脳梗塞のMRI-CT所見の経時的変化についてまとめました。
目次
脳梗塞のMRI-CT所見:経時的変化
発症からのCT、MRIの経時的な信号変化は下の図のようになります。
病期 | 病態 | DWI | ADC | T2 | CT |
発症直後 (0-1時間) |
(閉塞直後:灌流異常) | 所見なし(30分くらいで出現) | 変化なし | 所見なし | 所見なし |
超急性期 (1-24時間) |
細胞性浮腫 | 高信号(24時間以内は最終梗塞に向かって徐々に増大しうる) | 低下 | 所見なし(6-12時間以降高信号) | Early sign |
急性期 (1-7日間) |
細胞性浮腫+ 血管性浮腫 |
高信号 | 低下 | 高信号 | 低吸収 |
亜急性期 (1-4週間) |
マクロファージ、血管新生 | 高~等信号 | 低下~変化なし | 高信号 | 低吸収 |
PN | PN | 高信号 | FE | ||
浮腫軽減 | 等~低信号 | 変化なし~上昇 | 高信号 | 低吸収 | |
慢性期 (1ヶ月~) |
壊死、吸収→瘢痕化 | 低信号 | 上昇 | 高信号 | 髄液濃度 |
ポイントは
- 発症1時間以内ではDWIでもわからないことがあること。
- T2WIで高信号が出てくるのは発症24時間(6-12時間以上)経過してからであること。
- 亜急性期以降はADC値が上昇すること。
です。
これはなぜですか?
心原性塞栓のように太い動脈が詰まってしまう梗塞から、境界領域梗塞のように場合によっては弱い梗塞もあります。
これらは、同じ時間で同じ信号を取るわけではなく、当然強い梗塞の方が早く信号変化が出ます。
強い梗塞では発症から3時間程度で、弱い梗塞なら24時間以内に梗塞が完成すると言われています。
幅があるのはそのためです。
DWIとADCは脳梗塞が起こるとそれぞれ高信号、低信号になります。最終的にはそれぞれ、低信号、高信号へと変わっていきます。
ただし、ADCは7-10日後に正常化しますが、DWIは14日以上かかります。そのため、解離が生じます。
また7〜14日の間に、DWIもADCもあたかも正常(等信号)に見える時期があります。この時期はPN:pseudonormalizationと呼ばれます。
CTでもこの現症が見られ、発症2週間前後で血管性浮腫の消退に伴い、CTにおける低吸収域の濃度上昇による等吸収域化、不明瞭化を生じ、あたかも正常のように見えます。これをFE:fogging effectと呼びます。
脳梗塞の病期診断は、T2WI+DWI+ADCでできる!! ただし、例外に注意。

画像診断コンパクトナビ第2版を参考に改変。
症例 50歳代男性 超急性期脳梗塞の疑い
症例 60歳代女性 超急性期脳梗塞
症例 70歳代女性 急性期以降の脳梗塞
急性期脳梗塞のDWIのpitfall
・偽陰性がある。早期では信号変化が軽微なことがある。
・脳幹梗塞は一般的に遅れて高信号になる傾向あり。
・また稀に可逆性のDWIの高信号域あり。
超急性期脳梗塞のFLAIR像
・超急性期ではFLAIRでは信号なし、もしくは皮質の表層のみに軽微な信号変化を認めることがある。これを認めると発症から3時間以内と判定できる(Radiology 2010;257:782)
・これを利用すると、DWIよりも正確に3時間以内だと判定でき、血栓溶解療法の適応など、発症からの時計として利用できる。