先に結論:肘関節MRIで押さえる正常解剖
- 肘は腕尺関節・腕橈関節・近位橈尺関節の3つの関節からなり、MRIでは内側(内側側副靱帯・屈筋の付け根)と外側(外側側副靱帯複合体・伸筋の付け根)に分けて見ると整理しやすくなります
- 内側側副靱帯の前斜走線維は野球肘(投球障害)で傷みやすく、外側では総伸筋腱の付け根がテニス肘(上腕骨外側上顆炎)の、外側尺側側副靱帯が肘の不安定性の原因として重要です
- 上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎(OCD)は投球をする子どもに多く、MRIでは骨軟骨の欠損・遊離体が不安定性を示す所見です(Nguyen 2019)。小頭と外側上顆の境目にある正常のくぼみ(偽欠損)と間違えないようにします
- 評価には冠状断の脂肪抑制T2/プロトン密度強調像が基本です。肘部管症候群では横断像で尺骨神経の太さと信号を見ます
肘関節MRIを読影する上で知っておくべき正常解剖
- 骨関節構造
- 内側コンパートメント
- 外側コンパートメント
に大きく分けられます。

内側コンパートメント、外側コンパートメントについて動画解説しました。
骨関節構造

- 3つの関節からなる。
- 内側→①腕尺関節:上腕骨滑車と尺骨滑車切痕からなる。
- 外側→②腕橈関節:上腕骨小頭と橈骨上関節面からなる。
- 近位側の橈骨と尺骨を結ぶ→③近位橈尺関節:橈骨環状関節面と尺骨橈骨切痕からなる。
内側コンパートメント
- 内側側副靱帯と総屈筋腱の2つの支持組織からなる。
①内側側副靭帯(medial collateral ligament:MCL)

- 外反・屈伸時の内側安定機構。
- 上腕骨内側上顆〜尺骨内側に付着。
- 前・後・横線維束の3つからなり、前線維束が安定機構として最も重要。
- 前線維束は内側上顆下面近くでは線維脂肪組織が靱帯線維間に存在するため、冠状断像で縞状の軽度高信号を示す。尺骨鉤状突起内側縁の停止部では明瞭な低信号を示す。無症状の60人の検討では、内側側副靱帯の前線維束と橈側側副靱帯は全例で全長が描出された一方、液体感受性の画像で前線維束の15%に信号上昇が見られ、正常でも信号上昇を示すことがある。正常靱帯の多くは厚さ4mm未満であった。
②総屈筋腱(common flexor tendon)

- 内側側副靱帯(MCL)の支持組織
- 上腕骨内側上顆の前面に起始し、前腕の屈曲回内運動を行う。
外側コンパートメント
- 外側側副靭帯複合体と総伸筋腱の2つの支持組織からなる。
①外側側副靭帯複合体(lateral collateral ligament complex)
- 外側側副靱帯複合体はややこしく、橈側側副靭帯(RCL:radial collateral ligament)、外側尺側側副靭帯(LUCL:lateral ulnar collateral ligament)、輪状靭帯(annular ligament)の3つの靱帯から成る。
- 靱帯損傷の好発部位は、橈側側副靭帯(RCL:radial collateral ligament)、外側尺側側副靭帯(LUCL:lateral ulnar collateral ligament)の分離が難しい起始部付近。



②総伸筋腱(common extensor tendon)

- 上腕骨外側上顆に付着。
- 橈側側副靭帯(RCL:radial collateral ligament)の表層をほぼ平行に走行する。
肘部管と尺骨神経(肘部管症候群のMRI)
- 肘部管症候群は、肘の内側にある線維と骨のトンネル(肘部管)で尺骨神経が圧迫される病気で、上肢では2番目に多い末梢神経障害です(Hussein 2025)。
- 肘部管は、上腕骨内側上顆の後ろの溝にあり、屋根は滑車上肘靱帯(cubital tunnel retinaculum、Osborne靱帯)、床は内側側副靱帯の後線維束と関節包でできています。
- MRIでは横断像で、尺骨神経の腫大・脂肪抑制T2強調像での高信号、ガングリオンや骨棘など神経を圧迫するもの、神経の脱臼(亜脱臼)を確認します。
- 無症状の60人の検討では、尺骨神経の信号上昇が60%、肘部管の屋根の代わりに筋肉がある滑車上肘筋(anconeus epitrochlearis)が23%に見られました(Husarik 2009)。正常でも見られるため、症状や神経伝導検査と合わせて判断します。
正常解剖から読む肘の代表的な病気:側副靱帯損傷・上顆炎・OCD
- 内側側副靱帯損傷(野球肘の内側型):冠状断で前線維束の連続・厚み・信号と、傷んだのが上腕骨側か尺骨側かを見ます。系統的レビューでは、MRIの感度57〜100%・特異度89〜100%、関節造影MRIの感度81〜100%・特異度91〜100%でした(Campbell 2020)。
- 上腕骨外側上顆炎(テニス肘):総伸筋腱の付け根が厚くなり、脂肪抑制T2強調像で信号が上がります。患者の90%に見られる一方、健康な人の14%にも同じ変化がありました(Pasternack 2001)。テニス肘を疑っていない人でも11%に見られ、年齢とともに増えるため(van Leeuwen 2016)、痛む場所と合っているかで判断します。
- 上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎(OCD):投球などをする子どもに多い病気です。不安定な病変を示す所見のうち、骨軟骨の欠損と関節内の遊離体は特異度100%でした(Nguyen 2019)。
- 偽欠損(pseudodefect):小頭と外側上顆の境目には正常でも溝があり、骨軟骨の欠損のように見えます(Rosenberg 1994)。OCDは小頭の関節面そのものに、軟骨下骨の信号変化を伴って見えることで区別します。
肘関節MRIの撮影法(断面とシーケンス)
| 断面 | 主に見るもの |
|---|---|
| 冠状断 | 内側側副靱帯、外側側副靱帯複合体、総屈筋腱・総伸筋腱の付け根(野球肘・テニス肘) |
| 横断 | 尺骨神経と肘部管、正中神経・橈骨神経、輪状靱帯 |
| 矢状断 | 上腕二頭筋腱、上腕三頭筋腱、関節液や遊離体 |
- シーケンスは、靱帯・腱・骨髄浮腫を見る脂肪抑制T2強調像またはプロトン密度強調像と、骨髄や脂肪を見るT1強調像が基本です。
肘関節のMRI画像
この記事で用いた肘関節MRIの画像(T2*WI冠状断像)の連続画像はこちらから閲覧できます。
※肘の痛みやしびれ、動かしにくさが続くときは、整形外科などの医療機関を受診してください。
参考文献:画像診断 Vol.42 No.10 2022 P1054-1057
- Kijowski R, Tuite M, Sanford M. Magnetic resonance imaging of the elbow. Part I: normal anatomy, imaging technique, and osseous abnormalities. Skeletal Radiol. 2004;33(12):685-697. PubMed
- Husarik DB, Saupe N, Pfirrmann CW, et al. Ligaments and plicae of the elbow: normal MR imaging variability in 60 asymptomatic subjects. Radiology. 2010;257(1):185-194. PubMed
- Husarik DB, Saupe N, Pfirrmann CW, et al. Elbow nerves: MR findings in 60 asymptomatic subjects–normal anatomy, variants, and pitfalls. Radiology. 2009;252(1):148-156. PubMed
- Hussein M, Hanumanthu MM, Shirodkar K, et al. Cubital tunnel syndrome: anatomy, pathology, and imaging. Skeletal Radiol. 2025;54(1):1-15. PubMed
- Campbell RE, McGhee AN, Freedman KB, et al. Diagnostic Imaging of Ulnar Collateral Ligament Injury: A Systematic Review. Am J Sports Med. 2020;48(11):2819-2827. PubMed
- Pasternack I, Tuovinen EM, Lohman M, et al. MR findings in humeral epicondylitis. A systematic review. Acta Radiol. 2001;42(5):434-40. PubMed
- van Leeuwen WF, Janssen SJ, Ring D, et al. Incidental magnetic resonance imaging signal changes in the extensor carpi radialis brevis origin are more common with age. J Shoulder Elbow Surg. 2016;25(7):1175-81. PubMed
- Nguyen JC, Degnan AJ, Barrera CA, et al. Osteochondritis Dissecans of the Elbow in Children: MRI Findings of Instability. AJR Am J Roentgenol. 2019;213(5):1145-1151. PubMed
- Rosenberg ZS, Beltran J, Cheung YY. Pseudodefect of the capitellum: potential MR imaging pitfall. Radiology. 1994;191(3):821-3. PubMed
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