上腸間膜動脈(SMA)が閉塞してしまう病態には、
- 上腸間膜動脈塞栓症(SMA塞栓症)
- 上腸間膜動脈血栓症(SMA血栓症)
があります。
それぞれの違い、及び画像所見についてまとめました。
上腸間膜動脈塞栓症(SMA塞栓症)
- 血管閉塞による腸管壊死の50%を占める。
- 心疾患(心房細動、弁膜症、心筋梗塞)に起因し、虚血性腸炎を生じる。
- SMA起始部から3~8cm末梢の、中結腸動脈分岐後に閉塞することが多く、横行結腸や空腸は侵されないことが多い。
- 急激な腹痛、嘔気、嘔吐、腹部膨満、下血などの急性腹症症状を呈することが多い。
- 治療はヘパリンなどによる全身療法、血管内治療による血栓溶解療法。なお、腸管壊死が生じた場合は、早期に外科的切除が必要。
- 急性腹症の中で、最も死亡率が高く、65〜80%とされる。頻度は低く、急性腹症の1.5%とされる。
上腸間膜動脈血栓症(SMA血栓症)
- 血管閉塞による腸管壊死の15-25%を占める。
- 動脈硬化によるSMA自体の変性により詰まる。
- SMA起始部に血栓性閉塞が起こることが多く塞栓症より広範な(小腸、上行ならびに横行結腸)領域が侵されやすい。
SMA塞栓症とSMA血栓症の違い
SMAの詰まる部位 | 虚血(壊死)に至る腸管 | |
SMA塞栓症 | 局所的 | 起始部から 3~8cm末梢 |
SMA血栓症 | より広い | 起始部 |
こちらにより詳しく解説しました。
→上腸間膜動脈閉塞症とは?血栓症・塞栓症、CT画像、治療まとめ!
SMA閉塞の画像所見
- 血管の染まり、腸管の染まりに着目する。
- 非造影、造影(動脈相、遅延相)の3相が必須。
- 非造影にて壊死を起こした腸管の壁内出血の検出や血栓の評価、腸管血流の評価を行う。
- 動脈相は血管の閉塞を反映した造影欠損像の検出に有効。
- 遅延相は腸管血流評価のために必要。
- 血管では、腹腔動脈(Celiac artery)、上腸間膜動脈(SMA:Superior mesenteric artery)、下腸間膜動脈(IMA:Inferior mesenteric artery)、上腸間膜静脈(SMV:Superior mesenteric vein)を追う。場合によっては、これらの血管の分岐まで観察。
- smaller SMV signがみられることあり。
- 新しい血栓の場合には単純CTで高吸収(高濃度)に描出されるから、造影することなく血栓と診断可能。
- しかし、ある程度時間を経過した血栓や塞栓の場合には、区別は単純CTでは困難。
- SMA近位での閉塞の場合、腸管血流は側副血行路により保たれていることもあり、腸管の虚血性変化(浮腫や周囲脂肪織の濃度上昇、腹水など)の程度はさまざまである。
- 重症例では、高度の虚血から壊死に陥り、壁内や門脈内にガス像が出現する。
- 腸管が壊死に陥ると、粘膜面の破綻に伴って腸管のairが壁内へ侵入する。続く嫌気性菌感染が壁内気腫を増悪させる。壁内気腫は軽度の場合は正常像との鑑別がときに困難であり、腸管壁に薄くairの分布が診断に重要である。
- 肝内門脈ガスは血流に乗って辺縁部かつ腹側(CTは背臥位のため)に認められることが多い。
SMA血栓症とSMA塞栓症の説明が入れ替わっていませんか?
名前が公開される可能性があるのでペンネームで失礼します。
コメントありがとうございます。
どの部分でしょうか?
少し見やすく修正しました。