先に結論:放射線による細胞死
- 放射線による細胞死は、何回か分裂したあとに死ぬ「増殖死(分裂死)」と、分裂せずに死ぬ「間期死」に分けられ、通常の治療線量で多くの細胞に起こるのは増殖死です
- リンパ球など放射線に弱い細胞は、照射後数時間のうちにアポトーシス(間期死)を起こし、これにはp53が関わります
放射線による細胞死
・増殖死(=分裂死)と間期死とに分類される。
増殖死(=分裂死)
- 照射後数回の細胞分裂後に死に至る。
- 多くの固形腫瘍で主な細胞死の形。
間期死(=中間死):
- 放射線照射が原因で、次のM期に入ることなく、細胞が死ぬ。
- 1回も細胞分裂を経ることなく直ちにおこる細胞死。
- リンパ球など放射線に弱い細胞で、照射後数時間のうちに起こる。
・アポトーシスとネクローシスとに分類される。
・リンパ球でみられる高感受性間期死はアポトーシスである。
※X線照射によるアポトーシスはリンパ球など放射線高感受性細胞で起こりやすく、多くの固形腫瘍細胞では増殖死(分裂死)が主となる。正常組織の細胞では、照射後に細胞老化がよくみられる。
・ネクローシスでは細胞膨化、細胞融解を伴う。
・アポトーシスでは細胞の縮小、クロマチンの凝集、DNA断片化が起こる。
・放射線高感受性細胞のアポトーシスには通常p53が関与している。なお、固形腫瘍ではアポトーシスだけでは放射線治療の効果を説明できず、分裂期破局(mitotic catastrophe)や細胞老化(永続的な細胞周期停止)が増殖能を失わせる主な機序とされる。細胞死命名委員会(NCCD)の2018年の提言でも、分裂期破局や細胞老化はアポトーシス・ネクローシスなどと並んで定義されている。
増殖死と間期死の違い
| 増殖死(分裂死) | 間期死 | |
|---|---|---|
| 時期 | 何回か分裂を試みたあと | 次の分裂の前(数時間以内) |
| 主な細胞 | 多くの固形腫瘍 | リンパ球・血液系腫瘍 |
| しくみ | 分裂期破局を経た細胞死・細胞老化 | p53が関わるアポトーシス |
よくある疑問(Q&A)
Q. 間期死とは?
A. 照射された細胞が、次の分裂に入る前に死ぬことです。リンパ球などでみられ、多くはアポトーシスです(Sia 2020)。
Q. 治療の効果がすぐ出ないのはなぜ?
A. 固形腫瘍では、傷ついた細胞が何度か分裂を試みてから死ぬため、腫瘍の縮小が遅れて現れやすいとされます(Sia 2020)。
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参考文献
- Eriksson D, Stigbrand T. Radiation-induced cell death mechanisms. Tumour Biol. 2010;31(4):363-72. PubMed
- Sia J, Szmyd R, Hau E, et al. Molecular Mechanisms of Radiation-Induced Cancer Cell Death: A Primer. Front Cell Dev Biol. 2020;8:41. PubMed
- Galluzzi L, Vitale I, Aaronson SA, et al. Molecular mechanisms of cell death: recommendations of the Nomenclature Committee on Cell Death 2018. Cell Death Differ. 2018;25(3):486-541. PubMed
- Golden EB, Pellicciotta I, Demaria S, et al. The convergence of radiation and immunogenic cell death signaling pathways. Front Oncol. 2012;2:88. PubMed
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