
先に結論:LLM(大規模言語モデル)は「文字にした所見から鑑別を挙げる」のは得意、「画像そのものを読む」のはまだ発展途上。最終判断と所見の確認は人が行う
| 項目 | 研究でわかっていること |
|---|---|
| 病歴+所見(文字)から診断 | Radiology誌「Diagnosis Please」322〜324問で第1診断の正答率は約34〜65%。条件・モデル・時期で大きく変わる |
| 病歴+キー画像から診断 | 所見を文字で渡したときより明らかに低い(約25〜30%) |
| 放射線科医との比較 | 画像入力の研究では放射線科医61%に対し、LLMは29〜49% |
| 入力の工夫 | 情報を整理してから診断させる、事前確率(クイズ症例であること)を伝えると正答率が上がる |
| 注意点 | 正解でも根拠の説明が誤っていることがある。ハルシネーション(もっともらしい誤り)、架空の文献、患者情報の扱い |
LLM(大規模言語モデル)とは
LLM(large language model)は、大量の文章から次に来る言葉を予測するように学習したAIで、質問に文章で答えられます。近年は画像も入力できるもの(マルチモーダルLLM、vision-language model)が増えました。
放射線科の領域では、診断の補助、レポートの作成や要約、患者説明などへの応用が報告されています。ChatGPTの放射線科領域での研究44本を集めた系統的レビューでは、37本(84.1%)が高い性能を示した一方、偏った回答、誤情報(ハルシネーション)、不適切な引用や架空の文献、患者のプライバシーのリスクが課題として挙げられています(Keshavarz 2024)。
医師・医学生がふだんどのAIを使っているかは医師・医学生1,158人に聞いた「使っているAI」にまとめています。
「Diagnosis Please」を使った研究でわかったこと
Radiology誌の「Diagnosis Please」は、病歴と画像から診断を当てる専門医向けの月例クイズです。稀な疾患や典型的でない像が多く、LLMの診断力を比べる題材としてよく使われています。
所見を文字で渡した場合
1998〜2023年の324問について、提出者が書いた病歴と画像所見(文字)を3つのLLMに渡し、上位3つの鑑別を挙げさせた研究では、第1診断の正答率は41.0%、54.0%、33.9%、上位3つまで含めると49.4%、62.0%、41.0%で、モデル間に有意差がありました(Sonoda 2024)。
ここで大事なのは、入力された所見が正確であることが前提という点です。著者らも「正確な評価と言葉にした所見を与えれば」補助になりうる、という書き方をしています。
画像そのものを渡した場合
同じ322問で、(1)病歴のみ、(2)病歴+所見(文字)、(3)病歴+キー画像、の3条件を比べた研究では、2つのモデルの正答率はそれぞれ(1)18.0%・21.4%、(2)62.4%・64.9%、(3)24.8%・30.1%でした(Kurokawa 2024)。
画像を加えると病歴のみより有意に上がりますが、所見を人が文字にしたときには遠く及ばないという結果です。
別の研究では、2008〜2023年の190問で画像を直接入力したところ、2つのLLMの正答率は29〜49%(設定により変化)、8人の専門医の正答率は61%で、多くの領域で放射線科医の方が上回りました(Suh 2024)。
正解していても「理由」が誤っていることがある
NEJMの画像クイズ(選択式)では、画像入力のLLMの正答率は81.6%で、医師の77.8%と同程度でした。しかし正解した問題の35.5%で根拠の説明に誤りがあり、とくに画像の理解の誤りが27.2%を占めました(Jin 2024)。
選択肢がある問題での正答率は、そのまま臨床での信頼性を意味しません。
入力のしかたで成績が変わる
LLMの答えは、渡し方(プロンプト)によって変わります。
- 先に情報を整理させてから診断させる:病歴と画像所見を項目ごとに整理させたあとで診断させると、第1診断の正答率が56.5%から60.6%に上がりました(Sonoda 2025)。
- 事前確率を伝える:「クイズの症例」と伝えると64.9%から70.2%に上がり、「プライマリケアの症例」と伝えると59.9%に下がりました(Fukushima 2025)。稀な疾患が多い前提かどうかで、答えの重みづけが変わることを示しています。
これは人の読影と同じで、検査前確率(どんな集団の患者か)を意識することの大切さを示す結果ともいえます。
使いどころと限界
| 向いている使い方 | 注意が要る使い方 | |
|---|---|---|
| 診断 | 自分でとった所見を文字にして、鑑別の漏れがないか確かめる | 画像だけを渡して所見をとらせる、答えをそのまま採用する |
| 知識 | 疾患の概要や鑑別の整理のきっかけ | 数値・基準・文献をそのまま引用する(原典で確かめる) |
| 文章 | レポートの言い回しの整理 | 所見を足したり消したりしていないか確認せずに使う |
| 情報管理 | 個人が特定できない形での入力 | 氏名・ID・画像に焼き込まれた個人情報を外部のサービスへ入力する |
研究で使われたモデルは研究時点の版で、製品の優劣は版や時期で入れ替わります。特定の製品を選ぶ根拠として読むのではなく、「文字の所見には強い・画像そのものには弱い・理由づけは要確認」という傾向として理解するのが安全です。
読影の基本の流れは頭部CTの見方まとめも参考にしてください。
よくある疑問(Q&A)
Q. LLMは放射線科医の代わりになりますか?
現時点の研究では、画像を直接読む力は放射線科医に及ばず(Suh 2024)、正解でも理由が誤っていることがあります(Jin 2024)。所見をとり、最終的に判断するのは人です。
Q. 研修医が使うならどう使うのがよいですか?
自分で所見をとって鑑別を考えたあとに、「見落としている鑑別はないか」を確かめる使い方が研究結果とも合っています。答えや文献は原典で確かめ、指導医と確認しましょう。
Q. 正答率の数字はどこまで当てはまりますか?
Diagnosis Pleaseはクイズで、稀な疾患が多く、日常診療の症例とは構成が違います。モデルの更新も速いため、数字は研究時点・その条件での値として読む必要があります。
参考文献
- Sonoda Y, Kurokawa R, Nakamura Y, et al. Diagnostic performances of GPT-4o, Claude 3 Opus, and Gemini 1.5 Pro in “Diagnosis Please” cases. Jpn J Radiol. 2024;42(11):1231-1235. PubMed
- Kurokawa R, Ohizumi Y, Kanzawa J, et al. Diagnostic performances of Claude 3 Opus and Claude 3.5 Sonnet from patient history and key images in Radiology’s “Diagnosis Please” cases. Jpn J Radiol. 2024;42(12):1399-1402. PubMed
- Suh PS, Shim WH, Suh CH, et al. Comparing Diagnostic Accuracy of Radiologists versus GPT-4V and Gemini Pro Vision Using Image Inputs from Diagnosis Please Cases. Radiology. 2024;312(1):e240273. PubMed
- Jin Q, Chen F, Zhou Y, et al. Hidden flaws behind expert-level accuracy of multimodal GPT-4 vision in medicine. NPJ Digit Med. 2024;7(1):190. PubMed
- Sonoda Y, Kurokawa R, Hagiwara A, et al. Structured clinical reasoning prompt enhances LLM’s diagnostic capabilities in diagnosis please quiz cases. Jpn J Radiol. 2025;43(4):586-592. PubMed
- Fukushima T, Kurokawa R, Hagiwara A, et al. Influence of prior probability information on large language model performance in radiological diagnosis. Jpn J Radiol. 2025;43(6):934-939. PubMed
- Keshavarz P, Bagherieh S, Nabipoorashrafi SA, et al. ChatGPT in radiology: A systematic review of performance, pitfalls, and future perspectives. Diagn Interv Imaging. 2024;105(7-8):251-265. PubMed
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