先に結論:投球障害肩

  • 投球障害肩は、投球のどの時期(コッキング後期・加速期・減速期〜フォロースルー)にどんな力がかかるかで、傷む場所が変わります
  • コッキング後期では関節内インピンジメントによる後上方の関節唇損傷・腱板の関節側断裂やSLAP損傷、減速期では後方関節包の牽引によるBennett病変が起こります
  • 画像は、X線(レントゲン写真)で骨端線の開大やBennett病変など骨の変化をみて、関節唇・腱板はMRI(MR関節造影)で評価します
  • 成長期の子どもでは上腕骨近位骨端線の離開(リトルリーガーズショルダー)にも注意し、健側と比べたX線で確認します

投球障害肩の分類

投球肩障害

・定義:肩の痛みや脱臼感などのために思い通りに投げられない疾患群。投球を障害する病変を有する肩の総称。

※ラケット競技・バレーボールなどのoverhead activityでの肩の障害→広義の投球障害肩

・特徴:受傷機転が異なる様々な病態が単独あるいは重複して存在する。可逆性の(治癒可能な)ものから不可逆性のものまで程度は様々。

投球動作の分類

・ワインドアップ期→コッキング初期→コッキング後期→加速期→減速期→フォロースルー期の6つに分けられる。

コッキング後期=最大外転・外旋

・上腕骨頭に前方に脱臼しようとする力が働く→前方関節唇、関節上腕靭帯損傷、腱板疎部損傷

・骨頭と関節窩の後上方での衝突(関節内インピンジメント)→後上方関節唇損傷、腱板後部の関節側損傷

・烏口肩峰アーチによる腱板圧迫(肩峰下インピンジメント)→腱板損傷(滑液包側)

・上腕二頭筋長頭腱付着部に後方への回旋力→上方関節唇損傷(SLAP病変)

加速期=外転・外旋から急激な内旋

・上腕骨頭が烏口肩峰アーチに衝突→肩峰下滑液包・腱板上部の圧迫・摩擦→腱板損傷(棘上筋腱・滑液包側)、肩峰下滑液包炎

・上腕骨頭への回旋トルク→成長期ならば閉鎖前の骨端線へのストレスがかかる→リトルリーグ肩(上腕骨近位骨端線離開)

 減速期〜フォロースルー期=肩の内転・内旋、肩の前方への伸展

・後方関節唇/関節包・関節窩後縁への牽引力→後方関節唇/関節包損傷、Bennett lesion

・上腕二頭筋長頭の収縮→その付着部での牽引→上方関節唇損傷(SLAP病変)

投球動作における腱板損傷の原因

①肩峰下インピンジメント:主に加速期

  • 烏口肩峰弓と腱板の衝突・摩擦→滑液包側部分断裂

②腱板への牽引力:主に減速期

  • 骨頭付着部の関節側の線維により大きくかかる→関節側部分断裂

③関節内インピンジメント:コッキング後期

  • 骨頭と関節窩の後上部が衝突し、腱板(後上部)がはさまれる。→関節側部分断裂

投球障害肩の画像診断

X線(レントゲン写真)

・骨の変化をみる検査で、腱板・関節唇の損傷は写らない。

・リトルリーグ肩:上腕骨近位骨端線の開大・不整をみる。投げない側と比べるのが大切。

・Bennett病変:関節窩後下縁の骨化(後下関節上腕靱帯の繰り返しの牽引による)(Goes 2023)。無症状の大リーグ投手55人の22%にみられた(Wright 2004)。

MRI・MR関節造影

・関節内インピンジメントでは、上腕骨頭後上方の嚢胞と、腱板後上部・後上方関節唇の「kissing」損傷がみられる(Goes 2023)。

・SLAP損傷は上腕二頭筋長頭腱と上方関節唇の付着部が関節窩からはがれる損傷(Goes 2023)。

肩の痛みが続く、思うように投げられないときは、整形外科を受診してください。

あわせて読みたい:上腕三頭筋付着部炎・腱断裂のテストと画像診断(投球、ダンベル、腕立て)、肩のMRIの撮影方法(撮り方)と各断面で見るべきポイントのまとめ

参考文献

  1. Corpus KT, Camp CL, Dines DM, et al. Evaluation and treatment of internal impingement of the shoulder in overhead athletes. World J Orthop. 2016;7(12):776-784. PubMed
  2. Burkhart SS, Morgan CD, Kibler WB. The disabled throwing shoulder: spectrum of pathology Part I: pathoanatomy and biomechanics. Arthroscopy. 2003;19(4):404-20. PubMed
  3. Davidson PA, Elattrache NS, Jobe CM, et al. Rotator cuff and posterior-superior glenoid labrum injury associated with increased glenohumeral motion: a new site of impingement. J Shoulder Elbow Surg. 1995;4(5):384-90. PubMed
  4. Goes PK, Flores DV, Damer A, et al. Shoulder and Elbow Injuries in Adult Overhead Throwers: Imaging Review. Radiographics. 2023;43(12):e230094. PubMed
  5. Wright RW, Paletta GA Jr. Prevalence of the Bennett lesion of the shoulder in major league pitchers. Am J Sports Med. 2004;32(1):121-4. PubMed

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