内頸動脈海綿静脈洞瘻(carotid-cavernous fistula:CCF)
- 海綿静脈洞内と、その中を通る内頸動脈との間に瘻が生じた特殊な動静脈瘻。
- 海綿静脈洞内に動脈血が直接流入するため、洞内の圧が著しく上昇し、眼静脈などへの逆流が起こる。
- 関与する動脈から内頸動脈本幹に瘻孔を形成する直接型と、内・外頸動脈の硬膜枝が関与する間接型に分類される。
- ただし、間接型は海綿状静脈洞部の硬膜AVFという表現が適切。
通常、内頚動脈と海綿静脈洞及びそこからの静脈は以下のような位置関係です。
それが、海綿静脈洞-内頚動脈との間に瘻孔ができれば、動脈から上眼静脈や上・下錐体静脈洞に血流が逆流して拡張します。
これがCCFです。
ちなみに、
- 直接型:内頸動脈→海綿静脈洞(急)
- 間接型:硬膜動脈→海綿静脈洞(ゆっくり)=硬膜AVFに分類
参考文献)よくわかる脳MRI P292-293
直接型CCF
- 直接型CCFではシャント量が多く、血流速度が速いので、進行性で、重症の傾向にあり。
- 原因により外傷性と特発性に分けられる。
- 外傷性は一般的にdirect CCF。特発性は一般的にdural AVFが原因。外傷性は非常に少ないので、CCF≒dural AVFといえる。
- 外傷によるものでは海綿静脈洞部の内頸動脈が断裂することにより生じる。頭蓋骨骨折を伴う様な重症の頭部外傷にて多い。頭部外傷の0.2-0.3%に見られ、好発部位はC4 portion。3割は外傷直後に見られるが、2ヶ月以上経過して発症することもあるので注意。このような遅発に生じる原因は、瘻孔が徐々に増大、瘻孔を塞いでいた血腫が取り除かれた、仮性動脈瘤の破裂などが考えられている。
- 特発性の原因としては、動脈瘤(ICA C4)や硬膜AVFの破裂、手術や血管内治療の合併症、線維筋形成異常、Ehlers-Danlos症候群、動脈硬化など。
- 血流の流れ:内頸動脈→海綿静脈→上眼静脈(ときに下眼静脈)、上・下錐体静脈洞など。
- 上眼静脈への逆流が顕著な前方型と、主に後方から横・S状静脈洞や内頚静脈に流出する後方型に大別される。
- 前方型では、眼症状(眼球突出、結膜充血、複視、視力低下)が、後方型では拍動性雑音が認められやすい。
- 血管内治療が第一選択(経動脈アプローチによる塞栓術(瘻孔閉鎖)→困難なら、経静脈アプローチによる海綿静脈洞のコイル塞栓術)。dural AVFでは時に放射線治療も適応となる。
CCFのMRI所見
- T1WI、T2WIにて患側の海綿静脈洞の拡大・flow voidの出現、上眼静脈拡張が見られる。後方型はMRIにて異常を指摘できないことが多い。
- MRA元画像が有用。患側が海綿静脈洞は高信号を呈する。
- TOFにて、上眼静脈・下錐体静脈洞といった流出路も高信号で描出されうる。(ただし、本疾患でなくてもTOFにて下錐体静脈洞、海綿静脈洞が描出されることがある。)
※MRAではS状静脈洞がしばしば正常でも高信号になることがある。特に左側。高齢者。 - 本疾患が疑われる場合は、造影MRAのDSAが有用。
- MRIでは直接型と間接型(硬膜AVF)の鑑別は困難で、血管造影が必要となる。
症例50歳代 女性
MRA元画像で右優位に海綿静脈洞に異常な高信号を認めています。
海綿静脈洞から前方に血管の連続あり。
右上眼静脈の拡張の所見です。
前方型の内頚動脈海綿静脈洞瘻(CCF)と診断されました。
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症例 80歳代 男性
MRA元画像にて左優位に両側の海綿静脈洞後部に異常な高信号を認めています。
それと連続するように左優位に下錐体静脈の描出を認めています。
MRAのMIP像においても、下錐体静脈の描出を認めています。
これだけでは両側下錐体静脈を介したS状静脈洞に静脈の逆流による偽病変の可能性もありますが、脳血管造影にて後方型のCCFと診断されました。(最終的な判断には脳血管造影やCTAにより、血流の方向を確認する必要があります。)
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※動画内で下垂体静脈となっていますが、正しくは下錐体静脈です。