急性硬膜外血腫(acute epidural hematoma)

epidural hematoma

 

  • 頭蓋骨(頭蓋内板)と硬膜外層の間にできる血腫(密着した頭蓋骨と硬膜の間を剥がしてできる血腫)。
  • 硬膜動脈(中硬膜動脈が多い)や静脈洞の破綻により生じ、約半数に特徴的な意識清明期(lucid interval)がある。

※硬膜動脈は頭蓋骨に埋まった様な形で走行しているため頭蓋骨骨折により損傷し出血が起こる。

  • 90%に頭蓋骨骨折(線状骨折が主、時に陥没骨折)を合併し、骨折部直下に多い。頭蓋骨内板と硬膜が密に結合している2歳以下の乳幼児には少ない。
  • 血腫内もしくは近傍に気泡が認められれば開放骨折または副鼻腔骨折、側頭骨骨折を意味する。
  • 血腫は硬膜を頭蓋骨内板から剥がしながら広がるため、凸レンズ型で、頭蓋骨の縫合線を越えて広がることは少ない。
  • ただし、静脈洞損傷による血腫の場合は縫合線を越える。正中や大脳鎌やテントは越えて反対側やテント上下に広がることはあり。
  • 多くは片側性
  • 高吸収のなかの低吸収は血栓化していない急性出血の持続を疑うサイン(swirl sign)とされる。急性の出血は静脈洞からの出血でも低吸収との報告もある。
  • 好発部位は、側頭から頭頂部。後頭蓋窩では両者の癒着が強く硬膜外血腫は少ない。
  • 受傷直後に血腫を認めないか、少量でも時間経過とともに増大あり。後頭蓋窩の静脈洞損傷の場合には意識清明期が数日に及び、急変することがある。
  • 急性硬膜外血腫の反対側に急性硬膜下血腫や脳挫傷を伴うことが多い。
  • 血腫最大厚が1〜2cm以上、正中構造の偏位が5mm以上あり意識障害が進行する場合には、可及性速やかに手術をする必要がある。
  硬膜外血腫 硬膜下血腫
形態 凸レンズ型 三日月型
骨折 多い 少ない
脳挫傷 少ない 多い
主な出血源 中硬膜動脈、静脈洞、板間静脈 架橋静脈
縫合線との関係 縫合を超えない小脳テント上下に広がる 縫合を超える小脳テント上面に発生する

 

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急性硬膜外血腫の画像診断

CT
  • 凸レンズ型の高吸収域。時間経過とともに増大することがあるので、臨床的に悪化が見られた場合にはフォローが必要。
MRI
  • 臨床的に他の脳損傷の合併の可能性が低い場合には撮影する必要なし。
  • CTでの血腫の局在が硬膜外か下かの鑑別が困難な症例には有効
  • T2WIにて内方偏位した硬膜が線状の低信号として描出される。
動画で学ぶ急性硬膜外血腫 50歳代男性 頭部外傷
【診断】急性硬膜外血腫+頭蓋骨骨折、外傷性SAH、脳挫傷

ポイント画像

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キーワードは

  • 骨折を伴う。
  • 凸レンズ状の出血。

です。ただし、急性硬膜下血腫より頻度は遥かに少ないので、凸レンズ状の出血を見たらなんでも急性硬膜外血腫と記載するのではなく、臨床情報と併せて、硬膜下血腫の可能性も考えましょう。

急性硬膜外血腫で、高吸収と低吸収が混在する場合

出血した直後は中程度のCT値(55HU前後)であるが、ヘモグロビンが濃縮されてくるとCT値はどんどん上がっていく(Max 94HU)。

なので、外傷直後に周りより吸収値が低い血腫は、出血した直後で濃縮していないことを示唆する。つまり、まだ活動性の出血があるのではないかと推測するポイントとなる。(Radiology.1976 Dec;121:635-40)

 

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