変形性脊椎症(読み方は「へんけいせいせきついしょう」英語ではspondylosis deformans)とは、主に首の骨である頚椎と腰の骨である腰椎に起こる変化です。
- 頚椎に起こるものを変形性頚椎症(cervical spondylosis)
- 腰椎に起こるものを変形性腰椎症(lumbar spondylosis)
と言います。
これらの変化により、様々な症状が生じることになります。
では、変形性脊椎症とは具体的にどういった変化・変性が起こっているのでしょうか?
変形性脊椎症という名前だけでは想像がしにくい、というかできないですよね。
そこで今回は、
- 変形性脊椎症でどのようなことが骨や椎間板などに起こっているのか
- なぜそれで症状を生じるのか
を図(イラスト)を用いてわかりやすく解説しました。
変形性脊椎症とは?
変形性脊椎症は実は大きく3つ(頚椎の場合は4つ)の構成要素からなっています。
- 椎間板の変性
- 椎体の変性
- 椎間関節の変形性関節症
- ルシュカ関節の変性(頚椎のみ)
以上の4つです。
これらの変化をまとめて、変形性脊椎症と言っているわけです。
そりゃ変形性脊椎症という文字だけを見てもなかなかイメージが湧かないわけですよね。
椎体・椎間板の解剖は?
これらの変化を1つ1つ見ていく前に、言葉を整理しましょう。
まず椎体(今回は腰椎)を横から見たMRIを見てみましょう。
上のMRI画像のように、Th12、L1、L2、L3、L4、L5、S1・・・とあるのが椎体(読み方は「ついたい」)つまり背骨のことです。
その椎体の間にあるのが、椎体の間にある板ということで椎間板(読み方は「ついかんばん」)と言います。
椎体と椎体の間にありクッションの役割を果たすがのこの椎間板です。
そして、この椎体と椎間板を取り出すと、実は下のような構造からなっています。
まず、椎体の上下端っこは軟骨終板と呼ばれます。
また椎間板は
- 真ん中の髄核
- その外の線維輪
- その外のSharpey線維(シャーピィ線維)
から構成されていることがわかります。
ではこれらの解剖を踏まえた上で、変形性脊椎症の4つの変化を分解して1つ1つ見て行きましょう。
椎間板の変性
クッションの役割を果たす椎間板ですが、これに変性が起こります。
クッションのような弾力がなくなり、硬くなります。
それにより、
- 線維輪の断裂
- 髄核の偏位・扁平化→それにより椎間腔狭小化
- 髄核に亀裂(画像では亀裂内のガス(vacuum現象という)・液体貯留としてみられる)
- 石灰化
と言った変化が起こります。
この椎間板に起こる変化は、髄核変性や椎間軟骨症とも呼ばれます。
椎体の変性
続いて、背骨である椎体そのものに起こる変性です。
この椎体そのものに起こる変化(中でも骨棘の形成)を(狭義の)変形性脊椎症と呼ぶこともあります。
先ほどの椎間板の変性が起こり、線維輪の断裂が起こると髄核の偏位が起こりますが、 Sharpey線維は強い靭帯であるため容易には断裂しません。
そしてこのSharpey線維に骨棘(読み方は「こつきょく」英語ではosteophyte)という文字通り骨の棘(とげ)が形成されます。
なお、骨棘は
- 横方向へ突出するものは、traction spur
- 上下方向へ突出するものは、claw spur
と呼ばれますが、これらを区別する意義はあまりないと言われています。
この骨棘の形成以外に、椎体骨髄の変性も椎体そのものに起こる変性に含まれます。
椎間関節の変形性関節症
上下の椎体の間には、上関節突起と下関節突起によって形成される椎間関節があります。
上の図のように、椎間関節の前方を神経根が走行します。
ここに起こる
- 骨性の増殖
- 黄色靭帯の肥厚
を合わせて変形性関節症と呼びます。
この変化により、神経根が圧排されている様子がよくわかりますね。
ルシュカ関節の変性(頚椎のみ)
最後にルシュカ関節の変性です。
ルシュカ関節(Luschka関節)は鉤椎関節とも呼ばれ、第3-7頚椎(C3-7)の椎体の後上外側面に認める鉤状突起と、一つ上の椎体との間に形成される関節のことです。
第3-7頚椎(C3-7)に認める変化ですので、腰椎には起こらず、頚椎のみに起こリます。
上の図のように、ルシュカ関節の後方を神経根が走行します。
ここに骨棘の形成などの増殖性変化が起こると以下のようになります。
この変化により、神経根が圧排されている様子がよくわかりますね。
変形性脊椎症で症状が起こる理由は?
ここまで説明してきた4つの要素により起こる変化を変形性脊椎症と総称します。
さて、下の図に示すように
- 頚椎・胸椎レベルでは、脊柱管の中を脊髄が走行
- 腰椎レベルでは、馬尾が走行
しています。
そしてそれぞれ神経根が神経孔を走行しています。
上で示した変形性脊椎症により、神経根が圧排されたり、高度になると脊髄が圧排され、それぞれ症状を起こします。
- 神経根が圧排されて生じる症状を神経根症(radiculopathy、ラディキュロパチー)
- 脊髄が圧排されて生じる症状を脊髄症(myelopathy、ミエロパチー)
と呼びます。
最後に
変形性脊椎症とは、どういったものを示すのかを、4つに分けて解説しました。
変形性脊椎症という名前だけを見ると、それが何を意味するのかはっきりしません。
しかし4つに分けて1つ1つ図で見ていくと
- それぞれがどのような変形・変性をきたしているのか、
- それがどのように神経根や脊髄を圧迫する原因となりうるのか
を理解することができます。
参考になれば幸いです( ^ω^ )
ルシュカ関節についてですが、鈎状突起はc3-7まで存在するのではないでしょうか?
コメント&誤植のご指摘ありがとうございます。
おっしゃるようにC3からですので修正させていただきました。