手根管症候群

  • 手根管症候群は最も頻度の高い絞扼性神経障害で、女性に多く(男性の3−5倍)、30〜60歳代に好発する。
  • 約半数は両側性。
  • 症状は夜に増悪し、手関節を繰り返して掌屈、背屈すると増悪する。進行すると母指球筋の筋力低下を来す。

手根管症候群の画像診断

  • 手根管の正常画像所見:描出には横断像が最適。 手根管内では、屈筋腱は無信号に近い低信号に、正中神経はT1強調画像、T2強調画像では中等度の信号強度を示す。
  • 手根管症候群は臨床所見により診断できるが、再発例や手術失敗例においては画像診断も有用である。
  • MRIにより、腱鞘炎やガングリオンなどの腫瘍性病変を診断できる。
  • 手根管症症候群でみられる正中神経の変化は、豆状骨レベルでの腫脹(遠位橈尺関節レベルの直径と比較して1.6-3.5倍)、有鉤骨レベルでの平坦化横手根靭帯の掌側への膨隆、ならびにT2強調画像やSTIRにおける正中神経の高信号である。
  • なかでも、横手根靭帯の掌側への膨隆正中神経の平坦化の診断能が高い。
  • しかし、MRIは感度・特異度ともに高くはなく、診断には臨床情報との対比が重要。
症例 70歳代男性 MRI STIR 横断像

MRIのSTIRにおいて、有鈎骨レベル〜遠位にかけては、横手根靭帯で圧排されているところで、正中神経の扁平化と信号低下を認めます。
一方でより近位にかけては、正中神経の腫大および信号上昇を認めています。

手根管症候群と診断され手術となりました。

手根管症候群の原因

  • 手首の骨折や脱臼
  • 炎症性疾患:腱鞘炎、関節リウマチ、痛風など
  • 正中神経の腫瘤:神経鞘腫、線維腫、過誤腫など
  • 手根管内の腫瘤:ガングリオン、血管腫、脂肪腫など
  • 代謝性疾患:アミロイドーシス、糖尿病、先端肥大症など
  • その他:虫様筋肥大、筋肉奇形、正中動脈遺残など。

参考)
骨軟部画像診断のここが鑑別ポイント 藤井正彦先生
臨床画像2009年12月 自治医科大学 篠崎健史先生
骨軟部疾患の画像診断 第2版

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