手術をして、きちんと縫合もされたはずなのに、腹痛や下痢といった症状が残るといったことありませんか?

そんな、手術後の症状があらわれるものの1つにblind loop症候群(読み方は「ブラインド ループ」症候群)というものがあり、別名「盲管症候群」ともいいます。

この盲管とは、片方が閉じている状態の管のことで、手術等の治療で閉じたことにってそう呼ばれるようになります。

盲管症候群(blind loop症候群)は、その盲管が原因(手術をしたことによって)で症状が出る病気です。

今回は、そんなblind loop症候群(盲管症候群)について・・・

  • 原因
  • 症状
  • 治療法

について、イラストを交えてわかりやすく説明したいと思います。

blind loop症候群(盲管症候群)の原因とは?

blind loop症候群の原因について説明いたします。

最初に申しましたが、手術により縫合し、片方が閉じた状態となった管に起こる病気がblind loop症候群です。

(どうして手術により片側が閉じた状態が起こるのかについてはこちらの記事が参考になります。→【保存版】胃癌の手術の方法は?再建方法まとめ!

また、どうして閉じた状態の場所が病気になるのかというと・・・

閉じたその盲管部分に、腸内細菌が溜まり、増殖することによって症状が起こります。

主に3つのケースでこの状態が生じますので一つひとつ見ていきましょう。

胃癌術後の再建後の場合


胃癌の術後の再建術の1つにBillrothⅡ法という再建方法があり、上のようになりますが、上のイラストのように十二指腸が盲管となります。
そこで細菌が増殖します。

端側吻合の場合


腸管と腸管をつなぐ方法の1つに腸管の端と腸管の側面を吻合(ぴったり合う)する場合があり、それを端側吻合(たんそくふんごう)と言います。

すると上のイラストのように側面を吻合下側の腸管に盲管が生じます。ここで細菌が増殖します。

側側吻合の場合


また腸管と腸管を吻合する方法の1つとして上のイラストのように腸管の側面同士を吻合する側側吻合(そくそくふんごう)があります。

この場合は、吻合する腸管二つともに盲管ができてしまいます。

この盲管で細菌が増殖します。

イラストで見るとわかりやすいですが、どうしてそこに腸内細菌が溜まるのかというと・・・

本来なら流れるはずの管が行き止まりになってることから、腸の内容物が溜まってしまい、その状態が続くと菌が発生してしまうというわけです。

これをホースに例えて考えてみたら、分かりやすいかと思います。

つながってるホースは、水を流すとスムーズに流れ出ます。

ですが、片方が閉じてる状態(行き止まりがある場所があると)だと、そこの流れがストップし、細かな内容物が徐々に蓄積していき、そこに菌が増殖していくというわけですね。

この腸内細菌、色々な種類があります。

生きて腸まで届くというヨーグルトが悪い腸内細菌をやっつけるというCM等を目にしたことがある方もいらっしゃると思いますが、普通なら誰の体にもいるもので、これが問題となるわけではないんです。

ただ、これが溜まると、正常値を超えた腸内細菌が増殖し、それによって体に症状を来す悪さをするというわけです。

blind loop症候群(盲管症候群)の症状とは?

症状について説明します。

  • 腹部膨満
  • 腹痛
  • 下痢
  • 貧血
  • 脂肪吸収障害

下痢を伴う腹痛などの症状が出ると特に、手術をして悪い部分を取り除いた後なのに、どうしてこんな症状が出るんだ?と疑問に思われる方も多いと思います。

ですが、その手術で縫合した盲管にこそ原因があるため、このような症状が出た際に医療機関を受診する場合は、手術のことをまず先に医師に伝えなければいけません。

どうしてこのような症状が出るのか?

盲管(盲係蹄)と呼ばれるblind loopに細菌が繁殖すると、その場で

  1. 胆汁酸の脱抱合
  2. ビタミンB12、糖質、蛋白質の消費

が起こります。

胆汁酸の脱抱合(結合していたものが離れる)が起こると、ミセル形成悪化が起こり脂肪、脂溶性ビタミンの吸収障害が起こります。

またビタミンB12、糖質、蛋白質の消費が起こると巨赤芽球性貧血、体重減少、脂肪便などの症状が起こります。

関連記事)ダンピング症候群とは?原因から症状、治療方法まとめ!

blind loop症候群(盲管症候群)の治療法とは?

X線検査を行い、腸内細菌を確認し、治療が行われます。

治療法としましては、以下の3つがあります。

  • 食事療法
  • 化学療法
  • 外科療法

それぞれについて説明します。

食事療法

高タンパク、高カロリーな食事を少量ずつ摂取する方法で、そうすることにより、脂肪吸収障害を緩和する目的があります。

化学療法

抗生剤を処方され、細菌の増殖を抑制することが目的です。
これは完治という方法ではなく、あくまでも対処法となります。

外科療法

再手術を行い、問題となってる盲管の手術、縫合をやりなおすという場合もあります。

ですが、全てにおいて根治は難しく、基本対処療法なので、食事療法をうまく調整しながら乗り切っていくことになります。

参考文献:病気がみえる vol.1:消化器 P128・131
参考文献:内科診断学 第2版 P854・855
参考文献:新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P92〜95

最後に

  • 手術により縫合した盲管に腸内細菌が溜まり、増殖することが原因
  • 腹痛や下痢、脂肪吸収障害や貧血などの症状が出る
  • 食事療法、化学療法、外科療法という治療法があるが、全てにおいて対処法にしかならない
  • 基本的には食事療法を行い、症状を緩和、予防していく必要がある

どうして手術をしたのに・・・と思われるかもしれませんが、これは手術で大きな病気を取り除いた代償として、健康な状態とは同じようにいかないというリスクの一つです。

また大きな病気にならないよう、食生活を見直し、日頃の食事にも注意することで症状悪化も防ぐことができます

自分の体は自分で気をつけ、手術をリセットとし、もう一度見つめ直してみましょう。

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