先に結論:滑膜ヒダ(タナ)障害
- 膝の中には、胎児期の仕切りの名残の薄い膜(滑膜ヒダ=タナ)があり、多くの人にある正常構造です。最も問題になるのは膝のお皿の内側の内側滑膜ヒダです
- スポーツなどでくり返しこすれると、ヒダが厚く硬くなって膝の内側の痛み・ひっかかり・クリック音を起こすタナ障害になります
- 原因は、ヒダそのものの異常ではなく、膝の曲げ伸ばしのくり返し・打撲などでヒダに炎症(滑膜炎)が起こり、厚く硬くなることです
- MRI(脂肪抑制T2など)では、関節液の中に低信号の帯として見え、厚い・不整・周りの滑膜炎や軟骨の傷みが手がかりです。多くは保存療法で改善し、改善しない場合は関節鏡で切除します
※膝の内側の痛みやひっかかりが続くときは、整形外科を受診してください。
滑膜ヒダ(タナ)障害とは?
- 膝関節は発生途中でいくつかの滑膜による隔壁により分割されているが、生下時には単一の関節腔となる。この滑膜隔壁の遺残が滑膜ヒダ(タナ)といわれる。
頻度の高いものに
- 膝蓋上ヒダ(suprapatellar plica)
- 内側ヒダ(mediopatellar plica)
- 膝蓋下ヒダ(infrapatellar plica)
がある。
- いずれも正常構造であり、薄く柔軟性に富み、臨床的に問題とはならない。関節鏡で観察すると白色の膜様構造として見られる。
- しかし繰り返す機械的刺激などにより反応性滑膜炎が生じ、ヒダの肥厚や瘢痕化が進行すると症状が出現し、タナ障害と呼ばれる。
3つの滑膜ヒダの違い(一覧)
| 名前 | 場所 | MRIで見やすい断面 | 症状との関係 |
|---|---|---|---|
| 膝蓋上ヒダ | 膝蓋骨の上(膝蓋上嚢と関節腔の境) | 矢状断 | 多くは無症状 |
| 内側滑膜ヒダ(タナ) | 膝蓋骨の内側から膝蓋下脂肪体へ | 横断(軸位断) | タナ障害の原因として最も多い(Al-Hadithy 2011) |
| 膝蓋下ヒダ | 前十字靭帯の前方 | 矢状断 | 症状を出すことは少ない |
膝蓋上ヒダ(suprapatellar plica)
- 胎生期には膝蓋上隔壁(suprapatellar septum)により膝蓋上嚢と膝関節腔は分離しているが、この隔壁が退縮して膝蓋上ヒダとなる。
- この退縮にはvariationがあり、type1(全く退縮せずに残ったもの)、type2(ヒダに穴が空く形で大部分が残ったもの)、type3(一部のみがヒダとして残ったもの。ほとんどが内側寄り)、type4(全く残っていないもの)の4型に分類される。いわゆる膝蓋上ヒダはtype3にあたる(T zidorn arthroscopy 1992;8(4):459-64)
- 全く退縮せずに残ったtype1のものは、完全に膝蓋上滑液包が分離しており、孤立膝蓋上嚢と呼ばれる。そこに外傷、感染、出血などにより膝蓋上腔に液体貯留が促進されることにより、膝蓋上部に皮下腫瘤を触れることがある(孤立膝蓋上滑液包炎)。
内側滑膜ヒダ(mediopatellar plica)
- 膝関節腔の内側を走行する滑膜ヒダ。
- MRI横断画像で高頻度に認められる。
- 関節液が少ないと認識されないこともある。
- 外側の滑膜ヒダはまれである。
- 大きな内側ヒダはタナ(shelf)と呼ばれ、膝蓋大腿関節に挟み込まれ、クリックや疼痛を来し、重度の場合にはロッキングを来たし、いわゆる「タナ障害」を発生する。
- 画像で肥厚した内側滑膜ヒダが見えても、必ずしも臨床症状に一致せず、MRIでのタナ障害の確定診断は困難。関節鏡を基準とした7研究492膝のメタ解析では、内側滑膜ヒダ障害に対するMRIの感度は0.77、特異度は0.58にとどまり、徒手検査(MPP test:感度0.90、特異度0.89)や超音波(感度0.90、特異度0.83)より低かった。動的超音波でヒダが大腿骨内側顆の上を滑る様子を観察する方法も報告されている。MRIでは、ほかに膝痛を説明する所見がなく、びまん性に肥厚・線維化したヒダ(周囲の滑膜炎や膝蓋骨・大腿骨顆部の軟骨びらんを伴うことがある)を認める場合にタナ障害を示唆します。治療はまず保存療法で、改善しない場合に関節鏡下切除が選択されます。
- MRIで内側滑膜ヒダは、横断像で内腔へ張り出す。T2強調像で低信号の索状・帯状物として見られる。
症例 40歳代女性 右膝の痛み

膝蓋下ヒダ(infrapatellar plica)
- 前十字靭帯の前方に位置し大腿脛骨関節腔を左右に振り分けるように存在し、膝蓋下脂肪体と顆間窩前方を連絡する。
- 膝蓋下脂肪体(Hoffa‘s fat pad)をつり上げる役割といわれる。
- 膝関節鏡施行時に高頻度で認められ、操作に支障をきたす場合は切除(穿破)することもある。
- 3つの滑膜ヒダのうちMRIで認識できる頻度は低い。
- 前十字靭帯の前方頭側をほぼ平行に走行する薄い索状物としてまれに見られる。
- 臨床的に問題となることは少ないが、まれにその腫脹により膝伸展障害をきたすことがある。
滑膜ヒダ(タナ)障害でよくある疑問(Q&A)
Q1. タナ障害の原因は?
ヒダ自体は多くの人にある正常構造で、ふだんは症状を出しません。膝の曲げ伸ばしのくり返しや打撲などでヒダに炎症が起こり、厚く硬くなると、膝蓋骨と大腿骨の間でこすれて痛みやひっかかりを起こすと考えられています(Al-Hadithy 2011)。
Q2. MRIでタナ障害は診断できますか?
ヒダの厚みや周りの滑膜炎は見えますが、症状と一致しないこともあり、MRIだけでの確定は難しいとされます(Stubbings 2014)。半月板損傷など、ほかの原因がないかを確かめる目的でも使われます。
Q3. 治るまでの期間は?手術は必要?
まず保存療法(安静・リハビリなど)を行い、総説では最長6か月ほど保存療法を行っても改善しない場合に関節鏡での切除を考える、とされています(Al-Hadithy 2011)。3か月の保存療法で改善しなかった例では、ヒダが太く、膝蓋骨裏の軟骨に接する割合が高かったと報告されています(Blanke 2021)。手術と保存療法を比べた6研究(527例)のメタ解析では、どちらも膝の機能が改善し、両者に有意な差はありませんでした(Franco 2025)。
関連記事:円板状半月板とは?症状(子どもの膝の痛み・ロッキング)とMRI画像診断、分類
参考文献
- Zidorn T. Classification of the suprapatellar septum considering ontogenetic development. Arthroscopy. 1992;8(4):459-64. PubMed
- García-Valtuille R, Abascal F, Cerezal L, et al. Anatomy and MR imaging appearances of synovial plicae of the knee. Radiographics. 2002;22(4):775-84. PubMed
- Stubbings N, Smith T. Diagnostic test accuracy of clinical and radiological assessments for medial patella plica syndrome: a systematic review and meta-analysis. Knee. 2014;21(2):486-90. PubMed
- Paczesny L, Kruczynski J. Medial plica syndrome of the knee: diagnosis with dynamic sonography. Radiology. 2009;251(2):439-46. PubMed
- Al-Hadithy N, Gikas P, Mahapatra AM, et al. Review article: Plica syndrome of the knee. J Orthop Surg (Hong Kong). 2011;19(3):354-8. PubMed
- Blanke F, Oehler N, Al Aidarous H, et al. Predictors for an unsuccessful conservative treatment of patients with medial patellar plica syndrome. Arch Orthop Trauma Surg. 2021;141(1):93-98. PubMed
- Franco P, Baumert P, Di Maria F, et al. Surgical and conservative management of medial plica syndrome: A systematic review and meta-analysis of functional outcomes. J Exp Orthop. 2025;12(4):e70473. PubMed
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