先に結論:巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)の画像

  • 巨細胞性動脈炎は、50歳以上に起こる血管の炎症で、こめかみの頭痛・側頭動脈の圧痛、かむとあごが痛む(顎跛行)、発熱、肩や腰のこわばり(リウマチ性多発筋痛症)などが出ます。急に失明することがあるため、疑ったらすぐに治療(ステロイド)を始めることが大切です
  • 画像では、側頭動脈の超音波で血管の周りの黒い縁(halo sign)、造影MRIでの頭皮の動脈の壁の肥厚と造影、FDG-PET/CTでの大動脈など大血管への集積が診断に役立ち、現在の基準では生検に加えて画像も重視されます
  • 大動脈にも炎症が起こるため、胸部大動脈瘤などの合併に注意して経過を見ます
  • CTでは側頭動脈そのものの評価は難しく、大動脈や鎖骨下・腋窩動脈の壁の肥厚を見るのが主な役割です

※50歳以上で新しい頭痛やこめかみの痛み、見え方の異常が出たときは、すぐに受診してください。

巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)(giant cell arteritis/temporal arteritis)

  • 主に50歳以上の高齢者に発症する中型および大型の動脈の炎症。
  • 遺伝的な背景として、ゲノムワイド関連解析でHLAクラスII領域との関連が最も強いと報告されている(Carmona 2017)。
  • 頸動脈の分岐を1つ以上障害することを特徴とし、特に側頭動脈が多い。ただし、全身疾患であるので注意。病変の主座は頚部より末梢の血管。側頭動脈以外にも、頸動脈の頭蓋外の分枝である浅側頭動脈、後頭動脈、顎動脈、眼動脈のほか、椎骨動脈に見られることがある。
  • そのため、側頭動脈炎と呼ばれていたが、最近では、巨細胞性動脈炎(GCA:giant cell arteritis)と呼称する。
  • リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica)との合併が多い。
  • 発熱、貧血、頭痛を主訴とする。 典型的には浅側頭動脈の炎症に伴う側頭部痛、顎動脈虚血に伴う顎跛行(咀嚼運動に伴う疼痛)などを伴うことあり。
  • 虚血性眼症状(虚血性視神経障害)の合併が重要で、治療がなされないと失明に至る。そのため、本疾患を疑うことが重要。
  • リウマチ性多発筋痛症は、頚部、肩、下背部、殿部および大腿の筋肉のこわばり、うずき、疼痛を特徴とする。
  • 採血では血沈亢進・CRP高値・血小板の増多がみられる。553例の検討では感度はCRP 96%、血沈80%、血小板49%で、3つ組み合わせると感度は41%に下がった。炎症反応が正常でも否定はできない(Castillejo Becerra 2025)。
  • 胸部大動脈瘤の合併が多い。デンマークの全国コホート(9908例)では、一般集団と比べた15年間の相対リスクは胸部大動脈瘤11.2、大動脈解離6.86で、腹部大動脈瘤は増えなかった(Therkildsen 2022)。また、脳梗塞などの脳虚血を合併した例では椎骨動脈の病変が多かった(Penet 2023)。
  • 確定診断には側頭動脈の生検が行われる。血管の病変は分節状(とびとび)であることもあるため、十分な長さを採取して連続した断面で観察すると診断率が上がる。825例の検討では、15 mm以上の生検で診断率が高く、この長さが推奨された(Ruediger 2022)。生検前の画像診断は炎症の局在の同定に寄与する可能性がある。

巨細胞性動脈炎の分類基準(米国リウマチ学会1990年。2022年にはACR/EULARの新基準が発表され、画像所見も項目に含まれた)

以下5項目のうち3項目以上を満たすときに巨細胞性動脈炎と分類する(感度93.5%、特異度91.2%。Hunder 1990)。

  • 発症年齢が50歳以上
  • 新たに生じた頭痛
  • 側頭動脈の異常(拍動性圧痛あるいは脈拍減弱)
  • 赤沈の亢進:50mm/h以上
  • 動脈生検組織の異常(単核球の浸潤または肉芽腫を伴う炎症があり、多核巨細胞を伴う)

2022年ACR/EULAR分類基準では50歳以上を必須条件とし、側頭動脈生検陽性または超音波でのhalo sign(+5点)、画像での両側腋窩動脈病変(+2点)、FDG-PETでの大動脈全体の集積(+2点)などの臨床・検査・画像項目を合計して6点以上で巨細胞性動脈炎と分類する。項目と点数は次のとおりです(Ponte 2022)。

項目 点数
側頭動脈生検陽性、または超音波で側頭動脈のhalo sign +5
血沈50 mm/時以上、またはCRP 10 mg/L以上 +3
突然の視力低下 +3
肩・首の朝のこわばり/顎跛行・舌跛行/新しい側頭部の頭痛/頭皮の圧痛/診察での側頭動脈の異常 各+2
画像で両側の腋窩動脈病変 +2
FDG-PETで大動脈全体の集積 +2

検証データでの感度は87.0%、特異度は94.8%でした(Ponte 2022)。

巨細胞性動脈炎の画像所見

  • エコーにおける、血管周囲のhypoechoic haloの所見の特異度が高い。
  • MRIでは、浅側頭動脈の炎症を反映して、T2強調像・造影T1強調像で高信号に描出される。
  • 浅側頭動脈は脂肪織内を通過するため、脂肪抑制を加えることが必要。ただし、脂肪抑制のシーケンスは本疾患が検査前に疑われないと基本的には、撮像されない。
  • DWIにおいて高信号になることあり。頭部皮下の非特異的な結節様高信号との鑑別は重要。
  • PET-CTで血管壁に集積を認め、大型血管の炎症の広がりを評価できる。2018年のEULAR推奨では、巨細胞性動脈炎を疑ったら早期に画像検査を行い、側頭動脈(±腋窩動脈)の超音波を第一選択とし、超音波が使えない場合は頭部動脈の高分解能MRIを代替とした。2023年の改訂では、全例で腋窩動脈を含む超音波を第一選択とし、代わりにFDG-PETまたはMRIで頭蓋・頭蓋外動脈を評価してもよいとされた。臨床所見と画像で診断が定まらない場合に、側頭動脈生検などを追加する。

画像検査ごとの診断能(超音波・MRI・FDG-PET)

EULAR推奨の改訂のためのメタ解析では、臨床診断を基準とした巨細胞性動脈炎の診断能は次のとおりでした(Bosch 2023)。

検査 主な所見 感度 特異度
超音波 halo sign(血管壁の周りの低エコー) 88% 96%
MRI 頭皮の動脈の壁の肥厚と造影 81% 98%
FDG-PET 大血管の壁への集積 76% 95%

超音波は側頭動脈だけでなく腋窩動脈など頭蓋外の動脈も調べると感度が上がりました(93% vs 80%。Bosch 2023)。

巨細胞性動脈炎のCT所見

  • CTは細い側頭動脈そのものの評価には向かず、大動脈・鎖骨下動脈・腋窩動脈など大血管の壁の肥厚や、動脈瘤・狭窄の評価に使われる。
  • 巨細胞性動脈炎64例を含む174例の症例対照研究では、CTでの大動脈壁の厚さ2.2 mmを境にすると、感度67%、特異度98%で巨細胞性動脈炎を診断できた(Berthod 2018)。

参考)

  1. Ponte C, Grayson PC, Robson JC, et al. 2022 American College of Rheumatology/EULAR classification criteria for giant cell arteritis. Ann Rheum Dis. 2022;81(12):1647-1653. PubMed
  2. Dejaco C, Ramiro S, Duftner C, et al. EULAR recommendations for the use of imaging in large vessel vasculitis in clinical practice. Ann Rheum Dis. 2018;77(5):636-643. PubMed
  3. Dejaco C, Ramiro S, Bond M, et al. EULAR recommendations for the use of imaging in large vessel vasculitis in clinical practice: 2023 update. Ann Rheum Dis. 2024;83(6):741-751. PubMed
  4. Hunder GG, Bloch DA, Michel BA, et al. The American College of Rheumatology 1990 criteria for the classification of giant cell arteritis. Arthritis Rheum. 1990;33(8):1122-8. PubMed
  5. Bosch P, Bond M, Dejaco C, et al. Imaging in diagnosis, monitoring and outcome prediction of large vessel vasculitis: a systematic literature review and meta-analysis informing the 2023 update of the EULAR recommendations. RMD Open. 2023;9(3). PubMed
  6. Berthod PE, Aho-Glélé S, Ornetti P, et al. CT analysis of the aorta in giant-cell arteritis: a case-control study. Eur Radiol. 2018;28(9):3676-3684. PubMed
  7. Therkildsen P, de Thurah A, Nielsen BD, et al. Increased risk of thoracic aortic complications among patients with giant cell arteritis: a nationwide, population-based cohort study. Rheumatology (Oxford). 2022;61(7):2931-2941. PubMed
  8. Penet T, Lambert M, Baillet C, et al. Giant cell arteritis-related cerebrovascular ischemic events: a French retrospective study of 271 patients, systematic review of the literature and meta-analysis. Arthritis Res Ther. 2023;25(1):116. PubMed
  9. Castillejo Becerra CM, Crowson CS, Langenfeld HE, et al. Population-Based Performance of Inflammatory Markers in Giant Cell Arteritis. Am J Ophthalmol. 2025;275:47-51. PubMed
  10. Ruediger C, Ninan J, Dyer K, et al. Diagnosis of giant cell arteritis by temporal artery biopsy is associated with biopsy length. Front Med (Lausanne). 2022;9:1055178. PubMed
  11. Carmona FD, Vaglio A, Mackie SL, et al. A Genome-wide Association Study Identifies Risk Alleles in Plasminogen and P4HA2 Associated with Giant Cell Arteritis. Am J Hum Genet. 2017;100(1):64-74. PubMed

症例 80歳代男性

巨細胞性動脈炎 浅側頭動脈 超音波 halo sign
引用:Radiopaedia(Giant cell arteritis)

頭痛と頭皮の圧痛が続き、CRPが著しく上昇していた症例の浅側頭動脈のカラードプラ超音波(短軸像)です。赤く映る血流の周りを、低エコーの厚い壁がリング状に取り囲んでいます(halo sign)。

巨細胞性動脈炎 浅側頭動脈 超音波 長軸像
引用:Radiopaedia(Giant cell arteritis)

同じ症例の長軸像です。両側の浅側頭動脈は蛇行し、全周性の低エコーの壁肥厚がみられ、臨床像とあわせて巨細胞性動脈炎が疑われました。

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →