PETで光ったら=がんだと思い込んでいる人がいますが、決してそんなことはありません。
まず忘れてはいけないのがこの生理的集積です。
つまり、正常だけど集積をすることがあるのです。
また炎症などにも集積します。
今回はFDG PET検査における生理的集積にはどのようなものがあるのかについてまとめてみました。
ほぼ常に集積をする部位とは?
PET検査に携わる場合、まず必ず押さえておきたいのがこのほぼ常に集積をする部位です。
常に集積をしますので、逆に集積しなければ、血糖値がおかしいのじゃないかなどと考えなければなりません。
間違ってもこの生理的集積を、がんだと誤診してはいけないのです。
PET検査でほぼ常に生理的集積をきたすのは以下の箇所です。
- 脳
- 腎
- 膀胱
- 肝臓
実際の画像は以下の通りです。
逆にこれらの部位にがんがあったとしてもわからないことがあるということも覚えておく必要があります。
特に脳には常時集積がありますので、脳腫瘍があってもマスクされてしまいます。
こちらの動画も参考にしてください。
ばらつきのある生理的集積を示す部位とは?
人によって集積があったりなかったり、その日の状態によって集積があったりなかったりとばらつきのある生理的集積というのがあります。
この部位は、集積がないから異常とも、集積があるから異常とも言えないのです。
ばらつきのある生理的集積を示すのは以下の部位です。
- 扁桃
- 唾液腺(耳下腺、顎下腺、唾液腺):唾液中にFDGが少量分泌されるため。
- 声門
- 心筋
- 乳腺
- 消化管
- 精巣
- 子宮
- 卵巣
- 骨格筋
- 頭頸部の筋肉(胸鎖乳突筋、外眼筋、側頭筋、咬筋、翼突筋、僧帽筋、後頭部)
例として、実際の画像をいくつか見てみましょう。
声帯への生理的集積
声帯に両側同程度集積しています。
口蓋扁桃への生理的集積
両側の口蓋扁桃に同程度集積しています。
耳下腺への生理的集積
両側の耳下腺に同程度の集積あり。
頭頸部の筋肉への生理的集積
検査前に緊張してしまうと、無意識に(胸鎖乳突筋、外眼筋、側頭筋、咬筋、翼突筋、僧帽筋、後頭部)などに力が入ってしまい集積してしまうことがあります。
またガムを噛んでいる人にも同じような集積が見られることがあります。
両側の胸鎖乳突筋への生理的集積を認めています。
動画はこちら。
心筋への生理的集積
心筋に生理的な集積を認めています。
精巣への生理的集積
右の精巣に生理的な集積を認めています。
ばらつきのある集積についての注意点は?
まず
- 頭頚部の生理的集積は左右対称であることが多い
です。ですので、上に挙げた口蓋扁桃への集積でもあまりに左右差があれば、生理的とは言えない可能性もあります。
消化管への生理的集積の注意点です。
- 胃への生理的集積はびまん性、もしくは穹隆部〜体部に強いことが多い
のが特徴です。ですので、幽門部のみで集積が目立てば、がんの可能性があります。
胃の穹隆部への生理的集積が目立つ症例です。
また
- 小腸や大腸の生理的集積は頻度、部位は一定しない
のが特徴です。出る人はいつでも出るという訳でもありません。
症例 50歳代男性 人間ドック
消化管への生理的集積を認めています。
- PET検査は大腸がんの発見に非常に有用な検査である
その一方、大腸へ生理的な集積を示してしまうことがあるので、判断に困ることはしばしばあります。
そういう場合は、少し時間を経ってから、再度撮影(遅延撮影)することがあります。
遅延画像は、通常撮影終了の30分後である静注2時間後に撮影します。
生理的な集積の場合、移動することがあるからです。
一方で、がんは移動はしませんよね。
もちろん生理的集積でも移動しないこともあります。
また、子宮、卵巣の生理的集積としては、
- 月経、排卵期から黄体期に集積が強くなる
ことが多いのが特徴です。
ですので、最終月経から何日経過しているのかをきちんと施設に伝えることが重要です。
このような集積を作らないためには、月経終了後1週間以内に撮影するのが望ましいとされています。
症例 40歳代女性 人間ドック
子宮内膜及び右の卵巣に生理的集積を認めています。
この症例では、下に記載した褐色脂肪細胞への集積も見られています。
まれに集積する部位は?
基本的には通常見られることは少ないけど、まれに集積をきたすという部位があります。
それが、
- 褐色細胞
- 胸腺(小児、若年者)
です。
稀とはいえ、これらの部位に集積するということを知っておかないと、がんなどの病気として誤診してしまう原因になります。
逆に生理的集積を示さない部位は?
逆に生理的集積を示さない部位で覚えておかないといけないのが、甲状腺です。
甲状腺に集積を認めた場合は、甲状腺機能異常や、甲状腺腫、甲状腺癌などの可能性があります。
症例 60歳代女性 人間ドック
甲状腺両葉にびまん性に異常な集積を認めています。
慢性甲状腺炎などの機能異常の可能性があります。
甲状腺に、部分的もしくはびまん性に集積を認めた場合は、甲状腺機能のチェックや超音波による精査が必要となります。
最後に
PET検査は一度に全身を観察することができる上に、がんがあればわかりやすく集積を認めることがあり、非常に便利な検査です。
しかし、一方で、生理的な正常集積を認め、その集積もあったりなかったりとばらつきがあるものもあるため、注意が必要ですね。
生理的な集積を悪性と間違えないように注意が必要です。