CTスキャンの検査には、
- 造影剤を用いない単純CT検査
- 造影剤を用いる造影CT検査
の2つがあります。
この造影剤は、ヨード造影剤といい、静脈注射されます。
当然メリットがあるから造影剤を用いるのですが、そもそもこの造影剤を用いる目的とは何でしょうか?
そこで今回は、CT造影剤を用いる目的・単純CTとの違いを部位別に解説しました。
CT造影剤を用いる目的は?
造影剤を用いることで副作用が起こることがあります。
ですので、わざわざ造影剤を用いてCTスキャン検査を行うのは、それを上回るメリットがある場合に限ります。
ではどのような場合に造影剤を用いたCT検査が行われるのでしょうか。
CT検査は、主に
- 頭部CT
- 胸部CT
- 腹部CT
- 関節CT、四肢CT、骨盤骨CT、椎体CT
に分けられます。
それぞれどのような場合に造影剤を用いるのか1つひとつ見ていきましょう。
頭部CTで造影剤を用いる目的は?
頭部はCTスキャンで最も撮影されている部位です。
頭部CTを撮影する際には、通常、造影剤は使用されません。
むしろ造影剤を用いることで、頭部CTが強い脳出血が見えにくくなることもあります。
また、動脈瘤のチェックには通常、MRI装置を用いた脳MRA検査が行われます。
ですので、頭部CTで造影剤を用いるのは非常に特殊な場合です。
- ペースメーカーなどがありMRI検査を行うことができない人。
- 動脈瘤・解離などの血管性病変をMRI/MRA検査と併せて評価したい場合。
などに限られます。
ペースメーカーなどがあり、MRI検査が禁忌の場合は、代替検査として造影CT検査が行われることがあります。
主に、
- 脳腫瘍、中でも脳転移(転移性脳腫瘍)の有無
をチェックすることが目的となります。
ただし、造影CTの場合、造影MRIに比べて腫瘍の発見率は低くなります。
ですので、MRIが禁忌でない人で、スクリーニング目的などで頭部の造影CTが撮影されることは通常ありません。
症例 頭部造影CT 70歳代男性 肺がん
ペースメーカーがあり、MRI検査ができない患者さんでした。
左頭頂葉の皮質下白質に造影効果を有する結節を認めています。
転移性脳腫瘍と診断されました。
胸部CTで造影剤を用いる目的は?
胸部CT検査も、通常、造影剤を用いることはありません。
ですので、スクリーニング目的で胸部CTを行う際は通常単純CTが撮影されます。
造影剤を用いた検査が行われるのは、
- 血管の病気(大動脈解離、大動脈瘤、肺動脈血栓塞栓など)が疑われる場合。
- 胸部レントゲンで肺腫瘍の可能性が指摘されている場合。
- 胸部単純CTで腫瘤が指摘されている場合。(造影効果の有無をチェックする場合)
などに限られます。
特に血管の病気では、造影剤を用いることがむしろ重要で、大動脈解離、肺動脈血栓塞栓などは、造影剤を用いた検査でないと診断できないこともしばしばあります。
腹部CTで造影剤を用いる目的は?
造影剤を用いるメリットとして、コントラストがついて病変が見やすくなるという点があります。
このメリットを最も受けることができるのが腹部CTです。
ですので、腹痛の精査などでも必要に応じて造影CTが行われます。
またダイナミックCTと言って、幾つかの相に分けて撮影することで、腫瘍などの血流の評価を行う目的で使われます。
- 腹痛の精査
- 腹部の腫瘍の精査(肝臓がん、膵臓がん、腎臓がんなど)
- 腸管虚血の有無
- 血管病変(上腸間膜動脈閉塞症、上腸間膜動脈解離、腹部大動脈解離、腹部大動脈瘤など)
と言った広い適応で、腹部CTが撮影されます。
ただし、何でもかんでも造影CTを行えばいいわけではありません。
胆嚢結石、胆管結石、尿管結石などは造影剤を用いることで見えにくくなることもありますし、何より造影剤で副作用を起こすこともあります。
造影剤を用いるメリットが、デメリットを上回ると診断された場合のみ適応となります。
症例 40歳代 男性 B型肝炎
肝右葉前区域に早期に染まり、平衡相でwashoutされる腫瘤を認めています。
内部に脂肪を含有している点からも肝細胞癌を疑う所見です。
関節CT、四肢CT、骨盤骨CTで造影剤を用いる目的は?
これらのCT検査では、通常骨の状態をチェックするものですので、造影剤の適応になりません。
造影剤を用いるとすると、
- 血管損傷など血管の状態を見たい場合
- 腫瘍が指摘されておりその血流状態や骨との関係を見たい場合
などが挙げられます。
最後に
造影剤を用いた造影CT検査は、用いない単純CT検査よりも優れている!!
と思い込んでいる人がいますが、一概にそうとはいえずケースバイケースなのです。
(同様に、MRI検査はCT検査よりも優れている!と思い込んでいる人がいますが、こちらもケースバイケースです。)
単純CT・造影CTそれぞれに得意不得意が(そしてMRI検査にも得意不得意が)ありますので、その点に注意が必要です。