頭部外傷によって起こる骨折の中で、頭の側面(耳のまわり)に起こる側頭骨骨折とはどのようなものなのか?

今回は、この側頭骨骨折(読みは「そくとうこつこっせつ」英語表記で「Temporal bone fracture」)について

  • 症状(縦骨折・横骨折)
  • CT画像診断及び評価する点
  • 治療法

をイラストと実際の頭部CT画像(側頭骨CT)を見ながら、わかりやすく解説しました。

耳の近くの骨折って、どんな症状が出るの?

側頭骨骨折では、聞こえにくさやめまい、顔が動かしにくくなること(顔面神経まひ)があります。耳から血や水が出ることもありますよ。

先に結論:側頭骨骨折の縦骨折・横骨折と症状

縦骨折 横骨折
受傷のしかた 頭の横(側頭部)を打つ 後頭部・前頭部を打つ
骨折線 錐体骨の長軸に沿う。中耳(鼓室)を通る 錐体骨を横切る。内耳・内耳道を通る
主な症状 耳からの出血・鼓膜損傷、伝音難聴(耳小骨のずれ) 感音難聴・めまい、顔面神経まひが多い

最近は耳のうち(耳包:蝸牛・三半規管)を通るかどうかで分ける分類も使われ、通るものは難聴・顔面神経まひ・髄液漏が多くなります。診断は側頭骨の薄いスライスCTで、耳小骨・顔面神経管・内耳への骨折の広がりを確認します。※頭を打ったあと聞こえにくい・顔が動かしにくい・耳から水が出るときはすぐに受診してください。

側頭骨骨折とは?

側頭骨骨折は、別名「錐体骨骨折」(すいたいこつこっせつ)とも呼ばれます。

頭部に強い衝撃を受けたことで、側頭部を骨折してしまったもので、外傷の強度によって障害度合いも大きく異なります。

錐体骨は頭蓋骨のうち、下の図の赤色の部分です。側頭骨の一部で、頭蓋底の中頭蓋窩と後頭蓋窩の境に斜めに位置し、中に内耳や顔面神経の通り道があります。

この側頭部は、聴覚や平衡感覚、顔面神経など様々な神経が密集する部位なので、そこに障害を受けると様々な神経症状が現れます。

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側頭骨骨折の症状は?

まず、側頭骨骨折は、骨折の角度により、

  • 横骨折
  • 縦骨折

に分けられ、以下のような症状が現れます。

衝撃を受けた時の強度や角度により、軽症から重度なものまで、様々です。

横に骨折を負った場合(横骨折)

図は正常例です。

  • 顔面麻痺
  • 目眩
  • 難聴

と言った症状が見られることがあります。

骨折線が錐体稜を横切り、骨折線が内耳および内耳道にかかるため、内耳と内耳道を損傷します。

骨折は内耳道内側端に達するもの、前庭を通るものがあります。

感音難聴・高度の顔面神経麻痺・末梢前庭性めまいなどの症状が現れ、顔面神経損傷は縦骨折より多いとされてきました。ただし、従来の縦・横の分類は顔面神経麻痺や髄液漏との対応が弱いとする報告もあります(Ishman 2004)。

縦に骨折を負った場合(縦骨折)

図は正常例です。

  • 鼓室内出血
  • 伝音難聴
  • 耳鳴り
  • 顔面神経麻痺

と言った症状が見られることがあります。

骨折線が錐体稜に沿って走り、側頭骨鱗状部・乳突部外耳道から錐体部に向かいます。

骨折線が鼓室を通るために、中耳が障害されやすい特徴があります。

耳小骨離断をしばしば伴い、鼓膜の裂傷や鼓室内出血などによって、伝音性難聴を来たします。

縦骨折に伴う伝音難聴の原因として、鼓室内液体貯留と耳小骨離断があります。

耳小骨離断の場合は持続性難聴の原因として重要です。中耳の損傷としてはキヌタ・ツチ関節やキヌタ・アブミ関節の脱臼が多いとされます(Maillot 2016)。

顔面神経麻痺がみられることもあり、膝神経節部でのfacial canalの骨折浮腫などによって出現します。

側頭骨骨折の診断は?

臨床症状や、原因となる外傷があった場合、頭部CT、中でも側頭骨にフォーカスを絞った撮像(側頭骨CT)で診断します。

頭部CTでは以下の点をチェックして評価します。

  • 顔面神経損傷
  • 外耳道出血
  • 鼓膜穿孔
  • 耳小骨離断
  • 内耳障害
  • 外傷性耳性髄液漏
  • 前庭障害
  • 外リンパ瘻

発症初期には骨折線に沿った液体貯留および粘膜肥厚などを認めます。

鼓室・乳突蜂巣領域での異常軟部濃度の有無や、これに沿った骨折線の存在を評価します。

伝音難聴・ 耳小骨離断・感音性難聴などがある場合、内耳・内耳道を横切る骨折線の評価が重要で、髄液漏がある場合は天蓋部(鼓室・乳突洞天蓋)骨折の確認を行います。

顔面神経麻痺では顔面神経管を横断する骨折線の有無を確認します。

このように、骨折線によって様々な症状が出るため、その評価が大切です。なお従来の縦骨折・横骨折の分類は症状との対応が弱いことが指摘されており、骨折が耳包(蝸牛・前庭・三半規管)を通るかどうかで分ける分類の方が合併症の予測に優れるとされます。耳包を通る骨折では通らない骨折に比べ、顔面神経損傷が5倍、感音難聴が25倍、髄液耳漏が8倍多かったと報告されています(Little 2006)。

硬膜下血腫や硬膜外血腫などの出血が起こっていないか、気脳症がある場合は感染を合併してこないかなどを頭部CTや血液検査で調べ、外傷時だけでなく経過を観察していく必要があります。

症例 20歳代女性 交通外傷

右側の乳突蜂巣に一部含気不良を認めています。

錐体骨の長軸に直交方向に近い方向に骨折線(横骨折)を認めています。

70歳代 男性 飲酒後自己転倒

右側頭骨に錐体骨の長軸に沿う方向に骨折線あり。

側頭骨の縦骨折を疑う所見です。

乳突蜂巣の含気が不良で、液貯留を認めています。

40歳代女性   頭部外傷、顔面神経麻痺あり。

右側頭骨に錐体骨の長軸に沿う方向に骨折線あり。

縦骨折を疑う所見です。

乳突蜂巣の含気が不良で、液貯留を認めています。

また、鼓室内に一部含気不良あり、顔面神経鼓室部に接しており、顔面神経損傷が疑われます。

症例 40歳代男性 転倒で左側頭部打撲

左側頭骨に錐体骨の長軸に沿う方向に骨折線あり。

縦骨折を疑う所見です。

乳突蜂巣から中耳に軟部陰影を認めています。

また、この症例では耳小骨の離断(ツチ骨とキヌタ骨)を認めています。

冠状断像では、中耳のほか、外耳道にも軟部陰影を認めています。

また、耳小骨の離断の様子は冠状断像の方がよりわかりやすいですね。

3DCTで頭蓋骨を再構成したものです。

側頭骨に骨折線があるのが明瞭にわかりますね。

側頭骨骨折の治療法は?

まずは安静にし、診断結果を元に、症状に合わせた治療法がおこなわれます。

治療は以下のようにおこなわれます。

保存療法

軽度な場合は、保存療法を基本とし、入院して安静にしたうえで、症状に応じて薬による治療が行われます。

鼓室内液体貯留は時間とともに吸収されることが多いです。820骨折の検討では、髄液漏122例のうち95例が1週間以内に自然に止まりました(Brodie 1997)。

手術療法

安静にしても症状が改善しない場合(髄液漏・顔面麻痺・難聴などの症状がある)には手術がおこなわれます。

難聴に対する手術などは経過をみてから行うこともありますが、緊急を要する症状の場合は早期におこなわれます。7〜10日を超えて続く髄液漏では手術での閉鎖が勧められています(Brodie 1997)。

参考文献:すぐ役立つ救急のCT・MRI P84-85

関連記事:末梢性顔面神経麻痺と障害レベル別出現症状

あわせて読みたい:頭蓋底骨折とは?バトル徴候・パンダの目徴候などの症状、好発部位とCT画像所見

参考文献:病気がみえる vol.7:脳・神経 P26・27・442〜445

最後に

  • 別名「錐体骨骨折」とも呼ばれ、頭部に強い衝撃を受けたことで、側頭部を骨折した状態
  • 頭部に衝撃を受けた時の強度や角度により、軽症から重度なものまで、様々
  • 聴覚神経や平衡感覚神経、顔面神経など、様々な神経症状が現れる
  • 画像診断によって骨折の部位や程度、脳への影響はないか調べる
  • 保存療法が基本で、改善しない場合や緊急を要する症状がある場合は手術を行う

 

怪我の程度や場所によって入院期間は異なります。

しかし、症状が続く場合には、入院の延期や通院が必要になり、さらなる治療の検討が行われます。

  1. Little SC, Kesser BW. Radiographic classification of temporal bone fractures: clinical predictability using a new system. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 2006;132(12):1300-1304. PubMed
  2. Ishman SL, Friedland DR. Temporal bone fractures: traditional classification and clinical relevance. Laryngoscope. 2004;114(10):1734-1741. PubMed
  3. Zayas JO, Feliciano YZ, Hadley CR, et al. Temporal bone trauma and the role of multidetector CT in the emergency department. Radiographics. 2011;31(6):1741-1755. PubMed
  4. Brodie HA, Thompson TC. Management of complications from 820 temporal bone fractures. Am J Otol. 1997;18(2):188-97. PubMed
  5. Maillot O, Attyé A, Boyer E, et al. Post traumatic deafness: a pictorial review of CT and MRI findings. Insights Imaging. 2016;7(3):341-50. PubMed

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