先に結論:I期非小細胞肺癌の定位放射線治療(SBRT)

  • LKはドイツ語のLungenkrebsの略で肺癌のこと。カルテや画像レポートで使われる略語です
  • I期非小細胞肺癌のSBRTは局所制御90%前後と成績が良く、手術が難しい人の標準的な治療です
  • 治療後のCTでは肺炎のような影→収縮した線維化へ変わるのが普通で、跡形なく消えることはまれです。線維化の中の再発との区別が難しく、増大が続く・膨らむ形になるときはPETや生検を考えます
  • 治療後の影は半年以内に出て、1年以降や2年を超えても形が変わることがあります。12か月以降の増大が再発を疑ううえで最もよい単独の指標とされます
  • 合併症は放射線肺臓炎が最多で、時間がたってから出ることもあります。末梢の病変では肋骨骨折も起こり、骨転移と間違えないことが大切です

Ⅰ期非小細胞肺癌に対する定位放射線治療

・治療後、跡形なく消失する症例は少ない。治療後36か月までに99%の病変で周囲に何らかの変化が出たと報告されています(Dahele 2011)。

・普通は、肺炎様になった後、収縮性変化が残る。中にはdenseが大きな陰影が残り、LKとの画像での鑑別は困難なことがある。・系統的レビューでは、早期の変化は浸潤影やすりガラス影が主体で、晩期の線維化は治療後2年を超えても変化し続けることがある。増大する陰影などの高リスクCT所見があり、FDG-PETでSUVmax 5以上なら再発を疑うことが提案されている(Huang 2012)。

・治療成績は腫瘍の大きさと線量によって違いがあります。手術が難しい末梢のT1〜T2病変を対象とした北米の第2相試験では、3年の局所制御(原発巣と同じ肺葉内)は90.6%でした(Timmerman 2010)。

・日本の多施設前向き試験JCOG0403では、3年生存率は手術が難しい100例で59.9%、手術可能な64例で76.5%だった(Nagata 2015)。

・照射の強さ(生物学的等価線量)が高いほど局所制御が良いとする報告がある(具体的な線量は施設の治療方針による)。

・有害事象は放射線肺臓炎(radiation pneumonitis)が最多、他、肺胞出血、食道炎など。88研究・7,752例の統合解析では、グレード2以上の肺障害は9.1%、グレード3以上は1.8%(Zhao 2016)。

放射線肺臓炎の注意点

・時間がかなり経過したあとで出てくることがある。

・一旦消えた後、再び出てくることがある。

・治療前から間質性肺疾患(肺線維症など)がある人はリスクが高く、537例の検討では、グレード2以上の放射線肺臓炎の予測因子として間質性肺疾患のオッズ比は5.81、平均肺線量も有意でした(Glick 2018)。

・気管支や大血管に近い中心型の腫瘍は、重い有害事象が多く、末梢の腫瘍より慎重に扱います。第2相試験では、重い有害事象のない2年率が末梢で83%、中心型で54%でした(Timmerman 2006)。

・末梢型のLKでは肋骨骨折が起こることがある。骨転移と間違えないように。他には、胸壁に炎症が生じることがある。57研究・5,985例の統合解析では肋骨骨折6.3%、胸壁の痛み11.0%(Ma 2019)。腫瘍と胸壁の距離が近いほどリスクが高く(統合解析では16〜25mm未満)、日本の177例の検討では、CTで41例に肋骨骨折がみられ、そのうち胸壁の痛みがあったのは34.1%で、グレード1〜2でした。女性と、腫瘍と胸壁の距離が短いことが危険因子でした(Nambu 2013)。

手術が難しい人では標準的な治療であり、手術可能な人での比較は現在も臨床試験で検討されている。手術可能なI期の2つのランダム化試験(STARSとROSEL)を統合した解析(58例)では、3年の全生存率はSBRT群95%、手術群79%でしたが、症例数が少なく観察期間も短いため、追加の試験が必要とされています(Chang 2015)。

症例 80歳代男性(SBRT後に遅れて広がった放射線肺臓炎)

定位放射線治療後の遅発性放射線肺臓炎 CT 経過
引用:Matsumoto Y. Jpn J Radiol 2022 (Figure 9)

右上葉の肺腺癌にSBRTを行った症例のCTの経過です。治療後に放射線肺臓炎が出て、13か月のFDG-PETで腫瘍部の集積は消え、制御されたと判断されました。その後40か月で陰影がわずかに広がり、46か月で大きく広がりましたが、以後は目立った変化がなく、71か月の時点で再発なしと診断されています。治療から年単位でたってから濃度上昇が広がることがあり、再発と間違えないよう経過を追うことが大切です。(出典:Matsumoto Y. Jpn J Radiol 2022, Figure 9, CC BY 4.0)

症例 SBRT後の肋骨骨折(治療後5年と7年)

定位放射線治療後の肋骨骨折 CT
引用:Matsumoto Y. Jpn J Radiol 2022 (Figure 15)

胸壁に近い末梢の肺腫瘍にSBRTを行った2人の、治療後5年と7年のCTです。肋骨は折れたまま癒合しておらず、骨折部に濃い石灰化があります(赤矢印)。5年の症例では石灰化が骨折部の周りに広がって見えます。CTの時点で痛みはありませんでした。(出典:Matsumoto Y. Jpn J Radiol 2022, Figure 15, CC BY 4.0)

SBRT後のCTの時間経過

2年以上経過を追えた61例(68病変)の検討では、治療後6か月以内に54%の病変で周囲に変化がみられ、36か月後には99%に達しました。最初に気づかれるまでの中央値は17週で、25%は治療から1年以上たって現れ、47%は2年を超えても形や程度が変わり続けました(Dahele 2011)。系統的レビューでも、早期は浸潤影やすりガラス影、晩期は線維化が主体で、2年を超えて進むことがあるとされています(Huang 2012)。

時期の目安 よくある変化 読むときの注意
治療後〜6か月 浸潤影・すりガラス影(放射線肺臓炎) 照射部位の影は増えても、すぐに再発とは決めない
6か月〜2年 収縮を伴う線維化へ移る 前回と比べ、形が変わっていくかを追う
1年以降・2年超 新しい濃度上昇や、形の変化が出ることがある 12か月以降の増大は再発を疑う指標。ただし遅れて出る放射線肺臓炎との区別が必要

PETでは、治療直後は集積が上がることがあり、SUVmax 5以上は再発の予測に有用とされています(Huang 2012)。1回の画像だけで決めず、CT所見の組み合わせとPETを合わせ、必要なら生検を考えます。

治療後のCTで再発を疑う所見

線維化と再発を見分ける高リスク所見として、照射部位の陰影の増大、撮るたびの増大、12か月以降の増大、外へ膨らむ辺縁、直線的な辺縁の消失、air bronchogramの消失、頭尾方向への伸びが挙げられています。3つ以上そろうと感度・特異度とも90%を超え、12か月以降の増大が最もよい単独の指標でした(Huang 2013)。

あわせて読みたい:放射線治療後の画像変化まとめ

参考文献

  1. Nagata Y, Hiraoka M, Shibata T, et al. Prospective Trial of Stereotactic Body Radiation Therapy for Both Operable and Inoperable T1N0M0 Non-Small Cell Lung Cancer: Japan Clinical Oncology Group Study JCOG0403. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2015;93(5):989-96. PubMed
  2. Onishi H, Shirato H, Nagata Y, et al. Hypofractionated stereotactic radiotherapy (HypoFXSRT) for stage I non-small cell lung cancer: updated results of 257 patients in a Japanese multi-institutional study. J Thorac Oncol. 2007;2(7 Suppl 3):S94-100. PubMed
  3. Huang K, Dahele M, Senan S, et al. Radiographic changes after lung stereotactic ablative radiotherapy (SABR)–can we distinguish recurrence from fibrosis? A systematic review of the literature. Radiother Oncol. 2012;102(3):335-42. PubMed
  4. Timmerman R, Paulus R, Galvin J, et al. Stereotactic body radiation therapy for inoperable early stage lung cancer. JAMA. 2010;303(11):1070-6. PubMed
  5. Huang K, Senthi S, Palma DA, et al. High-risk CT features for detection of local recurrence after stereotactic ablative radiotherapy for lung cancer. Radiother Oncol. 2013;109(1):51-7. PubMed
  6. Zhao J, Yorke ED, Li L, et al. Simple Factors Associated With Radiation-Induced Lung Toxicity After Stereotactic Body Radiation Therapy of the Thorax: A Pooled Analysis of 88 Studies. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2016;95(5):1357-1366. PubMed
  7. Ma JT, Liu Y, Sun L, et al. Chest Wall Toxicity After Stereotactic Body Radiation Therapy: A Pooled Analysis of 57 Studies. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2019;103(4):843-850. PubMed
  8. Dahele M, Palma D, Lagerwaard F, et al. Radiological changes after stereotactic radiotherapy for stage I lung cancer. J Thorac Oncol. 2011;6(7):1221-1228. PubMed
  9. Glick D, Lyen S, Kandel S, et al. Impact of pretreatment interstitial lung disease on radiation pneumonitis and survival in patients treated with lung stereotactic body radiation therapy. Clin Lung Cancer. 2018;19(2):e219-e226. PubMed
  10. Timmerman R, McGarry R, Yiannoutsos C, et al. Excessive toxicity when treating central tumors in a phase II study of stereotactic body radiation therapy for medically inoperable early-stage lung cancer. J Clin Oncol. 2006;24(30):4833-4839. PubMed
  11. Nambu A, Onishi H, Aoki S, et al. Rib fracture after stereotactic radiotherapy for primary lung cancer: prevalence, degree of clinical symptoms, and risk factors. BMC Cancer. 2013;13:68. PubMed
  12. Chang JY, Senan S, Paul MA, et al. Stereotactic ablative radiotherapy versus lobectomy for operable stage I non-small-cell lung cancer: a pooled analysis of two randomised trials. Lancet Oncol. 2015;16(6):630-637. PubMed

間違えやすいポイント

  • 陰影が増えた=再発、と決めない:治療後の変化は、半年以内に目立つ放射線肺臓炎から、1年以降や2年を超える線維化の変化まで長く続きます(Dahele 2011)
  • 1つの所見だけで判断しない:再発を疑う高リスク所見が3つ以上あると感度・特異度とも90%を超えました。12か月以降の増大が最もよい単独の指標でした(Huang 2013)
  • 肋骨骨折を骨転移と取り違えない:治療した腫瘍に近い肋骨に、治療から年単位でたってから骨折が出ることがあります。胸壁の痛みがない例も多くあります(Nambu 2013)
  • 間質性肺疾患がある肺では、放射線肺臓炎が強く出ることがあります(Glick 2018)

SBRT後のCTでよくある疑問(Q&A)

Q1. 治療後の影が大きくなりました。再発ですか。
A. 半年以内なら放射線肺臓炎による変化のことが多く、時間とともに形が変わります。12か月以降の増大、外へ膨らむ辺縁、air bronchogramの消失などが重なると、再発を疑います(Huang 2013)。判断は主治医が画像の経過とPETなどを合わせて行います。

Q2. 影はいつまで変化しますか。
A. 2年以上経過を追った検討で、47%の病変は2年を超えても形や程度が変わり続けました(Dahele 2011)。

Q3. 放射線肺臓炎はどのくらいの人に起こりますか。
A. 88研究・7,752例の統合解析では、グレード2以上が9.1%、グレード3以上が1.8%でした(Zhao 2016)。咳、息切れ、発熱などが続く場合は、治療を受けた医療機関に相談してください。

Q4. 手術とどちらがよいですか。
A. 手術が難しい人ではSBRTが標準的な治療です(Nagata 2015)。手術ができる人での比較はまだ症例数が少なく、追加の試験が必要とされています(Chang 2015)。治療の選択は、全身の状態や腫瘍の場所を踏まえて主治医と相談してください。

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