先に結論:脳梗塞の種類(病型)一覧とA to A塞栓

病型 原因 画像の特徴
心原性脳塞栓症 心房細動などで心臓にできた血栓が飛ぶ 突然発症・重症。血管の支配域に一致した皮質を含む大きな梗塞。出血性梗塞になりやすい
アテローム血栓性脳梗塞 頸動脈や脳の太い動脈の動脈硬化(プラーク) 段階的に悪化しやすい。白質優位の梗塞、分水嶺梗塞(血流の境目)など
ラクナ梗塞 細い穿通枝の動脈硬化(高血圧) 基底核・視床・脳幹などの小さな梗塞(急性期は最大径20mm未満、慢性期の空洞(ラクン)は3〜15mm程度)
その他 動脈解離・血管炎・凝固異常など 原因により様々

A to A(artery to artery)塞栓とは、頸動脈などの動脈のプラークがはがれて、その先の脳の動脈に詰まるタイプで、アテローム血栓性脳梗塞の発症の仕方の一つです。病型によって再発予防の薬(抗凝固薬か抗血小板薬か)が違うため、見分けることが大切です。

  • A to A塞栓のMRI:拡散強調像(DWI)で、片側の一つの血管領域に小さな梗塞が散らばる形が典型です。複数の血管領域(左右両側や前後の循環)にまたがる多発梗塞は、心原性塞栓を考えます(Kang 2003)
  • 分水嶺梗塞(境界領域梗塞):二つの動脈の支配域の境目に起こる梗塞で、脳梗塞の約10%を占めます。皮質側の外側型と深部白質の内側型があります(Mangla 2011)

脳卒中病型分類(NINDSの分類)

  • 脳出血
  • クモ膜下出血
  • 動静脈奇形からの頭蓋内出血
  • 脳梗塞 ←

脳梗塞の分類

a.発症機序による分類
①血栓性
②塞栓性
③血行力学的
b.臨床カテゴリーによる分類
①アテローム血栓性
②心原性塞栓
③ラクナ
④その他。国際的には、病因に基づくTOAST分類(大血管アテローム硬化、心原性塞栓、小血管閉塞、その他の原因確定、原因不明の5病型)が臨床試験などで広く用いられています。原因不明の脳梗塞は全体の約25%を占め、その多くは塞栓性と考えられることから、2014年にラクナでなく近位動脈狭窄や心原性塞栓源のない塞栓性梗塞をESUS(embolic stroke of undetermined source)とする概念が提唱されました。ただしNAVIGATE ESUS試験では、ESUSに対するリバーロキサバンはアスピリンより再発を減らさず、大出血が増えました。

脳梗塞の分類:臨床病型と発症機序を合わせて。

・脳梗塞は単一病態ではない!!

臨床病型 発生機序 病態・原因
①塞栓性梗塞 塞栓性 心原性(心房細動→左心耳血栓)
動脈原性※(頸動脈plaque破綻)
※は同じ病態。奇異性(右左シャント)
②アテローム血栓性 血栓性 主幹部から皮質枝レベル
塞栓性※ Plaque破綻→遊離→末梢閉塞
血行力学的 主幹動脈狭窄~閉塞→灌流圧↓
③穿通動脈閉塞(広義のラクナ梗塞) 細小動脈硬化 穿通動脈細動脈硬化(ラクナ梗塞)
血栓性 起始部血栓による分枝粥腫型梗塞
塞栓性 微小塞栓。主幹動脈に一過性閉塞→再開通。
血行力学的 主幹動脈狭窄~閉塞

・なぜ病型分類が必要か?→治療が異なるから。

①塞栓症(心原性塞栓症 Cardio embolism)

・非弁膜性心房細動
-高齢者
-慢性or発作性(pAf)
-左房・左心耳に血栓形成→脳に飛んで発症

・大きな塞栓子が動脈分岐部に閉塞をきたす。→そのため、突然発症、側副血行発達不良、重篤な症状(意識障害、片麻痺)が起こる。

・支配域に一致した境界明瞭な梗塞。皮質を含む。

・自然溶解、破砕→末梢を再閉塞することがある。この現象はspectacular shrinking deficit(SSD)と呼ばれる。

・SSDは、大きな片側の症状で始まりながら急速に回復する経過のこと。118例の検討では12%(14例)にみられ、1例を除き心原性脳塞栓症でした。塞栓子が末梢へ移動したと考えられ、梗塞は小さく皮質や深部に散らばる形が多く、出血性変化は少なめでした(Minematsu 1992)。

・著明な血管性浮腫。

・再開通により重篤な出血性梗塞を起こすことがある。脳梗塞の分類.006



②アテローム血栓性梗塞

・脳動脈のアテローム硬化(アテローム硬化斑、プラーク)が原因。

・好発部位:IC起始部、C2-C1-M1、V4-BA-P1

・プラークによる狭窄、プラークの破綻→血栓形成

・緩徐進行、側副血行発達、急性発症するが段階的増悪する事が多い。

・皮質はspareされる傾向あり
∵皮質枝の末梢は脳表で軟膜髄膜吻合を形成しており、閉塞時には側副血行路として機能するから。塞栓性梗塞では機能せず皮質も梗塞に陥る。

→白質優位の梗塞、境界やや不明瞭(皮質枝支配域全体が梗塞になることはない。また、血管性浮腫も弱い)

・再開通率は低い。脳梗塞の分類.004

血栓性梗塞と塞栓性梗塞の比較
  アテローム血栓性梗塞 塞栓性梗塞(特に心原性)
画像所見 白質側優位とする梗塞 皮質側優位の区域性の梗塞
発症様式 緩徐発症、段階的進行
一過性脳虚血発作
突発完成型の発症(日中活動時に多い)
神経症状 塞栓症に比較して軽微 意識障害、片麻痺、失語など重篤なことが多い
原因因子 糖尿病、高脂血症、喫煙 心房細動(左心耳内血栓)、弁膜症、粥腫破綻
病態 側副血行形成が生じる 側副血行形成が不良
再開通→著明な血管性浮腫、出血性梗塞の危険
アテローム血栓性をさらに分類

・血栓性、塞栓性、血行力学性、全ての発症機序が起こりうる。

(a)血栓性→アテローム血栓性(atherothrombotic infarction:ATI):動脈硬化狭窄部位に血栓が形成され閉塞。

(b)境界領域→境界領域梗塞(watershed infarction):急激な灌流圧低下で、側副路が代償できない部位で灌流不全が起こる。

(c)塞栓性→動脈原性梗塞(artery-to-artery infarction):アテロームに付着した血栓が遊離する。

※心原性塞栓よりは範囲が小さい傾向があるが一方で、多発、繰り返すことがある。

▶境界領域梗塞

・血行力学的な機序によるもの。

・MCAとACAの灌流域の分水嶺やMCAとPCAの分水嶺などの表在型と、大脳深部に生じる深部型がある。

・表在型では塞栓性機序によるもの(artery-to-artery embolism)がかなり含まれている。

・脂肪塞栓症でも境界領域梗塞に分布するように見えることがある。この場合、物理的な血流低下のみを原因としているわけではないので注意。

・MRAを合わせて経過を考えることにより、境界領域梗塞の診断をしていくことが大事。

・境界領域梗塞は脳梗塞全体の約10%。内側型(深部白質)は主に血行力学的な灌流低下、外側型(皮質)は塞栓が主な原因と考えられています。深部白質に小さな梗塞が数珠状に並ぶ形は、その後の脳梗塞の独立した予測因子とされます(Mangla 2011)。

・このため分水嶺梗塞を見たら、同側の内頸動脈や中大脳動脈の高度狭窄・閉塞がないかをMRAや頸動脈エコーで確かめます。

▶動脈原性梗塞

・ACA-MCA境界域に微小梗塞あり。
・MRAを見るとIC起始部に不安定プラークあり。それが破綻して末梢側に微小梗塞を生じたと考える。
-原因はアテローム硬化性
-梗塞は塞栓性

※一見、小さな梗塞ではあるが、内頸動脈起始部にLipid rich, soft plaqueがあり、それが破綻した小さな塞栓子がA to AとしてACAの末梢に飛んだと考えられる。A to Aは上行大動脈から内頸動脈の粥腫破綻や新鮮血栓の遊離が塞栓源となって生じる梗塞である。

▶A to A塞栓の画像の特徴(心原性塞栓との違い)

・発症24時間以内のDWIの検討では、片側の前方循環の多発梗塞や、一つの血管領域に散らばる小梗塞が大血管アテローム硬化(A to Aを含む)と関連し、皮質から皮質下にかけての単発梗塞や、複数の循環にまたがる多発梗塞は心原性塞栓と関連していました(Kang 2003)。

・DWIで複数の血管領域に急性梗塞がみられた例は28.9%で、一側の前方循環に限られる群では42例中33例が大血管アテローム硬化によるものでした(Roh 2000)。

・CT・MRIで梗塞の分布を見るのと同時に、頸部〜頭蓋内の血管(頸動脈エコー、MRA、CTA)で狭窄やプラークを確認することが、A to Aと心原性を見分ける手がかりになります。

③ラクナ梗塞 Lacunar infarct

・lacunaとは小さな窪みという意味。

・穿通動脈(穿通枝)閉塞によりおこる梗塞であり、 小梗塞(慢性期の空洞(ラクン)は3-15mm程度、急性期の梗塞は最大径20mm未満)。

・穿通動脈(穿通枝)の末梢部における脂肪硝子変性や血管壊死による閉塞。(末梢という点が分枝粥腫型梗塞(BAD)との相違点)

・血管周囲腔と間違えない。ラクナ梗塞は3mm以上、非対称性分布。

・細動脈硬化、高血圧、微小粥腫、微小塞栓などが原因となる。

▶好発部位:
 ・外側線条体動脈(基底核領域)
 ・視床への穿通動脈
 ・前脈絡動脈(内包後脚)
 ・脳幹 
 に多い。

・終末動脈ゆえ側副血行はみとめない。

・症状は比較的軽微であるが、前脈絡動脈閉塞では片麻痺を来す。

・出血性梗塞はない。ただし、Microbleedsはありえる。

・分枝粥腫型梗塞(BAD)はラクナ梗塞ではない。鑑別する必要がある。

・高血圧性脳出血とは、ラクナ梗塞と同様いずれも穿通動脈レベルの高血圧による動脈硬化性病変に基づくもの。症状は重篤であり、ラクナと脳出血は表裏一体である。脳梗塞の分類.008

ラクナ梗塞の発生機序

 

①リポヒアリノーシス(lipohyalinosis):3~7mmの小さなラクナは、血管壊死・類線維素変性による血管閉塞で生じ、これは普通は直径200μm以下の脳動脈の高血圧性変化であり、一方では高血圧性脳出血の原因となる。

②微小粥腫(microatheroma):10mm以上の比較的大きいラクナは直径400~900μmの太い穿通動脈壁に見られる小さなアテロームによる。

③分枝粥腫(branch atheromatous disease):主幹動脈のアテローム硬化による穿通動脈入口部の分枝粥腫による。

④⑤微小塞栓:④大血管からの塞栓(アテローム血栓性脳梗塞として治療)、⑤心臓に由来する微小塞栓による(心原性脳塞栓症として治療)

 

脳梗塞の種類と画像でよくある疑問(Q&A)

Q. A to A塞栓と心原性脳塞栓症はどう違いますか?
A. どちらも「詰まりものが飛んでくる」塞栓ですが、元が違います。A to Aは頸動脈などの動脈のプラーク、心原性は心臓(心房細動など)の血栓です。画像では、A to Aは片側の一つの血管領域に小さな梗塞が散らばりやすく、心原性は皮質から皮質下にかけての単発梗塞や複数の血管領域にまたがる梗塞になりやすい傾向があります(Kang 2003)。

Q. アテローム血栓性脳梗塞はCTでわかりますか?
A. 発症直後のCTでははっきりしないことがあり、小さな新しい梗塞の検出にはMRIの拡散強調像(DWI)が優れています(Roh 2000)。CTは出血の除外に欠かせない検査で、MRA・CTA・頸動脈エコーで原因となる血管の狭窄を確かめます。

突然の片側の手足のまひ・しびれ、ろれつが回らない、顔のゆがみなどがあれば、すぐに救急車を呼んで医療機関を受診してください。

参考)よくわかる脳MRI、ここまでわかる頭部救急のCT

あわせて読みたい:一過性脳虚血発作とは?MRI画像診断のポイントは?

参考文献

  1. Adams HP Jr, Bendixen BH, Kappelle LJ, et al. Classification of subtype of acute ischemic stroke. Definitions for use in a multicenter clinical trial. TOAST. Trial of Org 10172 in Acute Stroke Treatment. Stroke. 1993;24(1):35-41. PubMed
  2. Wardlaw JM, Smith EE, Biessels GJ, et al. Neuroimaging standards for research into small vessel disease and its contribution to ageing and neurodegeneration. Lancet Neurol. 2013;12(8):822-38. PubMed
  3. Hart RG, Diener HC, Coutts SB, et al. Embolic strokes of undetermined source: the case for a new clinical construct. Lancet Neurol. 2014;13(4):429-38. PubMed
  4. Hart RG, Sharma M, Mundl H, et al. Rivaroxaban for Stroke Prevention after Embolic Stroke of Undetermined Source. N Engl J Med. 2018;378(23):2191-2201. PubMed
  5. Kang DW, Chalela JA, Ezzeddine MA, et al. Association of ischemic lesion patterns on early diffusion-weighted imaging with TOAST stroke subtypes. Arch Neurol. 2003;60(12):1730-4. PubMed
  6. Roh JK, Kang DW, Lee SH, et al. Significance of acute multiple brain infarction on diffusion-weighted imaging. Stroke. 2000;31(3):688-94. PubMed
  7. Mangla R, Kolar B, Almast J, et al. Border zone infarcts: pathophysiologic and imaging characteristics. Radiographics. 2011;31(5):1201-14. PubMed
  8. Minematsu K, Yamaguchi T, Omae T. ‘Spectacular shrinking deficit’: rapid recovery from a major hemispheric syndrome by migration of an embolus. Neurology. 1992;42(1):157-62. PubMed
  9. Duering M, Biessels GJ, Brodtmann A, et al. Neuroimaging standards for research into small vessel disease-advances since 2013. Lancet Neurol. 2023;22(7):602-618. PubMed

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →