先に結論:前頭頬骨縫合と骨折の見分け方
- 前頭頬骨縫合は眼窩の外側縁で前頭骨と頬骨がつながる縫合で、顔面CTの冠状断で細い線として見え、骨折と間違えやすい部位です
- 左右対称・典型的な位置・辺縁が皮質で覆われているなら正常の縫合、左右差・鋭い断端・周囲の腫れや血腫・縫合の開きがあれば骨折(離開)を考えます
- 頬骨上顎複合骨折(ZMC)ではこの縫合が離開することが多いため、他の支柱(頬骨弓・眼窩底・上顎洞壁)もあわせて確認します。転位したZMC骨折では、外側眼窩壁が頬骨蝶形骨縫合で角度を変えるため眼窩容積が増えることが多く、前頭頬骨縫合だけでなく眼窩外側壁の頬骨蝶形骨縫合部も確認します。
顔面CTを読影していると、眼窩外側壁から外側眼窩縁付近に、細い骨透亮線を認めることがある。
外傷例では骨折線に見えることがあるが、その一部は正常構造である前頭頬骨縫合である。
特に冠状断像では、眼窩外側上方に左右対称性の線状構造として見えることがあり、骨折と誤認しないよう注意が必要である。
前頭頬骨縫合とは

- 前頭頬骨縫合とは、前頭骨の頬骨突起と頬骨の前頭突起が接する縫合である。英語では frontozygomatic suture、あるいは zygomaticofrontal suture と呼ばれる。
- 位置としては、眼窩外側縁の上方、すなわち外側眼窩縁の上外側部に存在する。
- 頬骨は顔面中央部の突出を形成する骨であり、眼窩外側壁・眼窩底の一部、頬骨弓などを構成する。
- 頬骨は前頭骨、上顎骨、側頭骨、蝶形骨大翼と関節・縫合を作るため、顔面外傷ではこれらの接合部が損傷を受けやすい。
- 前頭頬骨縫合もその一つであり、正常構造として見える一方で、頬骨上顎複合体骨折では離開や骨折の評価点にもなる。
「頬骨突起」と「前頭突起」—頬骨とつながる縫合の一覧
「頬骨突起」は頬骨に向かって伸びる突起の名前で、前頭骨・側頭骨・上顎骨のそれぞれにある。反対に、頬骨からほかの骨へ伸びる突起は「前頭突起」「側頭突起」などと呼ばれる。頬骨は英語でzygomatic bone(zygoma)、頬骨弓はzygomatic archである。
| 縫合 | つながる部分 | 場所 |
|---|---|---|
| 前頭頬骨縫合 | 前頭骨の頬骨突起+頬骨の前頭突起 | 眼窩外側縁の上方 |
| 頬骨側頭縫合 | 側頭骨の頬骨突起+頬骨の側頭突起 | 頬骨弓(この2つの突起で頬骨弓ができる) |
| 頬骨上顎縫合 | 上顎骨の頬骨突起+頬骨 | 眼窩下縁〜上顎洞の外側 |
| 頬骨蝶形骨縫合 | 蝶形骨大翼+頬骨 | 眼窩外側壁の内側(眼窩の中) |
頬骨上顎複合体骨折では、これらの縫合部(支柱)を順に確認する。
顔面CTでの見え方
- 顔面CTでは、前頭頬骨縫合は外側眼窩縁付近の短い線状低吸収域として認識される。
- 冠状断像では、眼窩外側壁の上方に、前頭骨と頬骨の境界として見えることが多い。横断像では外側眼窩縁付近の短い縫合線として見え、矢状断像や3D再構成像を併用すると位置関係を把握しやすい。
- 重要なのは、前頭頬骨縫合は本来あるべき場所に、比較的左右対称に存在する正常構造であるという点である。
- 外傷例では「線状の骨皮質不連続」に見えるため、特に眼窩外側壁や頬骨弓周囲に注意して読影している場面では、骨折線と誤認しやすい。
前頭頬骨縫合と骨折の鑑別ポイント
1.正常縫合は典型的な位置にある
前頭頬骨縫合は、外側眼窩縁の上外側部、前頭骨と頬骨の接合部に存在する。
この位置に一致する短い線状構造であれば、まず正常縫合を考える。
一方、骨折線は必ずしも解剖学的な縫合の位置に一致せず、眼窩壁、頬骨体部、上顎洞壁などへ連続して走行することがある。
2.左右対称性を確認する
正常縫合は左右に存在する構造である。
したがって、反対側にも同様の位置・形態の線状構造があれば、正常縫合の可能性が高い。
ただし、縫合の見え方には左右差があるため、左右差があるだけで骨折と断定してはならない。
3.辺縁が皮質化しているかを見る
正常縫合は、辺縁が比較的整で、皮質化・硬化した境界を伴うことが多い。
一方、急性骨折では、辺縁が鋭く、非皮質化で、不整な骨皮質断裂として見えることが多い。
縫合はやや鋸歯状・波状に見えることがあり、直線的に骨を横断する骨折線とは印象が異なる。
4.軟部組織腫脹・皮下気腫・血腫を確認する
外傷性骨折であれば、周囲に軟部組織腫脹、皮下血腫、皮下気腫、眼窩内気腫、上顎洞内血腫などを伴うことがある。
一方、正常縫合だけであれば、通常は周囲軟部組織に外傷性変化を伴わない。
骨折か迷う場合は、骨条件だけでなく軟部条件も確認することが重要である。
5.縫合離開かどうかを見る
前頭頬骨縫合そのものは正常構造であるが、外傷により縫合部が離開することはある。
その場合、単なる正常縫合よりも縫合間隙が開大し、左右差、段差、頬骨の偏位を伴うことがある。
特に頬骨上顎複合体骨折では、外側眼窩縁の骨折または前頭頬骨縫合離開として評価される。
症例 80歳代女性 転倒

外側眼窩縁付近の短い線状低吸収域として認められます。
左右差や離開など認めず、前頭頬骨縫合に相当し、正常構造です。
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前頭頬骨縫合・顔面CTでよくある疑問(Q&A)
Q. 「前頭断」とは何ですか?
A. 体を前と後ろに分ける断面のことで、CTやMRIでは「冠状断(coronal)」とも呼びます。前頭頬骨縫合は前頭断(冠状断)で眼窩外側の上方に見えやすい構造です。
Q. 頬骨弓を構成する骨は?
A. 側頭骨の頬骨突起と、頬骨の側頭突起です。両者は頬骨側頭縫合でつながります。
顔をぶつけたあとに腫れ・痛み・ものが二重に見えるなどの症状があれば、医療機関を受診してください。
出典
- Kenhub. Zygomatic bone: Surfaces, processes, functions.
- Elsevier Complete Anatomy. Frontal Process of Zygomatic Bone. 頬骨前頭突起が前頭骨頬骨突起と関節し、前頭頬骨縫合を形成することを参照した。
- Ellis E 3rd, Kittidumkerng W. Analysis of treatment for isolated zygomaticomaxillary complex fractures. J Oral Maxillofac Surg. 1996;54(4):386-400.
- Lee EI, Mohan K, Koshy JC, Hollier LH Jr. Optimizing the surgical management of zygomaticomaxillary complex fractures. Semin Plast Surg. 2010;24(4):389-397.
- Idriz S, Patel JH, Ameli Renani S, Allan R, Vlahos I. CT of Normal Developmental and Variant Anatomy of the Pediatric Skull: Distinguishing Trauma from Normality. Radiographics. 2015;35(5):1585-1601. 縫合と骨折の鑑別における位置、鋸歯状形態、皮質化、軟部組織腫脹の有無などの考え方を参照した。
- Ogunmuyiwa SA, Fatusi OA, Ugboko VI, Ayoola OO, Maaji SM. The validity of ultrasonography in the diagnosis of zygomaticomaxillary complex fractures. Int J Oral Maxillofac Surg. 2012;41(4):500-505. 前頭頬骨縫合離開がZMC骨折評価部位の一つであることを参照した。
参考文献
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- Ellis E 3rd, Kittidumkerng W. Analysis of treatment for isolated zygomaticomaxillary complex fractures. J Oral Maxillofac Surg. 1996;54(4):386-400. PubMed
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- Hopper RA, Salemy S, Sze RW. Diagnosis of midface fractures with CT: what the surgeon needs to know. Radiographics. 2006;26(3):783-93. PubMed
- Dreizin D, Nam AJ, Diaconu SC, et al. Multidetector CT of Midfacial Fractures: Classification Systems, Principles of Reduction, and Common Complications. Radiographics. 2018;38(1):248-274. PubMed
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