先に結論:妊婦への造影CT
- 妊婦の腹部・骨盤CTの胎児線量は平均約25mGyと報告されており、100mGy未満は妊娠中絶の理由にならないとされています。必要な検査なら妊娠中でも行います
- ヨード造影剤は胎盤をわずかに通りますが、胎児への悪影響は確認されていません。新生児の甲状腺機能は出生後のスクリーニングで確認します
- 被ばくは必要最小限にし、超音波やMRIで代わりにならないかをまず検討します
- ガドリニウム造影MRIは妊娠中の安全性の報告が分かれるため、造影なしでは診断できないときに限って使うのが基本です。授乳中はどちらの造影剤も授乳を止める必要はないとされています
CT造影剤(ヨード)を妊婦に使う場合
この場合考えなければならないことは、胎児への影響であり、
- 催奇形性
- 放射線誘発がん
- 造影剤は胎児への移行
の3点。
催奇形性は?放射線誘発がんは?
- 妊婦に行われた腹部・骨盤CT86件の検討では、胎児線量は平均24.8mGy(6.7〜56mGy)であった(Goldberg-Stein 2011)。
- 100mGy未満の胎児線量は妊娠中絶の理由と考えるべきではないとされており(ICRP 2000)、通常の診断用CTの線量で催奇形性が問題になることはまずない。(もちろん繰り返し撮影してはダメ。)
- 発癌率は「しきい値なし直線仮説(LNT仮説)」でも、子宮内被曝における個人レベルでの小児がんの確率は極めて小さいとされている。
※LNT(linear non threshold)モデル:閾値がなく線量と影響が直線的な関係。低い線量では、がんが増えるかどうかを統計的に確かめられない(影響があるとしても非常に小さい)とされている。
- このモデルでは、被ばく量が増えるほど、がんになる確率がわずかずつ上がると推定する。
造影剤の胎児への移行は?
- 動物実験において、造影剤のわずかな胎盤通過性が認められているが、造影剤による胎児、新生児への影響は認められていない。
- ただし、臨床での安全性は確立していない。
- また、妊婦に羊水胎児造影を施行した例で、新生児に一過性甲状腺機能低下の報告があるため、このためESURの指針では、妊娠中にヨード造影剤を使った場合は生後1週間以内に新生児の甲状腺機能を確認するとされる。なお、妊娠中にCT肺動脈造影を受けた母親から生まれた新生児73例では、甲状腺機能の異常はみられなかった。
妊娠中のガドリニウム造影MRIの考え方
MRIは放射線を使わないため、妊婦では超音波とともに第一に選ばれる画像検査とされています(ACOG 2017)。問題になるのはMRIそのものではなくガドリニウム造影剤で、人でのデータが少ないため妊娠中の使用は議論が続いています(Tremblay 2012)。
- カナダの約142万件の出産の研究では、妊娠中のガドリニウム造影MRI(397件)で死産・新生児死亡(調整相対リスク3.70)と、リウマチ性・炎症性・浸潤性の皮膚疾患(調整ハザード比1.36)が多かったと報告されました。妊娠初期の造影なしMRIでは有意な関連はありませんでした(Ray 2016)。
- 米国の妊娠5991件の研究では、胎児・新生児死亡はガドリニウム造影MRI群・造影なしMRI群とも1.4%で差がありませんでした(Winterstein 2023)。
結果が分かれているため、妊娠中のガドリニウム造影は、造影しないと診断や治療方針が決まらない場合に限って検討し、まず造影なしMRIで評価できないかを考えるのが基本です。
授乳中の造影剤でよくある疑問(Q&A)
Q. 授乳中に造影CT・造影MRIを受けたら、母乳をやめるべきですか?
A. 母乳に移る造影剤はごくわずかで、赤ちゃんの腸から吸収されるのはさらにその一部です。造影後24時間授乳を止めるほどの理由はないとされ(Webb 2005)、ガドリニウム造影後も授乳を中断すべきでないとされています(ACOG 2017)。心配なときは担当の医師に相談してください。
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参考文献
- Committee Opinion No. 723: Guidelines for diagnostic imaging during pregnancy and lactation. Obstet Gynecol. 2017;130(4):e210-6. PubMed
- Tremblay E, Thérasse E, Thomassin-Naggara I, et al. Quality initiatives: guidelines for use of medical imaging during pregnancy and lactation. Radiographics. 2012;32(3):897-911. PubMed
- Webb JA, Thomsen HS, Morcos SK. The use of iodinated and gadolinium contrast media during pregnancy and lactation. Eur Radiol. 2005;15(6):1234-40. PubMed
- Rajaram S, Exley CE, Fairlie F, et al. Effect of antenatal iodinated contrast agent on neonatal thyroid function. Br J Radiol. 2012;85(1015):e238-42. PubMed
- Wang PI, Chong ST, Kielar AZ, et al. Imaging of pregnant and lactating patients: part 1, evidence-based review and recommendations. AJR Am J Roentgenol. 2012;198(4):778-84. PubMed
- International Commission on Radiological Protection. Pregnancy and medical radiation. Ann ICRP. 2000;30(1):iii-viii, 1-43. PubMed
- Goldberg-Stein S, Liu B, Hahn PF, et al. Body CT during pregnancy: utilization trends, examination indications, and fetal radiation doses. AJR Am J Roentgenol. 2011;196(1):146-51. PubMed
- Ray JG, Vermeulen MJ, Bharatha A, et al. Association Between MRI Exposure During Pregnancy and Fetal and Childhood Outcomes. JAMA. 2016;316(9):952-61. PubMed
- Winterstein AG, Thai TN, Nduaguba S, et al. Risk of fetal or neonatal death or neonatal intensive care unit admission associated with gadolinium magnetic resonance imaging exposure during pregnancy. Am J Obstet Gynecol. 2023;228(4):465.e1-465.e11. PubMed
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