脳卒中病型分類(NINDSの分類)

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脳梗塞の分類

a.発症機序による分類
①血栓性
②塞栓性
③血行力学的
b.臨床カテゴリーによる分類
①アテローム血栓性
②心原性塞栓
③ラクナ
④その他

脳梗塞の分類:臨床病型と発症機序を合わせて。

・脳梗塞は単一病態ではない!!

臨床病型 発生機序 病態・原因
塞栓性梗塞 塞栓性 心原性(心房細動→左心耳血栓)
動脈原性※(頸動脈plapue破綻)
※は同じ病態。奇異性(右左シャント)
アテローム血栓性 血栓性 主幹部から皮質枝レベル
塞栓性※ Plaque破綻→遊離→末梢閉塞
血行力学的 主幹動脈狭窄~閉塞→灌流圧↓
穿通動脈閉塞(広義のラクナ梗塞) 細小動脈硬化 穿通動脈細動脈硬化(ラクナ梗塞)
血栓性 起始部血栓による分枝粥腫型梗塞
塞栓性 微小塞栓。主幹動脈に一過性閉塞→再開通。
血行力学的 主幹動脈狭窄~閉塞

・なぜ病型分類が必要か?→治療が異なるから。

①塞栓症(心原性塞栓症 Cardio embolism)

・非弁膜性心房細動
-高齢者
-慢性or発作性(pAf)
-左房・左心耳に血栓形成→脳に飛んで発症

大きな塞栓子が動脈分岐部に閉塞をきたす。→そのため、突然発症、側副血行発達不良、重篤な症状(意識障害、片麻痺)が起こる。

支配域に一致した境界明瞭な梗塞皮質を含む

・自然溶解、破砕→末梢を再閉塞することがある。この減少はspectacular shrinking deficit(SSD)と呼ばれる。

著明な血管性浮腫

・再開通により重篤な出血性梗塞を起こすことがある。脳梗塞の分類.006



②アテローム血栓性梗塞

・脳動脈のアテローム硬化(アテローム硬化斑、プラーク)が原因。

・好発部位:IC起始部、C2-C1-M1、V4-BA-P1

・プラークによる狭窄、プラークの破綻→血栓形成

緩徐進行、側副血行発達、急性発症するが段階的増悪する事が多い。

皮質はspareされる傾向あり
∵皮質枝の末梢は脳表で軟膜髄膜吻合を形成しており、閉塞時には側血行路として機能するから。塞栓性梗塞では機能せず皮質も梗塞に陥る。

白質優位の梗塞、境界やや不明瞭(皮質枝支配域全体が梗塞になることはない。また、血管性浮腫も弱い)

・再開通率は低い。脳梗塞の分類.004

血栓性梗塞と塞栓性梗塞の比較
  アテローム血栓性梗塞 塞栓性梗塞(特に心原性)
画像所見 白質側優位とする梗塞 皮質側優位の区域性の梗塞
発症様式 緩徐発症、段階的進行
一過性脳虚血発作
突発完成型の発症(日中活動時に多い)
神経症状 塞栓症に比較して軽微 意識障害、片麻痺、失語など重篤なことが多い
原因因子 糖尿病、高脂血症、喫煙 心房細動(左心耳内血栓)、弁膜症、粥腫破綻
病態 側副血行形成が生じる 側副血行形成が不良
再開通→著明な血管性浮腫、出血性梗塞の危険
アテローム血栓性をさらに分類

・血栓性、塞栓性、血行力学性、全ての発症機序が起こりうる。

(a)血栓性アテローム血栓性(arthrothrombotic infarction:ATI):動脈硬化狭窄部位に血栓が形成され閉塞。

(b)境界領域境界領域梗塞(watershed infarction):急激な灌流圧低下で、側副路が代償できない部位で還流不全が起こる。

(c)塞栓性動脈原性梗塞(artery-to-artery infarction):アテロームに付着した血栓が遊離する。

※心原性塞栓よりは範囲が小さい傾向があるが一方で、多発、繰り返すことがある。

▶境界領域梗塞

血行力学的な機序によるもの。

・MCAとACAの灌流域の分水嶺やMCAとPCAの分水嶺などの表在型と、大脳深部に生じる深部型がある。

表在型では塞栓性機序によるもの(artery-to-artery embolism)がかなり含まれている

・脂肪塞栓症でも境界領域梗塞に分布するように見えることがある。この場合、物理的な血流低下のみを原因としているわけではないので注意。

MRAを合わせて経過を考えることにより、境界領域梗塞の診断をしていくことが大事

▶動脈原性梗塞

・ACA-MCA境界境界域に微小梗塞あり。
・MRAを見るとIC起始部に不安定プラークあり。それが破綻して末梢側に微小梗塞を生じたと考える。
-原因はアテローム硬化性
-梗塞は塞栓性

※一見、小さな梗塞ではあるが、内頸動脈起始部にLipid rich, soft plaqueがあり、それが破綻した小さな塞栓子がA to AとしてACAの末梢に飛んだと考えられる。A to Aは上行大動脈から内頸動脈の粥腫破綻や新鮮血栓の遊離が塞栓源となって生じる梗塞である。

③ラクナ梗塞 Lacunar infarct

lacunaとは小さな窪みという意味。

穿通動脈(穿通枝)閉塞によりおこる梗塞であり、 5-15mm程度の小梗塞。

・穿通動脈(穿通枝)の末梢部における脂肪硝子変性や血管壊死による閉塞。(末梢という点が分枝粥腫型梗塞(BAD)との相違点)

・血管周囲腔と間違えない。ラクナ梗塞は3mm以上、非対称性分布

・細動脈硬化、高血圧、微小粥腫、微小塞栓などが原因となる。

▶好発部位:
 ・外側線条体動脈(基底核領域)
 ・視床への穿通動脈
 ・前脈絡動脈(内方後脚)
 ・脳幹 
 に多い。

・終末動脈ゆえ側副血行はみとめない。

・症状は比較的軽微であるが、前脈絡動脈閉塞では片麻痺を来す。

・出血性梗塞はない。ただし、Microbleedsはありえる。

分枝粥腫型梗塞(BAD)はラクナ梗塞ではない。鑑別する必要がある。

・高血圧性脳出血とは、ラクナ梗塞と同様いずれも穿通動脈レベルの高血圧による動脈硬化性病変に基づくもの。症状は重篤であり、ラクナと脳出血は表裏一体である。脳梗塞の分類.008

ラクナ梗塞の発生機序

 

①リポヒアリノーシス(lipohyalinosis):3~7mmの小さなラクナは、血管壊死・類線維素変性による血管閉塞で生じ、これは普通は直径200μm以下の脳動脈の高血圧性変化であり、一方では高血圧性脳出血の原因となる。

②微小粥腫(microatheroma):10mm以上の比較的大きいラクナは直径400~900μmの太い穿通動脈壁に見られる小さなアテロームによる。

③分枝粥腫(branch atheromatous disease):主幹動脈のアテローム硬化による穿通動脈入口部の分枝粥腫による。

④⑤微小塞栓:④大血管からの塞栓(アテローム血栓性脳梗塞として治療)、⑤心臓に由来する微小塞栓による(心原性脳塞栓症として治療)

 

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