胃切除手術をした人は、問題のある胃を切除してしまえば、もう安心と思っていませんか?

実は、今までのような食生活が送れなかったり、体調の変化や様々な症状に戸惑ってる方が多くいます。

そんな中でも、胃切除後に起こるダンピング症候群には注意が必要です。

そこで今回は、ダンピング症候群(英語表記で「Dumping syndrome」)について・・・

  • 症状
  • 原因
  • 治療法
  • 予防法

をご説明したいと思います。

ダンピング症候群とは?

胃の切除手術後には、胃の体積や機能が低下します。

すると、胃内での食べ物の貯留機能が低下するために起こり、食べた物が小腸内に急速に流入するために起こる病態をダンピング症候群といいます。

ダンピング症候群の種類は?

ダンピング症候群は

  • 食直後の30分程度で現れるもの早期ダンピング症候群
  • 食後時間が経過して2.3時間後に起こるもの後期ダンピング症候群

の早期と後期に分けられます。

ダンピング症候群の頻度は?

このダンピング症候群は、胃切除手術をした約10〜30%にみられます。

ダンピング症候群の症状は?

早期・後期それぞれの症状を説明します。

早期ダンピング症候群の症状

  • 動悸
  • めまい
  • しびれ
  • 冷や汗
  • 倦怠感
  • 頻脈
  • 腹痛
  • 吐き気
  • 嘔吐

胃切除・幽門形成・胃空腸吻合などを受けた症例にみられます。

後期ダンピング症候群の症状

  • 頭痛
  • 脱力感
  • 発汗
  • 空腹感
  • 呼吸の乱れ
  • 失神

などですが、後期の方が気を失うまでの症状になってしまう点で違いがあります。
食後に大量の糖が急速に吸収され、インスリンの一過性過剰分泌の結果、症状があらわれます。

ダンピング症候群の原因・メカニズムは?

ダンピング症候群が起こる原因・メカニズムは、早期と後期で異なります。

それぞれ分けて見ていきましょう。

早期ダンピング症候群の原因・メカニズムは?

まず、胃を切除したことにより胃液が分泌されにくくなります。

また、胃を切除して胃の体積が減ったわけですから、胃の中の食べ物の貯蔵量も今までよりも少なくなります。

そうすると、消化・吸収されなかった食べ物があふれ出し、小腸に入ります。

これにより2つのことが起こります。

  • 小腸内が食べ物により高浸透圧になる
  • 小腸の粘膜が刺激される
小腸内が高浸透圧になると・・・

小腸内が食べ物により高浸透圧になると、腸管の外から水を引っ張る物理的な力が働きます。

そうすると細胞外液が減少して、体を流れる循環血液量が減ってしまいます。

体を流れる血液が減ると、脳血流が減ったり、血管運動反射と言った自律神経系の症状が起こります。

小腸の粘膜が刺激されると・・・

また食べ物が小腸に入り、小腸の粘膜を刺激します。

これにより消化管ホルモン(セロトニン、ヒスタミン、ブラジジキニン)が放出され、これらが複雑に絡んで、血管運動症状や胃腸菅症状を引き起こします。

これらの結果、早期ダンピング症候群の症状が起こります。

後期ダンピング症候群の原因・メカニズムは?


胃を切除したことにより消化・吸収されなかった食べ物があふれ出し、小腸に入るところまでは早期と同じです。

小腸内に食べ物が入ることにより、小腸(空腸)は勢いよく糖を吸収します。

すると、血液中の糖、つまり血糖が高くなり、高血糖を引き起こしてしまいます。

そして、高血糖を抑えようと膵臓からインスリンが多く分泌されます。

しかし、実際は摂取した糖が多いわけではなく、小腸へ入る勢いが強いだけですので、必要以上の過剰なインスリンが分泌されます。

すると、逆に血糖が下がり過ぎてしまい、低血糖症状が起きてしまうのです。

これが、後期ダンピング症候群が起こる原因・メカニズムです。

ですので、後期ダンピング症候群では、食事の摂り方や炭水化物を多く摂ってしまうことも原因となります。

後期ダンピング症候群を起こしてしまう食事の摂り方

後期ダンピング症候群を起こしてしまう食事の摂り方としては、

  • 短時間で食事を済ませる一気食い
  • 炭水化物の量が多すぎた場合

と言った食べ方が挙げられます。

この食べ方によって、急激に血糖値が高まり、それを体が抑えようとインスリンを多く分泌し、逆に低血糖状態となり症状が起こります。

どんな治療法があるの?

胃切除じたいが治療の結果なのに・・・と思われるかもしれませんが、胃の手術後は気をつけないといけません。

まず、食事療法をしっかり守ることが重要です。

そのため、手術後には食事の指導がなされます。

また、症状が出てる時は、対処法や治療が必要になります。

食事療法は予防にもつながりますので、手術後には、指導が入ります。

ここで詳しく説明します。

食事で指導される(食事療法)ことは?

  • 糖質を減らす
  • 脂質を減らす
  • 食事中の水分摂取を控えめに
  • 少量の食事で回数を多く分ける
  • 高蛋白、山脈肪、低炭水化物
  • 刺激のあるものを避ける(冷たすぎるもの、暑すぎるもの、辛すぎるもの等)

そして、食後はすぐに動かず安静にすることも大切です。

また、胃切除後は貧血にもなりやすいため、食事の内容にも気をつけ、鉄分の多い食材を摂ることもおすすめです。

上記以外でも、ダンピング症候群は自律神経の要素もあるので、ストレスをためない・考えすぎない・気にしすぎないというのも大切です。

続いて、症状が出た場合の対処法・治療法を見ていきましょう。

症状が出た時の対処法

  • 冷たい飲み物を避ける
  • 横になって休息(安静)
  • 糖質の補給(飴玉、ジュース、砂糖など)

これはあくまでも、低血糖症状が出た時の対処法です。

ですが、これでも症状が治らない場合や、症状がひどい場合は以下のような治療が必要になります。

症状がひどい時の治療法

  • 血管作動性物質に対する抗ヒスタミン薬
  • 粘膜刺激に対する粘膜保護剤
  • 自律神経系に対する抗不安薬
  • 腸管運動亢進に対する鎮痙薬

これは治療法というより、症状をおさえるための対処法でしかありません。

基本的には、食事療法が大切です。

ですが、稀に再手術をする場合もあります。

最後に

  • 食直後の30分程度で現れるものを早期ダンピング症候群
  • 食後時間が経過して2.3時間後に起こるものを後期ダンピング症候群
  • 低血糖や貧血の症状や様々な体の異変が出る
  • 低血糖状態を食事によって改善することが治療や対処法になる
  • 自律神経のバランスを整えることも大切
  • 食事療法が予防にも治療にも大切

 

胃切除手術前と同じように考えてはいけないというわけです。

常に、このような症状が起こるかもしれないと予測し、もしもの場合に備えて飴を常備しておいたりすることで、精神的負担も軽くできます。

胃切除しなければ命自体が危なかったかもしれない、今はそれが助かったんだからと前向きに考え、うまく付き合っていくのがダンピング症候群を予防するカギですね。

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