咳・痰への救急治療、初期対応

急性(<3週間)ならば

急性ならば、
上気道炎を中心として考える。(咽頭炎、扁桃炎、副鼻腔炎、中耳炎、喉頭蓋炎)
下気道炎(気管支炎、肺炎、胸膜炎、膿胸、肺膿瘍)
・左心不全
・肺気腫
・逆流性食道炎
・薬物性(ACE阻害薬など)

慢性(>3週間)ならば

胸部レントゲンにて異常がなければ、
・咳喘息
・アトピー性咳嗽
・副鼻腔気管支症候群
 が3大原因。

※欧米では、後鼻漏症候群、咳喘息、逆流性食道炎 が3大原因といわれる
※その他、感冒後咳嗽COPD、ACE阻害薬、結核、気管支に浸潤する癌などを考える。

問診すべきこと

▶痰の有無、性状は?
・白色:アレルギー性、慢性気管支炎、感染症
・黄~緑:副鼻腔気管支症候群、慢性気管支炎(感染合併)、感染症
・泡沫ピンク色:肺水腫
・血痰:肺炎、肺癌、結核、気管支拡張症、肺梗塞

▶咳の出る時間は?
・夜間~早朝増悪:気管支喘息、咳喘息
・0時〜3時:心不全
・日中主体:逆流性食道炎、心因性
・起床〜午前:感染
・一日中:ACE-Ⅰ

▶その他キーワード
・咳払い:亜急性細菌性副鼻腔炎、後鼻漏
・誤嚥:誤嚥性肺炎、気道内異物
・先行する感冒:感冒後遷延性咳嗽
・胸やけ:逆流性食道炎
・鼻症状:鼻後漏、副鼻腔気管支症候群
・アトピー素因:アトピー咳嗽、咳喘息
・喫煙:COPD、肺炎
・深呼吸での咳:間質性肺炎、胸膜炎、気胸
・薬剤性:ACE阻害薬、β blocker
・鳥飼育:オーム病、鳥飼病
・循環型風呂:レジオネラ
・心理的ストレス:心因性咳嗽
・咳の後の嘔吐→百日咳
・体重減少、寝汗、微熱→結核
・胸痛:気胸、胸膜炎、肺梗塞
・息切れ:COPD、喘息、胸水、無気肺

診察すべきこと

・Vital:体温とSpO2は重要。
・口腔内:扁桃腺の腫大、白苔の有無。
・頚部リンパ節:腫脹の有無。
・内頚静脈:怒張の有無。
・肺音・心音はどうか。
・小児の場合は耳の診察もする。

検査すべきこと

・採血・・・必要と判断するなら。WBC,CRP。感染が疑われ、入院適応あるなら血液培養2セット。
・動脈血ガス
・胸部単純X線
・胸部CT
・喀痰のグラム染色・培養(Tb s/oならZiehl-Neelsen染色)
・インフルエンザ迅速キット
・痰細胞診、肺機能検査、尿中肺炎球菌抗原、マイコプラズマ抗体、百日咳菌抗体、IgE抗体、誘発喀痰中好酸球(咳喘息、アトピー咳)は必要に応じて実施。

各論① 急性気管支炎

【診断】
・問診・診察:咳、痰、発熱、肺音清明など
・血液:炎症所見
・胸部X線:肺炎像(-)
※多いのはほとんどいわゆる風邪(感冒)

▶原因を推定し、治療。

・インフルエンザ→抗インフルエンザ薬
・インフルエンザ以外のウイルス→対症療法
・非ウイルス(細菌など)→抗生物質

急性気管支炎の治療
①インフルエンザの場合

タミフル®(75mg) 2CP分2経口 5日分

※10歳以上の未成年処方不可
or
リレンザ® (5mg/ブリスター) 2ブリスター1日2回5日分 ※喘息、5歳未満には使用不可。気管支攣縮の副作用あるため。+カロナール®(200mg)6T分3経口5日分
※これらはインフルエンザ発症後48時間以内に成人患者に投与する。

②ウイルス(≠インフルエンザ)による場合

いわゆる感冒(鼻炎、咽頭痛、下気道炎)の場合
PL顆粒®(1g/包)4包分4 経口3日分
※PL=アセトアミノフェン+サリチル酸アミド(=解熱薬)+カフェイン+抗ヒスタミン薬(=鼻水、くしゃみに) なので、咳を止める作用なし。

高熱のとき
ボルタレン®25mg or 50mg 坐薬頓用

鼻汁あるとき
トーク®点鼻薬 1回2-3滴1日数回点鼻(血管収縮作用)

咽頭痛があるとき
トランサミン®250mg 3CP分3経口3日分
SPトローチ明治®0.25mg 6T分6経口3日分
イソジンガーグル®1日数回うがい

咳が強いとき
レスプレン®(20mg)3T分3経口3日間
or
リン酸コデイン® 20mg経口 頓服

咳が止まらない痰のからむ若めの人に(例)
メジコン®15mg 6T分3 ※眠気の副作用
ダーゼン®10mg3T分3
ムコダイン®500mg3T分3  以上、朝夕+眠前
+
コデインリン酸塩散1%6g分3 ※便秘の副作用
マグラックス330mg3T分3
+
ジスロマック250mg2T分1

③非ウイルス性の場合

 

若年者には
クラリシッド®200mg2T分2経口7日間

高齢者には
ジェニナック®200mg2T分1経口7日間
カロナール®200mg6T分3経口7日間

※ジェニナックは1剤で定型肺炎と非定型肺炎の両方をカバーする利点あり。ただし、ガイドラインでは薦められていない。

 

各論② 市中肺炎

肺炎の頁参照

各論③ 後鼻漏症候群

・副鼻腔炎や鼻炎に伴う鼻汁が咽頭を刺激することで咳が起こる。
慢性の咳で最も多い
・患者は鼻汁分泌を自覚していないこともある。

【治療】第一世代の抗ヒスタミン薬が有効。
クレマスチン(タベジール®)2mg/日 分2 経口

各論④ 咳喘息

・咳を主体とした気管支喘息を咳喘息(cough variant asthma)という。
※気管支喘息の三徴は呼吸困難・咳・喘鳴

・必ずしも喘鳴を伴わない。

【治療】
フルチカゾン(フルタイドディスカス®)1回100μg1日2吸入とか、アドエア100ディスカス®60吸入(β2 stim+ステロイド)

※咳喘息の診断基準
・確定診断はメタコリン負荷試験であるが、次の基準もあり。
▶必須項目
1.臨床症状
8週間以上持続する乾性咳
②喘鳴や呼吸困難を伴わない。
2. 理学的所見:聴診上ラ音は認めなく、正常。
3. 気道過敏性の亢進
4. 肺機能検査:一般に肺機能検査は正常であるが、末梢気道閉塞は高率に認め気管支拡張薬に可逆性がある。
5. β2刺激薬やテオフィリン製剤などの気管支拡張薬やステロイド薬が有効である。

参考項目

1.咳は夜間に多く、冷気吸入や運動で誘発される。
2.アレルギー性疾患の既往や家族歴を認めることが多い。
3.末梢血好酸球の増加や血清IgE高値を認めることが多い。
4.DSCG(disodium cromoglycate)や経口抗アレルギー薬が有効。
5.一般の麻薬性、非麻薬性の鎮咳薬は無効であることが多い。

除外項目:咳の原因となる他の心肺疾患や副鼻腔疾患がない。

各論⑤ 逆流性食道炎

・胸焼け、胃酸のこみ上げ、背部痛、咽頭痛があることもあるが、咳以外症状ないときもある。

【治療】
・ランソプラゾール(タケプロン®)30mg/日 経口

各論⑥ アトピー咳嗽

アトピー咳漱

1 喘鳴や呼吸困難を伴わない乾性咳嗽が8週間(3週間)以上持続
2 気管支拡張薬が無効
3 アトピー素因を示唆する所見または喀痰中好酸球増加を認める
4 受容体拮抗薬または/および吸入ステロイド薬にて咳嗽発作が消失

・アトピー素因を示唆する所見:末梢血好酸球増加、血清IgE値の上昇、アレルゲン皮内テスト陽性など

・咳喘息・アトピー咳漱:喀痰に好酸球を多く含む

・副鼻腔炎気管支症候群:喀痰に好中球を多く含む

・アレルゲン:カモガヤは(初夏の)咳が主、ハンノキも咳、ただしスギは咳でない

【治療】
ヒスタミンH1拮抗薬+吸入ステロイド

 

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