. Casadei K, Kiel J, Freidl M. Triceps Tendon Injuries. Curr Sports Med Rep. 2020;19(9):367-372. PubMed

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