先に結論:壊死性外耳道炎(頭蓋底骨髄炎)
- 壊死性外耳道炎は高齢の糖尿病患者・免疫不全者に起こる、主に緑膿菌による重い外耳道炎で、側頭骨・頭蓋底の骨髄炎へ広がります
- 治りにくい耳痛・耳漏、外耳道の肉芽が典型で、進むと顔面神経や下位脳神経(IX・X・XI)の麻痺を起こし、予後が悪くなります
- CTで骨破壊、MRIで頭蓋底・側頭下窩への軟部組織の広がりと骨髄の信号変化を評価し、上咽頭癌など腫瘍との区別にも注意します
- 治りにくい外耳炎では、見た目や画像が似る外耳道癌を生検で除外することも考えます
壊死性外耳道炎
・高齢者で、糖尿病患者、免疫不全患者に生じやすい。
・緑膿菌、黄色ブドウ球菌、真菌感染による外耳道炎。外耳道の骨・軟骨接合部から生じる。
・症状は外耳道炎が広範囲におよび、耳漏、疼痛。
・外耳道に肉芽形成→側頭骨内に進展すると顔面神経麻痺や骨髄炎を生じ、顎関節痛をきたす。
・劇症型では、顔面神経や脳神経(Ⅸ、X、XI)に異常をきたす事がある。予後不良因子はこの脳神経障害である。
・治療は、糖尿病のコントロールと抗菌薬の長期全身投与が中心(系統的レビューでは投与期間中央値7.2週)。高圧酸素療法や手術の有効性・適応を示す質の高いエビデンスは乏しい。
・再発することがあり、治療後も経過観察が必要。・2274例を集めた系統的レビューでは、患者の84%が糖尿病、耳痛はほぼ全例(96%)にあり、緑膿菌が検出されたのは62%で、14%は菌が検出されなかった。治療失敗は22%、再発は7%であった。緑膿菌以外(真菌を含む)の原因もあるため、培養陰性でも本症を否定しない。
・死亡率:系統的レビューでは、1年時点の疾患特異的死亡率は2%でした(Takata 2023)。
悪性外耳道炎の診断基準(定義)
英国のDelphi合意では、①耳痛と耳漏(または耳漏の既往)、②外耳道の肉芽または炎症、③疑わしければ組織で悪性腫瘍を除外、④画像所見(CTで外耳道の骨びらんと軟部組織の炎症、またはMRIで側頭骨の骨髄浮腫)をすべて満たすものを確定例としています。画像所見がなくても、免疫不全・夜間痛・炎症反応の上昇・2週間を超える局所治療で改善しない、のいずれかがあれば疑い例として扱います(Hodgson 2023)。
壊死性外耳道炎の画像所見
・外耳道は腫脹し狭小化することあり。
・CTでは、骨髄炎を示唆するような骨破壊像の有無、膿瘍の有無をチェック。初診時の小さな皮質骨びらんはCTで捉えやすいが、骨びらんは治癒後も正常化しない。側頭下窩の軟部組織変化や骨髄内の変化、硬膜の造影効果はMRIの方が評価しやすい。
・骨シンチやガリウムシンチで、骨破壊や炎症の範囲を同定する。
耳痛の鑑別診断
- 中耳炎
- 外耳道炎
- 異物
- 外傷
- 壊死性外耳道炎
- 乳様突起炎
- 鼓膜穿孔、耳小骨脱臼を伴う中耳炎
- 咽後膿瘍/扁桃周囲膿瘍
外耳炎・外耳道癌との違い
通常の外耳炎は外耳道の皮膚の腫れにとどまり、画像検査が不要なことが多い病気です。一方、外耳道癌44例のうち18例は当初誤診され、中耳炎とされたのが6例、外耳炎が5例でした。血性耳漏と耳痛があり、CTで側頭骨のびらんがあれば悪性腫瘍を強く疑います(Zhang 2013)。
治りにくい耳の痛みや耳だれがあれば、耳鼻咽喉科を受診してください。
耳かきの習慣と外耳道癌:利き手側に多いという報告
外耳道癌(多くは扁平上皮癌)はまれな腫瘍で、症状が外耳炎や中耳炎とよく似るため診断が遅れがちです。危険因子として、過去の放射線治療・慢性の耳の病気・耳かきの習慣が挙げられています(Lovin 2019)。
- 日本の外耳道扁平上皮癌68例の検討では、右側が52例、左側が16例と右側に有意に多くみられました。利き手を確認できた34例では、右利き29例のうち27例が右側、左利き3例はすべて左側の発生で、多くは利き手と同じ側でした。ほとんどの患者に、病気の側のかゆみと習慣的な耳かきがありました(Tsunoda 2017)。
- 著者らは、耳かきのような外耳道への機械的な刺激が発癌に関わる可能性を指摘しています。日本では耳かきが広く行われている習慣で、細かい操作が必要なため利き手側で行うことが多いと考えられています(Tsunoda 2017)。
画像では外耳道の軟部組織の肥厚と骨のびらんが外耳炎・悪性外耳道炎・外耳道癌に共通してみられることがあり、画像だけでの区別は難しいことがあります。治りにくい片側の耳漏・耳痛で骨のびらんがあるときは、問診で耳かきの習慣と利き手を聞いておくと、外耳道癌を鑑別に残すきっかけになります。外耳道癌の広がり(病期)は画像で評価されるため、骨びらんの範囲や周囲への進展をレポートに具体的に書くことも大切です(Lovin 2019)。
症例 70歳代男性 2週間続く右耳痛と耳漏(糖尿病あり)

引用:Radiopaedia(Necrotizing otitis externa)
CT冠状断(骨条件)で、右顎関節周囲の骨が不整に破壊されており、正常な形を保つ左の下顎頭(画像の右側)と比べて、右では関節の輪郭が失われています。本例では右外耳道の天蓋や鼓室蓋、錐体尖、蝶形骨などの頭蓋底にも骨びらんが及び、緑膿菌による頭蓋底骨髄炎を伴っていました。
関連記事:外耳道狭窄・閉塞と耳小骨奇形の関係
あわせて読みたい:急性中耳炎の原因・症状・CT画像と治療法を解説
参考文献
- Carfrae MJ, Kesser BW. Malignant otitis externa. Otolaryngol Clin North Am. 2008;41(3):537-49. PubMed
- Grandis JR, Curtin HD, Yu VL. Necrotizing (malignant) external otitis: prospective comparison of CT and MR imaging in diagnosis and follow-up. Radiology. 1995;196(2):499-504. PubMed
- Takata J, Hopkins M, Alexander V, et al. Systematic review of the diagnosis and management of necrotising otitis externa: Highlighting the need for high-quality research. Clin Otolaryngol. 2023;48(3):381-394. PubMed
- Vaidyanathan S, Lingam RK. Imaging of Acute and Chronic Skull Base Infection. Neuroimaging Clin N Am. 2021;31(4):571-598. PubMed
- Lo ES, Kwok HM, Pan NY. Imaging spectrum and complications of otogenic infections: insights into delayed diagnosis. Br J Radiol. 2024;97(1156):726-733. PubMed
- Hodgson SH, Khan MM, Patrick-Smith M, et al. UK consensus definitions for necrotising otitis externa: a Delphi study. BMJ Open. 2023;13(2):e061349. PubMed
- Zhang T, Dai C, Wang Z. The misdiagnosis of external auditory canal carcinoma. Eur Arch Otorhinolaryngol. 2013;270(5):1607-13. PubMed
- Lovin BD, Gidley PW. Squamous cell carcinoma of the temporal bone: A current review. Laryngoscope Investig Otolaryngol. 2019;4(6):684-692. PubMed
- Tsunoda A, Sumi T, Terasaki O, et al. Right dominance in the incidence of external auditory canal squamous cell carcinoma in the Japanese population: Does handedness affect carcinogenesis? Laryngoscope Investig Otolaryngol. 2017;2(1):19-22. PubMed
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