膝の内側側副靭帯(MCL:medial collateral ligament)の解剖
- 浅層と深層があり、通常言うMCL(medial collateral ligament)は浅層を指す。
- MCL浅層は関節裂隙の5cm上方から下方は6-7cmの脛骨内側部に付着する。なので絞って冠状断像で撮影すると欠けてしまうので注意。
- MCL浅層は半月板との直接の連続はない。
- MCL深層は内側半月板に付着し、meniscofemoral、meniscotibial ligamentとも呼ばれる。別名、関節包靭帯。
内側側副靭帯断裂MCL tear
- 膝の靭帯損傷の中で最も高頻度。下腿の外反により生じやすい。
MCL断裂のGrade分類
- grade1:微細断裂(sprainまたはstrain)。靭帯のelongationが主体で、機能的な障害にはならない。治療も保存的。
- grade2:部分断裂
- grade3:完全断裂
と分類されるが、ほとんどはgrade1に留まることが多い。grade2,3を分ける必要はあまりない。
- 浅層本体はintactで見えるがその周囲に浮腫性変化を伴うものがgrade1。保存療法でいいので、仮に見落としても体制に差はない。
- あまりに厚いものは、断裂後の瘢痕組織に置換されているもので、健常ではない。厚いから正常ではない。
- 浅層のさらに外側に層が見えることがあり、縫工筋などの筋膜が見えている。縫工筋は半腱様筋、薄筋とともに鵞足を形成する。これらの筋と内側側副靱帯の関係(横断像)はこちら。
- MCL断裂の半数以上は大腿骨側で発生する。
- MCLは関節外構造物であり、単独損傷による関節液貯留は見られない。
- 関節包(MCL深層)が断裂しない限り関節鏡では確認されない。
- 保存的治療が多いが、grade3で前十字靭帯損傷の合併がある場合は再建術が選択されることあり。
症例 30歳代男性 正常例
まずは正常な内側側副靱帯のMRI画像をチェックしてみましょう。
続いて損傷〜断裂の症例です。
症例① 80歳代女性 grade1
浅層本体はintactで見えるがその周囲に浮腫性変化を伴うもの→grade1
症例② 30歳代男性 grade2
右の内側側副靱帯は腫大し、周囲に液体貯留を認めています。
Grade2相当です。
参考文献:膝MRI 第3版 P100-108