先に結論:深部子宮内膜症のMRI

  • 深部子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が腹膜の下へ深く(5mm以上)入り込み、硬い線維性のしこりをつくる状態で、強い月経痛・性交痛・排便痛の原因になります。仙骨子宮靱帯・ダグラス窩・直腸腟中隔・直腸・膀胱に多いです
  • MRIではT2強調像で黒い(低信号)不整な結節・肥厚の中に小さな白い点(T2高信号)や出血(T1高信号)が見られ、子宮後屈・直腸の引きつれ・ダグラス窩の閉鎖を伴います
  • チョコレート嚢胞だけを見て満足せず、深部病変の広がりを評価することが手術の計画に重要です
  • CTは子宮内膜症の評価には不向きで、詳しい評価はMRIで行います。骨盤の外でも、へそ・鼠径部・帝王切開の傷あと・胸腔(月経随伴性気胸)に内膜症ができることがあります

※強い月経痛や排便時の痛みが続くときは、婦人科を受診してください。

深部子宮内膜症(Deep endometriosis)

  • 子宮内膜症→チョコレート嚢胞を診断して、満足してはいけない。
  • 子宮・卵巣外での子宮内膜症の好発部位はDouglas窩で、しばしば子宮と直腸の間に有痛性の硬結を形成する。深部内膜症(Deep endometriosis)と呼ばれ、血性の嚢胞を内包しない場合には見落とすことがある病態である。
  • 月経困難症の原因としては重視すべき病態であり、腺肉腫をはじめとする稀な腹膜由来の悪性腫瘍の発生母地としても重要である。
  • 深部子宮内膜症は、腹膜下に5mmを超えて内膜組織が入り込んだものとされている(Coutinho 2011)。
  • 生殖年齢の女性に多く見られ、強い疼痛や月経困難症を来し、高い活動性を保っている病変と考えられている。
  • 発生部位により仙骨子宮靭帯内膜症、直腸膣中隔内膜症、腸管子宮内膜症、膀胱子宮内膜症に大別され、仙骨子宮靭帯が最も侵されやすい。
  • 組織学的には、小さな内膜症組織の集簇、その周囲に観察される豊富な線維成分を特徴とする。
  • 内診や腹腔鏡では診断や病変の広がりを把握することが困難な場合があり、MRIが有用。

ダグラス窩閉鎖とは?

  • ダグラス窩腹膜病変による炎症・線維化。
  • R-ASRM分類高スコア→完全閉鎖+α=stageⅣ
  • 腹腔鏡手術の難易度に関係するので術前診断が重要。
  • 画像所見では、子宮後屈、後膣円蓋の挙上、腸管の子宮への牽引、子宮と腸管との間の線維性索状構造、子宮後壁漿膜面の線維化・線維性結節の5つが重要。この5所見を用いたMRI評価(57例)では、4名の放射線科医による内膜症病変と癒着の診断の平均正診率はそれぞれ89.0%と76.3%であった。

深部子宮内膜症の画像所見

  • 典型的には、豊富な線維成分を反映してT1・T2強調像ともに低信号を呈する腫瘤として認められる。
  • 内部にはT1強調像で出血を反映した小さな高信号域を認める。
  • T2強調像では病変内に小さな高信号域が散見されることがあり、内膜腺や小さな空洞を反映。
症例 30歳代女性

endometoriosis1 endometriosis

 仙骨子宮靭帯の病変

  • 不整な肥厚(非対称性肥厚)を示した場合に考慮する。
  • 子宮の後屈や癒着の存在、Douglas窩付近の内膜症性嚢胞の存在により、仙骨子宮靭帯の同定が困難な場合には評価が難しい。
  • 肥厚した靭帯の近位部に結節様構造を有したり、子宮後壁の仙骨子宮靭帯付着部に強い癒着、線維化が示唆される場合には、積極的に考慮する必要がある。
  • 仙骨子宮靭帯を正確に評価するには、薄いスライス厚での撮像が望ましい。2025年に更新されたESURのコンセンサスでは、深部内膜症は骨盤をコンパートメントに分けて記載することが推奨され、仙骨子宮靭帯は2方向以上で結節や棘状の突出(spiculation)がみられる場合、またはT1強調像で高信号の点を認める場合に異常とする。撮像は多方向のT2強調像、T1強調像に加え、腎を含む撮像を行うことが求められている。

直腸膣中隔内膜症

直腸腟中隔は、腟の後ろの壁と直腸の前の壁の間にある薄い結合組織の仕切りで、ダグラス窩のすぐ下にあります。MRIでは矢状断のT2強調像で、腟の後壁と直腸の前壁が接する部分として確認できます。

  • Douglas窩の腹膜病変が深部に浸潤し病巣を形成するものと、Muller管遺残組織 の化生により生じた内膜腺上皮の周囲に形成されるものに大別される。
  • 後膣円蓋と直腸前壁の間に形成される境界不明瞭な結節として認められ、膣後壁への浸潤や直腸前壁の線維性肥厚を伴う。

腸管子宮内膜症

  • 直腸とS状結腸が侵されることが多い。
  • 症状は下血、下腹部痛が多く、月経周期に関連して反復出現するのが特徴的とされているが、そうでない例も多く、診断に難渋することも多い。
  • イレウスを発症することもある。粘膜面に変化が生じることは少なく、粘膜下腫瘍の形態をとるものが多い。腫瘤を形成するものが多いが、びまん性の腸管狭窄を引き起こすこともある。
  • 注腸造影では内腔の狭窄を認めるが、粘膜面は保たれることが特徴。
  • MRIではT1・T2強調像で低信号を呈する壁肥厚や腫瘤として認められ, その描出には造影剤併用像が有用。
douglas窩閉鎖のシェーマ

douglas窩閉鎖のシェーマ

Kataoka M.L et al Radiology 2005;234:815-823より引用。シェーマがすごくわかりやすいです。

膀胱子宮内膜症

  • 膀胱後壁が好発部位。
  • 限局性、もしくはびまん性の壁肥厚を示し、T2強調像で、内部に点状の高信号域を含む低信号病変として認められることが多い。

腹膜病変(endometrial implants)

一次所見

①色素性病変:ブルーベリー斑 ・血性嚢胞 ・散布状黒斑 ・ヘモジデリン沈着 ・点状出血斑 ・漿膜下出血 ・卵巣チョコレート嚢胞

②非色素性病変:小水胞 ・漿液性嚢胞 ・充実性隆起

画像所見:脂肪抑制併用T1WIが必要。

稀少部位の子宮内膜症(へそ・鼠径部・腹壁瘢痕・胸腔)

子宮内膜症は骨盤の外にもできることがあります。共通するのは、月経のたびに痛む・腫れる・出血する(周期性の症状)ことで、画像では月経時の症状と合わせて疑うことが大切です。

部位 特徴 画像のポイント
臍(へそ) へその青黒いしこり、月経時の痛み・出血 へその皮下の小さな結節。MRIで出血を反映したT1強調像の高信号を含むことがある
鼠径部 鼠径ヘルニアと間違えられやすい足の付け根のしこり。右側に多い 子宮円靱帯に沿った結節や嚢胞。エコー・MRIで血性の内容を含む
腹壁瘢痕 帝王切開などの傷あとにできる痛むしこり 傷あとの皮下や腹直筋の中の境界不整な結節。筋膜・筋肉との関係を評価する
胸腔(胸郭子宮内膜症症候群) 月経の時期に起こる気胸(月経随伴性気胸)、血胸、喀血。右側に多い 胸部X線・CTで右の気胸・胸水。横隔膜の小さな孔や結節が手がかりになる
  • へそ(臍)の内膜症:系統的レビュー(232例)では、腹壁の内膜症のうち約20%を占め、68.4%は手術歴のない原発性でした。症状は痛み83%、月経に伴う症状83.5%、出血50.9%でした(Dridi 2022)。
  • 腹壁瘢痕の内膜症:文献をまとめた455例の検討では、平均年齢31.4歳、しこりが96%・痛みが87%・周期的な症状が57%にみられ、57%が帝王切開の傷あと、11%が子宮摘出術に関連していました。手術から発症までは平均3.6年で、切除後の再発は4.3%でした(Horton 2008)。
  • 鼠径部の内膜症:鼠径ヘルニアと間違えられやすく、8例の報告では月経時の鼠径部痛・腫れが多く、87.5%が右側でした(Haghgoo 2024)。
  • 胸腔の内膜症(月経随伴性気胸):110例の分析では、平均年齢35歳で、気胸が73%、血胸14%、喀血7%、肺結節6%でした。結節以外は90%以上が右側で、骨盤の内膜症より5年ほど遅れて発症する傾向がありました(Joseph 1996)。

月経のたびにへそ・足の付け根・傷あとが痛む、月経の時期に胸の痛みや息苦しさを繰り返すといった症状があれば、医療機関を受診してください。

参考文献

  1. Kataoka ML, Togashi K, Yamaoka T, et al. Posterior cul-de-sac obliteration associated with endometriosis: MR imaging evaluation. Radiology. 2005;234(3):815-823. PubMed
  2. Coutinho A, Bittencourt LK, Pires CE, et al. MR imaging in deep pelvic endometriosis: a pictorial essay. Radiographics. 2011;31(2):549-567. PubMed
  3. Bazot M, Bharwani N, Huchon C, et al. European society of urogenital radiology (ESUR) guidelines: MR imaging of pelvic endometriosis. Eur Radiol. 2017;27(7):2765-2775. PubMed
  4. Thomassin-Naggara I, Dolciami M, Chamie LP, et al. ESUR consensus MRI for endometriosis: protocol, lexicon, and compartment-based analysis. Eur Radiol. 2025;35(11):7272-7286. PubMed
  5. Jha P, Sakala M, Chamie LP, et al. Endometriosis MRI lexicon: consensus statement from the society of abdominal radiology endometriosis disease-focused panel. Abdom Radiol (NY). 2020;45(6):1552-1568. PubMed
  6. Dridi D, Chiaffarino F, Parazzini F, et al. Umbilical Endometriosis: A Systematic Literature Review and Pathogenic Theory Proposal. J Clin Med. 2022;11(4). PubMed
  7. Horton JD, Dezee KJ, Ahnfeldt EP, et al. Abdominal wall endometriosis: a surgeon’s perspective and review of 445 cases. Am J Surg. 2008;196(2):207-12. PubMed
  8. Haghgoo A, Faegh A, Mostafavi SRS, et al. Inguinal endometriosis: a case series and review of the literature. J Med Case Rep. 2024;18(1):83. PubMed
  9. Joseph J, Sahn SA. Thoracic endometriosis syndrome: new observations from an analysis of 110 cases. Am J Med. 1996;100(2):164-70. PubMed

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