先に結論:PETで褐色脂肪に集まるFDG
- FDG-PETでは、寒さで活発になる褐色脂肪に首・鎖骨上窩・脊椎の周り・縦隔などで左右対称に集積することがあり、若い女性・やせた人・寒い季節に多く見られます
- PET/CTで集積部位が脂肪(CTで低吸収)であることを確認すれば生理的集積と分かりますが、リンパ節転移を隠してしまうことがあります
- 対策は検査前から体を温めておくことで、施設では室温管理や毛布で予防します(β遮断薬などを使う施設もあります)
- 名前の似た褐色脂肪腫(hibernoma)は褐色脂肪からできる良性の腫瘍で、左右対称の生理的集積とは違い、1か所のかたまりとしてFDGが集まります
がん検診として普及してきたPET検査ですが、集積したものがすべてがんというわけではありません。
生理的集積といって、正常でも集積することが知られています。
また炎症などにも集積します。
逆にPET検査の普及により、広く知られるようになったのがこの褐色脂肪細胞への集積です。
今回はこの褐色脂肪細胞へのFDGの集積について、実際の画像を見ながら解説しました!
褐色脂肪細胞とは?
褐色脂肪細胞とは、寒さに対して、体温調整として非ふるえ熱産生を起こす細胞で、寒い時期に活発になるため、FDG-PETでの集積も夏より冬に多く見られます。
若年者・女性に多く、量はBMIと逆の関係にあるため、エネルギー代謝や肥満との関わりが考えられています。
褐色脂肪細胞へのFDGの集積とは?
- 頸部
- 鎖骨上窩
- 傍椎体
- 心臓周囲
- 横隔膜周囲
- 後腹膜
などの脂肪織に、集積として認められ、寒冷刺激により反応し熱産生を行なう結果、FDGが集積すると考えられています
FDG-PET検査では集積を認めますが、対応する部位をCTで確認すると脂肪組織であることがわかります。集積の強さ(SUV)だけではリンパ節への集積と区別できないとの報告があり(Cohade 2003)、CTで脂肪に一致するかを確かめることが大切です。PET/CT 638例を調べた初期の報告では、17例(2.5%)に肩から頸胸部の左右対称な集積がみられ、従来は筋肉への集積と考えられていたこの集積が、CTとの重ね合わせで脂肪組織に一致することが示されました。
具体的には次のような画像になります。
症例 40歳代 女性

両側の褐色脂肪に集積を認めています。
解説動画。
この生理的な集積を出さないようにするには?
せっかく検査を受けているのにこの生理的な集積があるために、肩周囲を中心に本当のがんがあっても見落とす原因となってしまいます。
FDGはいったん細胞に取り込まれるとそこにとどまるため、撮影の段階で集積に気づいてから体を温めても、その回の画像から集積を消すことはできません。
大事なのは、最初からこの集積を出さないことです。
何をきっかけにこの生理的な集積は出るのでしたか?寒さでしたよね。
つまり、検査前には、十分な保温をして体を寒さにさらさずに、来院する必要があるのです。
PET検査を行う施設でも冬になるとこの褐色脂肪への集積が出ないように、空調管理に注意を払ったり、毛布を用意したりします。約2000人のPET-CTを調べた研究(Cypess 2009)では、褐色脂肪は若い人ほど、また撮影日の外気温が低いほど写りやすく、β遮断薬を飲んでいる人では写りにくいと報告されています。強い集積が出た患者にβ遮断薬(プロプラノロール)を前もって内服してもらって再検査すると、腫瘍への集積は変わらずに褐色脂肪の集積がほぼ消えたという報告もあります(Söderlund 2007)。
特に若い女性は注意ですね。
今回のような集積を生理的な集積と言います。
褐色脂肪腫(hibernoma)とは?生理的集積との違い
褐色脂肪腫(hibernoma)は、褐色脂肪からできるまれな良性の腫瘍です。170例の検討では平均年齢38歳、太もも・肩・背中・首に多く、経過を追えた例で再発や転移はありませんでした(Furlong 2001)。
褐色脂肪腫はFDGが強く集まることがあり、PETを撮影した8例ではSUVmaxの平均が10.4と高い値でした。MRIでは、脂肪抑制をしないT1強調像で脂肪より少し暗く見える「T1 shading」が特徴とされます(Long 2026)。
| 褐色脂肪への生理的集積 | 褐色脂肪腫(hibernoma) | |
|---|---|---|
| 正体 | 正常の褐色脂肪の働き | 褐色脂肪からできる良性腫瘍 |
| 分布 | 首・鎖骨上窩・脊椎の周りなどに左右対称 | 1か所のかたまり(太もも・肩・背中など) |
| 寒さとの関係 | 寒い時期・体が冷えると出やすい | 体を温めても腫瘤そのものは残る |
首や肩の集積が筋肉のことも:緊張・運動・会話・咀嚼
首や肩の集積は、褐色脂肪だけでなく筋肉の集積のこともあります。筋肉は、直前に力を入れたり動かしたりするとFDGを取り込みます。筋肉へのFDG集積は血中のインスリンの量と、検査前にどれだけ筋肉が収縮したかで変わります。検査前には強い運動、話しすぎ、食事を控えるよう指示されますが、本人が運動のつもりでなくても、移動手段など特定の動作に対応した筋肉の集積が画像に写ることがあります(Okuyama 2023)。激しい運動の4日後のPET/CTで筋肉の強い集積が残った15歳の報告もあり、ガイドラインでは検査の24時間前から運動を避けることが求められています(Bai 2015)。
肩や首をすくめるような緊張、長い会話、ものを噛む動作でも、首・顎の周りの筋肉に集積が出やすくなります。一方、声帯の集積は、会話に関わる脳の部位(ブローカ野)の活動とは関連がなく、会話量だけでは説明できませんでした(Eren 2012)。
褐色脂肪と筋肉の見分け方
どちらもPETの集積だけでは区別しにくいので、CTと重ね合わせます。集積の位置がCTで脂肪の濃度に一致すれば褐色脂肪、筋肉の濃度に一致すれば筋肉の集積です。左右対称で、首・鎖骨上窩・脊椎の周りに広がる場合は、褐色脂肪の可能性が高くなります。
PET検査の前の過ごし方(一般の方向け)
- 体を冷やさない:来院時から服装や靴下で保温し、待ち時間も寒い場所を避けます。小児の研究では、薬を注射する30分前から注射後1時間まで室温を24度に保つと、褐色脂肪への集積が31%から5%に下がりました(Zukotynski 2009)。
- 安静にする:注射後の待ち時間は、長い会話、ガムを噛む、スマホを持ち上げ続けるなど、首や肩に力が入る動作を避けます。
- 検査の前日から激しい運動を避ける:強い運動は、数日たっても筋肉の集積が残ることがあります(Bai 2015)。
- 絶食や薬の指示は施設の案内に従う:糖尿病の薬やインスリンなど、普段飲んでいる薬を自己判断でやめないでください。
首や肩に集積があると言われても、多くは生理的な集積ですが、気になる症状がある場合や、結果の意味が分からない場合は、主治医に相談してください。
褐色脂肪へのFDG集積でよくある疑問(Q&A)
Q. 褐色細胞腫(pheochromocytoma)とは関係がありますか?
褐色細胞腫は副腎髄質などからできる腫瘍で、褐色脂肪腫とは別の病気です。ただし、褐色細胞腫・パラガングリオーマの患者ではPETで褐色脂肪の集積が見られることが多く、約25%と報告されています(Onyema 2025)。
Q. 検査の前にガムを噛んだり話したりしてもよいですか?
検査前は強い運動、話しすぎ、食事を控えるよう指示されます(Okuyama 2023)。受ける施設の案内に従って、注射後の待ち時間は静かに過ごしてください。
Q. 一度集積が出たら、その場で温めれば消えますか?
その回の画像から集積を消すことはできません。体を冷やさないことが予防になるので、来院前から保温しておく必要があります(Zukotynski 2009)。
最後に
PET検査は高価なのもありますし、せっかく検査を受けたのにきちんと評価できなければ検査を受ける価値が下がってしまいます。
食事を摂取しないなどの他に、寒い時期、若い女性ならば、特にできるだけ体を温めた上で検査を受けるようにしましょう。
参考文献
- Cypess AM, Lehman S, Williams G, et al. Identification and importance of brown adipose tissue in adult humans. N Engl J Med. 2009;360(15):1509-17. PubMed
- Cohade C, Osman M, Pannu HK, et al. Uptake in supraclavicular area fat (“USA-Fat”): description on 18F-FDG PET/CT. J Nucl Med. 2003;44(2):170-6. PubMed
- Söderlund V, Larsson SA, Jacobsson H. Reduction of FDG uptake in brown adipose tissue in clinical patients by a single dose of propranolol. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2007;34(7):1018-22. PubMed
- Hany TF, Gharehpapagh E, Kamel EM, et al. Brown adipose tissue: a factor to consider in symmetrical tracer uptake in the neck and upper chest region. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2002;29(10):1393-8. PubMed
- Boellaard R, Delgado-Bolton R, Oyen WJ, et al. FDG PET/CT: EANM procedure guidelines for tumour imaging: version 2.0. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2015;42(2):328-54. PubMed
- Furlong MA, Fanburg-Smith JC, Miettinen M. The morphologic spectrum of hibernoma: a clinicopathologic study of 170 cases. Am J Surg Pathol. 2001;25(6):809-14. PubMed
- Long JR, Larsen BT, Murphey MD, et al. Imaging features of soft tissue hibernoma: a review of 73 cases. Skeletal Radiol. 2026;55(12):3073-3082. PubMed
- Onyema MC, Oštarijaš E, Zair Z, et al. The Role of Active Brown Adipose Tissue in Patients With Pheochromocytoma or Paraganglioma. Endocr Pract. 2025;31(2):208-214. PubMed
- Okuyama C, Kusano K, Ito M, et al. Characteristic Muscular FDG Uptake Patterns Related to the Transportation Means Used by Patients to Visit the Hospital. Clin Nucl Med. 2023;48(6):549-552. PubMed
- Bai X, Wang X, Zhuang H. Long-lasting FDG uptake in the muscles after strenuous exercise. Clin Nucl Med. 2015;40(12):975-6. PubMed
- Eren MŞ, Durak H. Relation Between Metabolic Activity of the Broca Region and F-18 FDG Uptake in Vocal Cords. Mol Imaging Radionucl Ther. 2012;21(2):42-6. PubMed
- Zukotynski KA, Fahey FH, Laffin S, et al. Constant ambient temperature of 24 degrees C significantly reduces FDG uptake by brown adipose tissue in children scanned during the winter. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2009;36(4):602-6. PubMed
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